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Renpei’s magazine_vol.4 僕たちにしかできないものを探す旅

この半年間、皆様に見ていただいた舞台作品について振り返り、そして来月公演の舞台「夫婦」についても、作品への思いや意気込みなど、たっぷり語りました。
              文/M.Jitsukawa 写真/Madoka.Shibazaki

◾️これまでと違うコメディの学び

>まだ今年の仕事は終わっていないですが、この半年間を振り返っていきたいと思います。前回は舞台『776』の公演前にインタビューをしました。
「新たな挑戦、チェレンジになる」と話していましたが、公演が終わった今、振り返るとどうでしたか。

廉平:僕らがやった『776』という作品は、シュールな笑いで全体通して「なんだったんだろう、あれ。でも面白かったね」という笑い。何が面白いか共演者とすごく話し合ったし、会話を繰り返したことで、それぞれのキャラクターが板についたと思ってます。意味不明な会話がいきなり始まっていきなり終わっていく、だけどその状況に疑うことなく入っていく。リアルすぎて、だけどあるあるというか、そこの妙みたいなものが作品自体にあったし、僕らはその妙を意図的に作らなければならないから、そこはすごく難しかったかな。
でも今までやったことないキャラクターだった割に、気づけば「辻義郎」なっていたと言う感じです。

>それは堤さんのディレクションがそこまで引っ張っていってくれた?

廉平:堤さんのディレクションで一番すごいなと思うのは、言うタイミングなんです。違うことで悩んでいる時は言わない。俳優も自分が考えてきたものをやってみて「違うかな」と考える時がある。そう言う時、違うシーンのノート(★)や違うタイミングでノートはしない。とてもTPOを考えて言ってる感じがします。
あと俳優自身が「聞けるな」という時に言うんです。俳優側に聞く耳があるというか、内省していないタイミングを見計らう選球眼がある。また言う時に修飾語が少なく端的に言うのもわかりやすい。本番中も「あそこの身動きは喋り出すまでつけない方がいいよ」だけ。でもそれでだいぶ演技が変わるんです。
今までのコメディとは違う学びがあって、堤さんが30年続けてきたものに携われて本当によかったです。

★ノート:演出・監督からのフィードバック

舞台「ラフカットFINAL -776-」
期間:2024年6月12日(水)~6月16日(日)
会場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
作・演出:堤 泰之
配役:辻義郎

ラフカットチラシ(中面)

◾️読む行為と演じる行為の矛盾をどう回収するか

>今年は2本の朗読劇に挑戦しましたね。初めての朗読劇はどうでしたか?

廉平:YouTubeで朗読もやっているので気にはなっていました。朗読劇は台本を演者が持って芝居をするけど、読むという行為と演じるのは相反します。その矛盾をどうやって回収するか、どうやって向き合うのは楽しみでした。

>実際にやってみてどうでした?

廉平:朗読劇はお客様がどれだけ想像できるかがものすごく大事だと思うから、僕が考えたのは、自分が今誰にどの距離感で喋っているかを気にすることでした。台本を持ちながらというルールで、相手との距離感、また関係性みたいなものをどれだけ提示できるか、キャラクターがどう動いて、どういう佇まいなのか想像させるのが一番重要なのかなと思ったから、セリフを覚えない代わりに距離感を覚えていく感じです。

◾️演じている自分と司令塔の自分

>まずは『瞬くLIFE』から詳しく聞いていきますね。

廉平:なべさん(渡辺コウジさん)はロマンチストであり面白いことを考えている人なんです。そして笑いに対する感度が高い人。なべさんが求める笑いをちゃんと回収していき、なべさんの想像をどうやったらさらに広げられるか、朗読劇だからこそ丁寧に考えながらやりました。

