
第41節 FC琉球戦
こんにちは、私です。
琉球戦は2-1で勝利。前半は思うように試合を進められず、先制されてしまいますが、前半終了間際に追いつくとそこからはジェフが主導権を握ることができました。秋田戦よりも強度の高いプレーが見られ、特に後半は勝ちに行く姿勢を感じることができました。
J2リーグ 第41節
ジェフユナイテッド千葉 2-1 FC琉球

・試合経過
秋山がスタメン復帰し、末吉は久しぶりのメンバー入りとなりました。
立ち上がりからジェフがボールを握りますが、琉球の守備ブロックを崩すことができず。琉球はジェフのWBにSHをつけて、一時的に5バックや6バックになったりとジェフの幅を使った攻撃を警戒してきました。ジェフの攻撃・ビルドアップの精度と練度が低いため、琉球の守備ブロックを攻略することができません。
すると、17分に失点。福村のピンポイントクロスに野田が合わせて琉球が先制します。
先制されたジェフはその後も琉球の守備ブロックを崩すことができず。負傷した米倉と代わって入った末吉が裏を狙うランニングで攻撃に変化を加えますが、決定機を作ることができません。
しかし、46分に同点に追いつきます。田邉が自陣から敵陣深くまでドリブルで運び、クロスを上げると、高木が繋いで、最後は熊谷が鮮やかなシュートを決めて試合を振り出しに戻します。そのまま1-1で前半を終えます。
後半に入るとジェフのペースで試合が進みます。
後半開始早々に高木がカットインしてシュートを放つと、52分には見木のロングボールにダイアゴナルに裏抜けした末吉が反応してチャンスを作ります。66分にはポケットに侵入した見木がシュートを放ちますが、枠を捉えることができず。前半よりもチャンスが増えますが、決め切ることができません。
しかし、86分にジェフが勝ち越します。相手のCKのこぼれ球を拾うと、ミンギュは前線のチアゴへ。チアゴはそのままゴール前まで運んで、相手をかわすと、右足のアウトサイドでゴールに流し込み、試合終盤に逆転します。
その後は相手にチャンスを作らせず、2-1で試合終了となりました。
・適切な立ち位置・奥行き作りと理想システム
岩手戦以来の複数得点で勝利しましたが、前半はあまりチャンスを作ることができず苦戦しました。適切なポジショニングが取れていなかったり、動き出しも少なく、末吉が入るまでは背後を狙った動きもあまりありませんでした。
①ボランチの立ち位置と最終ライン・前線の連動性
後ろからビルドアップする時のボランチのポジショニングが徹底されていないということを熊本戦のレビューで書きましたが、この試合は適切なポジショニングを取れていることが多かったような印象です。ただ、まだポイントに立てていなかったり、惜しいシーンが見られました。
また、ボランチが良いポイントに立っていてもDFの選手がボールを持ち過ぎていたり、前線の選手が動き出しがなかったりするシーンが目立ちました。

田口は図のようなポジショニングが取れていることが多く、相手の2トップを閉じさせたり、相手ボランチを釣りだしたりすることができていました。ここに差し込めれば、2トップは後ろに体の向きを変えて、目線も動くため、リターンからサイド展開がしやすくなります。しかし、リターンを貰った選手に無駄なタッチが多かったり、前線が連動して動き出せていないシーンが多かったように思います。

例えば、8分のシーンでは田口が良い位置で受けて、相手ボランチを釣り出しますが、ボランチが出ていったスペースにシャドーが入っていくといった動きはなく、リターンを受けたミンギュも無駄なタッチが多く、サイドに振るのに時間がかかりました。


