逆切りの読み
今回は王座の間での初代天鳳位ASAPINとの対局中のワンシーンを取り上げてみたいと思います。
ASAPINと言えば元Mリーガーでもあり、二度の天鳳位達成、四麻魂天、三麻魂天達成など圧倒的実績を残しています。
今回の対局では偶然にもyoutubeの放送対局中で、対局後にアーカイブを見ることでASAPINの対局中の思考を拾うことが出来ました。
東4局で私はラス抜けを目指していました。
打点が欲しいので、ドラ1發トイツの手で上家に打たれた發はスルーしています。
この形になったら2枚目の發はしょうがないから鳴くかといったかんじです。
ここから何を切るかですが、場況はよく分からないものの、6sが1枚切れており、カン8sの受け入れは悪くなさそうです。
そこで5sを切ることにします。
1巡進んで4pをツモってきます。
連続形の筒子のこの形は非常に良い形で、特に34568pあたりをツモってくればタンヤオが見える好形のイーシャンテンになります。
そこで9sを切って7sのトイツを固定し、筒子が伸びればタンヤオに移行することにします。
この形になれば2枚目の發もスルーですね。
2000点で終わらせるにはもったいない手に育ったと思います。
しかし筒子が伸びることもなく、2枚目の發が打たれることもなくテンパイしたので、このままリーチします。
これも一応予定通りではあります。
テンパイしたらどうせシャンポンに受けるので、カン8sの受け入れはそんなに要らない形です。
そのためリーチ發かメンタンピン系に行くかで両方の可能性を追った感じですね。
このリーチを受けてASAPINの手牌は
タンピン系の好形イーシャンテンになっていました。
しかし切る牌が難しく、9pを切って目一杯に受けるか、現物の5s切って安全に行くか、というところです。
長考の末、ASAPINは9pを切って押します。
押した理由は本人の放送中の発言によると、「受け入れが(5s切りと)違いすぎる」ということと「ワンチャンスだから」ということですが、今こうして見るとワンチャンスだからというより、私の7p切りが完全イーシャンテンからの切り出しには見えない気がしますね。
7pが1枚切れているので、778pと持っていたら先に7pを切ってもおかしくはないだろうと。
それともう1つしきりに言っていたのは「4-7s待ちがうさんくさくて信用してない」とのことです。
どういうことかというと、河の3つの手出しに注目してみてください。
私が切った手出しの9s、西家が切った手出しの9s、東家が切った手出しの2s。
この3つの手出しがポイントです。
まず私が切った手出しの9sですが、5s切った後に9sの手出し。
これは逆切りと言って779sから9sを切ったように見えてしまうんですよね。
最上級者が日常的に使う読みの1つです。
5sを先に切っているので6789から9sを切ったということもないですし、浮き牌として持っていたというのは考えられないわけです。
789sから6s引いて9s切りとか、799sから8s引いて9s切りとか、567899sから9s切りとか、いろいろパターンはあるのですが、いずれも1枚は7sを持っているわけですし、中でも可能性として高いのは779sか889sからの9s切りだと思われます。
ただこの手出し1つだと889sからの9s手出しという可能性もあってなんとも言えないのですが、もう1つ注目なのが西家の切った9sです。
9sの手出しがもう1人居るわけですね。
私の9s手出しと比べるとインパクトは薄いですが、それでも孤立の役牌や安全牌よりも優先していた牌で、関連牌の可能性が少し高いと言えます。
こうなってくると無視は出来なくて、私の7sトイツが読まれたというよりは、9s手出しが2人居るということは、少なくともどちらかには7sのトイツが入っているのでは?ということになってくるようです。
そして最後に東家の2s手出しです。
これは以前に私の記事で解説した「離れペンチャン落としの読み」ですね。
1sを先に切っていて、間を置いて2sが切られている。
2sが切られる直前に安全牌も切っている。
ということはこれも4sがトイツの可能性が高いでしょう。
今回は2sがリーチ宣言牌ではないですが、リーチがかかってなくてもある程度通用します。
ただし、リーチの場合と違って入り目かどうかが読めないので、スライドの可能性もある分、可能性としてはリーチの場合ほど高いとは言えません。
ですが、この3つの手出しを全部合わせて総合的に判断すると「4-7sはうさんくさい」という評価になるのです。
そのため、5sを切って索子を4-7s待ちの両面で固定することはしなかったのですね。
この後もASAPINは5mをチーして2-5p5sの変則三面待ちのテンパイに取ります。
6sは通っていないですが、こっちの方がだいぶいい待ちという評価のようです。
今回はASAPINの強さの片鱗に少し触れることが出来たような気がします。
2択ある待ち取りの選択で、和了率の違いが正確に分かるようです。
私の選択はこれといって間違いがなかったように思えますが、相手からどう見えるかという視点に欠けていたと思います。
逆切りすれば手牌が読まれるリスクもあるということですね。