>コメディの朗読劇だからこそ丁寧に、と言うことをもう少し掘り下げて教えてください。

廉平:演じるキャラクターになるのは大事だけど、人間の構造上100%その人になるのは無理なんです。演じている俳優としての自分と、その俳優への司令塔の役割もなきゃいけない。コメディはその日のお客様の空気を一番知らなければいけないし、公演中でも司令塔は常にアンテナを張ってる状態。助手席に司令塔が座って、その役になっている自分が運転していて、「次右、次左、今は待つ、間をとろう」とか、そういう判断を助手席からされている感じ。さらに相手役やお客様の空気が道筋になっていたり標識になってる感覚なんです。
今回は朗読劇だったから、より冷静に、より丁寧に考えたし、こうしようと思えた。それは朗読劇の面白いところだな感じました。

公演後に渡辺さんと

朗読劇『瞬く LIFE』
日時:2024年9月17日(火)
会場:lucky base
作・演出:渡辺コウジ
配役:死神ハヤト

◾️素晴らしい環境で演出効果について知った

>もう一つの朗読劇『新解釈・源氏物語』について聞かせください。京都の知恩寺での朗読劇は劇場でない環境の素晴らしさがありましたね。

廉平:劇場で行う演劇って、劇場ということを忘れさせられるか、お客様とその時間を共有できるかと言うのが大事だと思うです。今回の源氏物語は、知恩寺さんの素晴らしい景色があって、すでに源氏物語の世界観を作れちゃってる。もうそこの場所とか空気感とか時代とか、考えさせる必要がほぼない。

>あの場所が平安時代と言ってもおかしくない雰囲気でしたよね。

廉平:そうそう。平安の人と同じ景色を見てるって言ってもそうかもなと思える。だからこそ俳優はやりやすいし、想像させると言うことよりも溶け込んでくと言うふうに考えればやりやすい。反面、その時代にないような行為をしてしまうと、現実に引き戻してしまう危険性もある。演技だって思わせちゃう。やりやすい割にはこの世界観を崩せないプレシャーがありました。

>今回は頭中将の役でしたが、ストーリーテラー的な役割もありましたね。

廉平:頭中将が今回の源氏物語で担っている役割は大きくて、お客様と源氏物語の橋渡しだったり、物語の中の立ち回りもたくさんありました。お客様が素晴らしい景色を見ていたとて、いきなりはその世界に没入はできない。案内しながら「皆さん一緒に世界に入っていきましょう」という、そのキャラクターに入っていく僕のアイドリングの部分もありました。

>逆にお客様は素敵な景色だからこそ、入り込まなければいけないプレッシャーがある意味あったのかもしれませんね。

廉平:源氏物語をあんまりよく知らないという人も多々いたと思う。だけど「ゆっくり入っていけばいいんだ」「説明してくれるんだ」という安心って没入するのに手助けになります。それは脚本家の江良さん、松井さんの構成の素晴らしさだと思います。
紫式部が出てくることで劇中劇になっているけど、お客様はもう物語の中にいるから、式部が「あなた幾つになったの?」「ここで出会わせましょう」と言っても違和感がない。
本当に新解釈と言って妥当な朗読劇だったなと思うし、その中で頭中将で立ち回れたのは幸せだった。

>またやりたいですね。

廉平:完全庭の中でもやってみたいですね。庭の石を踏む音とか。それってその時代からある音だから、一緒に体感できたらいいなと。今回、天候に恵まれて、小鳥の囀りとか木々の風で揺れた音とか、それって無意識的に耳に入ってきて、無意識的に世界を増幅させてる。意図せぬから余計グッときて、信じ込めるんです。あれはやってて心地よかったな。それに演出効果の根源を知った感じがします。世界を想像させるために音も光も必要なんだと。

朗読劇『新解釈・源氏物語 朗読劇2024』
期間:2024年10月12日(土)~10月13日(日)
会場:百万遍知恩寺
演出:小野了
脚本:江良至/松井香奈
配役:頭中将