ボランチが出ていった裏や脇にシャドーが落ちて、受けることができれば、図のように相手のCBを釣りだすことができ、スペースを作ることができます。

また、8分のシーンでは田邉の前に大きなスペースがあったため、ミンギュが素早く田邉に振っていたら、田邉が運んで図のような3vs2の数的優位を作ることができました。
チームとして仕込めていないので仕方ないですが、前線の選手はスペースができたらそこを使うような意識、DFラインの選手は無駄なタッチをなくして相手を揺さぶること意識が必要です。特にミンギュや新井一耀などは最終ラインでのタッチ数が多いですし、ボールの持ち方も良くなく、個人戦術が足りていない印象なのでここを監督やコーチで改善してあげてほしいのですが…
田口が2トップの間かつ後ろの良いポジショニングが取れていた一方で、熊谷は惜しいシーンが多かったように思いました。何が惜しかったのかというと、2トップの間には立てていたけど、2トップの前でボールを受けていたことです。

38分のシーンではミンギュのパスを2トップの前で受けていました。ここで受けても2トップの体の向き・目線は動かせませんし、ボランチを釣りだすこともできません。

また、2トップの体の向きや目線は変わらないため、1人で2人を監視できてしまい、ボランチ→CBへとそのままプレスをしやすくなります。そのため、CBへのリターンが相手の守備のスイッチになってしまいます。

2トップの間かつ後ろに立てば、2トップの体の向き・目線を大きく動かすことができるため、図の赤矢印のようなプレスは受けにくくなります。
熊谷は2トップの前で受けてしまうことがこの試合ではよく見られ、対戦相手によっては狙われる可能性もあるので改善が必要です。
②奥行きを作った末吉
末吉は久しぶりの出場となりましたが、スピードを活かした突破や裏抜けで何度もチャンスを作りました。
末吉が入ってから裏を狙うような攻撃が増えました。実際にミスにはなりましたが、田口から裏を狙う末吉へのロングボールが2本ほどありました。後半にも見木からダイアゴナルに抜けだした末吉へのロングボールでチャンスを作りました。
ジェフの今のスカッドは足下で受けることを好む選手が多く、裏へ抜けるような動きがあまり見られませんでした。
実際に今年取られたオフサイドの数は22チーム中最下位となっています。
裏へのランニングが少ない=奥行きを作れないということで、スペースを生み出せませんし、相手の危険なエリアへ侵入することもできません。スピードが合って裏抜けできる選手が少ない現状を考えると、末吉の存在はめちゃくちゃ貴重です。末吉が怪我なく、フルで出れていればもっと良い順位にいたのかもしれませんね。
③裏を取るためのWBのポジショニング
WBのポジショニングが高すぎるとサイドとリンクできないということを何度もこのレビューで書いてきましたが、WBが高すぎるポジショニングを取ることで裏を取りにくいという問題も起きてしまいます。

前線に張りすぎると裏に走るための助走がない状態になるので裏に抜けにくくなってしまいます。また、オフサイドにかかりやすいため、裏に抜けるという観点からも前線に張るのは効果的ではありません。
51分の見木のロングボールに末吉が反応したシーンは前線に張りすぎないことでうまく裏を取り、チャンスになりかけました。

末吉が相手の最終ラインと離れたところからスピードに乗った状態で裏に抜けたことで、綺麗に裏を取ることができました。パスは繋がりませんでしたが、裏を取るためのポジショニングはとても良かったと思います。
④熊谷の運動量と最適解システム
熊谷は様々なところにサポートに行き、運動量豊富に動き回っていました。

「田口を中心とする巨大ロンド」と犬の生活で西部さんによく表現されていますが、本当にその通りで、図のように田口を真ん中に置いて、熊谷はボールサイドに寄るようなビルドアップをしています。ただ、これだと熊谷の負担が大きく、ポジションのバランスが悪くなってしまうことも多いように思います。実際にこの試合では今シーズン序盤にあったようなボランチ2枚がボールサイドに寄りすぎてしまうというシーンも見られました。
怪我の多い熊谷の負担軽減のためにも、今いる選手のタイプ的にも、攻撃時3-1-4-2への可変が最適のように思いました。

田口をピボーテ、熊谷を右のインテリオール(右IH)、見木を左のインテリオール(左IH)に配置します。熊谷は繋ぎだけでなく、チャンネルランで飛び出すのも上手いのでインテリオールで考えました。見木はなるべくゴールに近いところでプレーさせたいですが、中盤もできますし、左のインテリオールに配置しました。サイドに張るタイプではない秋山をインテリオールに、高木を左WG、見木をFWにしても良さそうですね。
インテリオールを置くことでWBの中継地点を作りやすく、サイドとリンクできていないという問題を解消することもできます。
また、ジェフのスカッド的に小島や高橋などインテリオールの方が活きそうな選手がいたり、チアゴやブワニカなど2トップの方がやりやすそうな選手も多いため、攻撃時可変3-1-4-2もありだったのかなと思いました(シーズン残り1試合しかないですが…笑)。
・攻撃的守備とクロス対応
直近の試合よりも攻撃的な守備が表現できていたように思います。ただ、失点シーンはクロス対応に課題を感じました。
①攻撃的守備
直近の試合よりも前から守備に行く姿勢は見せていて、特に後半はボールを奪われた後に囲んで、奪い返すといったシーンも見られました。
秋田戦では屈強な相手との球際の勝負で負けたり、寄せが甘かったりするシーンが多かったですが、この試合では球際で激しくバトルし、勝ちに行くといった姿勢を見せることができていました。
ただ、今年のジェフの守備の総括としてはリトリートが多く、ハイプレスのデザインもあまりできていなかったような印象です。怪我人増加も影響していそうですが、システム的にリトリートだとどうしても後ろに重くなってしまいます。
去年の無敗が続いた時期はWBを相手SBまで押し上げるような強気な守備で、高い位置で奪ってショートカウンターに繋げることができていました。今年はそのような守備はあまり見られず、奪う位置が低くなり、カウンタープレスを受けて、取り返されてしまうようなシーンが目立ちました。奪う位置が低くなったことも得点があまり取れなかった要因だと思いますし、もう少し前から人を捕まえにいくような守備を増やしたかったですね。
ハイプレスのデザインも足りていなかったように感じます。ジェフのハイプレスは圧縮しきれていないことが多く、基本縦切りなのでサイドに誘導して取り切るという守備はあまり見られませんでした。トップの選手がコースを切って、全体をスライド・圧縮させてボランチの守備エリアを狭めて奪い切るようなハイプレスであったり、相手のプレーモデルに合わせたハイプレスのデザインが必要でした。
②クロス対応の課題
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) October 16, 2022
🏆 明治安田生命J2リーグ 第41節
🆚 千葉vs琉球
🔢 0-1
⌚️ 17分
⚽️ 野田 隆之介(琉球)#Jリーグ#千葉琉球 pic.twitter.com/9K80uXK1Gd
失点シーンは福村にピンポイントのアーリークロスを上げられ、野田にヘッドで決められてしまいました。
クロスの精度はとても良かったですが、高木と米倉のどっちが寄せるのか迷いが生まれて、フリーの状態でクロスを上げられてしまいました。ここは後ろの選手が指示を出して、米倉を押し上げるべきだったと思います。
また、ミンギュと田邉のどっちが野田を見るのかも曖昧になってしまっていて、簡単に田邉の前で跳ばせてしまいました。最初はミンギュがマークについていたため、ここのマークの受け渡しも甘かったように感じました。
結局、田邉が野田と競り合うことになりましたが、身長の差がある分、競り合いでの工夫が必要でした。
相手が跳ぶ前に体をぶつけることで自由に跳ばせないことができます。参考になるのが6分の熊谷の競り合いです。熊谷は加藤が跳ぶ前に、体をぶつけてバランスを崩させて、落下地点に入っています。この競り合いはスタンディングの状態ですが、跳ぶ前や助走の段階で体を当てて、相手のバランスを崩すような工夫を失点シーンではすべきだったと思います。
・最後に
前半は良い内容とは言えず、相変わらず攻撃面での課題は多かったですが、ホーム最終戦を勝利で締めくくることができて良かったですね。ラストの山口戦も勝ってシーズンを終えてほしいですね。山口も現地で観てきます!