◾️僕の人生だと思ってもらえたら嬉しい

>次は現在稽古中の12月舞台『夫婦』について聞かせてください。
台本いただいた時の感想教えてもらってもいいですか。

廉平:むずって思った(笑)セリフも多いし、シーンも多いし、時間軸も長いし。オリジナル性が強い作品だなと思いました。でも根本にある何かは、断定されている感覚が初見でありました。共演者も演出家も初めての方だし、主演だし、と、どこまでできるんだろうというワクワクしました。

>演出家の廣川さんとは初めて一緒になりますが、印象を教えてください。

廉平:ロジカルな演出をされる方だなと思うし、演出、俳優間における共通認識、共通言語を整えてくれるから、シーンの意味合いとかを素直に聞けます。廣川さんが丁寧だからこそ、それに倣って自分も丁寧でなきゃいけないなと思う。廣川さんとディスカッションするのは、お互いの納得を探しにいく会話になってる気がして楽しいです。

>共演者の皆さんはどうですか。

廉平:顔合わせで本読みした時に「なんでこんな面白い人たちと自分がやるんだろうという」と自分の至らなさを発表する会なのかと不安に駆られました(笑)
会話のペースも早いし、稽古の動いていくペースもすごく早いし、僕もそのペースは楽しい。この中でやれているのはありがたい。だから主演としてのプレシャーもあります。
岩井という役が物語の軸になっているから、自分が知っていなければならない情報量も多いし、お芝居として新鮮に感じてなきゃいけない部分もあるし、楽しいけど不安な部分がまだあるかな。

>ハイバイの岩井さんが、自分の役を自分で演じたという周知の作品ですが、それに対してのプレッシャー、不安もあったりしますか。

廉平:考えないようにしている。つまりあるってことなんだけど(笑)
岩井さんはご自身の体験から岩井という役をやったけど、僕は僕が感じる、考えるこの戯曲における岩井秀人をやりたいなと思う。この戯曲の中の岩井秀人は何を感じたのか、何を思ってこの作品を書いて、何を思って父の死とか母とか家族、自分と向き合ったのか、僕なりに知りたいと思ってやってます。

>お客様へメッセージをお願いします。

廉平:今回暴力シーンがあって、僕自身も静かに傷口が疼く感覚に稽古中なります。僕らはお客様に楽しんでもらいたいけど、ご来場いただいたお客様の気持ちを担保できない。だから暴力シーンに抵抗がある方は、気をつけていただきたい。
もちろん暴力シーンを見せたいわけではなくて、感動するし、面白いと思ってるし、一人でも多くの人に見てほしいと思っているけど、それを見て傷つくと思うなら、表現を受け入れる自由もあると思うからそれを踏まえてみてほしいと思います。

>最後に意気込みを教えてください。

廉平:それぞれの場所で注目される人たちが集まっていて、好評だったハイバイの岩井さんの『夫婦』に立ち向かう、僕たちにしかできないものを探す旅でもあります。
この団体の『夫婦』を感じてほしいし、初めて見る人も面白いと思ってもらえたら嬉しい。そしてお客様に、僕自身の人生だと思ってもらえたら嬉しいです。

>そばで見ている筆者(マネージャー)も、廉平さんの役への集中と楽しんで演じているのが伝わってきます。今年最後の舞台出演になります。多くのお客様のご来場お待ちしております。

舞台「夫婦」
期間:2024年12月5日(木)〜8日(日)
時間:12月5日(木)19:30
   12月6日(金)14:00/19:30
   12月7日(土)13:00/18:00
   12月8日(日)13:00
会場:王子小劇場 (東京都北区王子1-14-4 地下1F)
チケット:前売り4500円/当日4800円
https://www.confetti-web.com/events/3584
作 :岩井秀人(ハイバイ)
演出:廣川真菜美(maars inc. )
キャスト:板橋廉平/菊池美里/山森信太郎/大河日氣/小林春世
     安楽信顕/片桐美穂/大竹周作/南川泰規

板橋廉平 Renpei Itahashi
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写真/Madoka.Shibazaki


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