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『満知子せんせい みどり、真央、昌磨と綴った愛の物語』 (高橋隆太郎 中日新聞運動部記者 著) を読んだ

この手の本は「コーチの自慢話」みたいな内容のものもあるが、真逆で、大満足の読了であった。なぜなら本当に自慢が1つもないのだ。
山田先生について著者が「子どもたちにフィギュアの楽しさ、素晴らしさを伝える「普及部」のコーチである」と書き、山田先生ご自身の発言からも「『普及部』の先生」とある。「別にオリンピックを目指しているわけでもないので、もともとが。優秀な選手をつくりたいとか、そっちにはいかないんですよ」と語り、「みんなから愛されなさい」「自分の人格が素敵であれば、演技も素敵になるし、人から愛される。」と教える、とある。山田先生の門下生で有名どころの選手を思い出した限り、みんな見事に人から愛させている。有名にならなかった多数の門下生も、恐らく社会のどこかで人から愛される人として、生きておられる。それだけを思っても素晴らしい。
個性を尊重して伸ばすというエピソードとして「巻き足」のことが紹介されていた。確かに、山田先生の門下生には巻き足の人が多かったが「一番、跳びやすい形だからできるんだ、美しさは年をとればついてくる、と。」おっしゃっているのが心に刺さった。先で引用した「自分の人格が素敵であれば、演技も素敵になるし、人から愛される。」と通じる。
愛される人をたくさん世の中に出した山田先生の幼少期からのエピソードも興味深い。昭和18年生まれとは自分の親世代だし、娘さんはなんと生まれ月まで一緒の同い年で親近感を勝手に抱いた。親世代と思うと、いかに山田先生が綺麗で姿勢が良くて若々しいかがわかる。スケート観戦をし始めた頃、毛皮またはブランドもののコートを纏い、高価そうな色付きメガネをかけておられる山田先生はちょっと怖かったのだが、とても愛に溢れた先生で、あれほどまでに生徒から慕われ、その生徒はみんなから愛される人になっていく、そんな様子が伝わってきて、読後心温まった。
読書後は、当然、伊藤みどりさんのアルベールヴィル五輪のフリーの演技を見た。ちょうどその頃、卒業旅行にヨーロッパ周遊のパッケージツアー21日間の旅路で、テレビをつけたら五輪一色だった。呑気にパッケージツアーに身を委ねていた頃、同い年の伊藤みどりさんは重圧のかかるオリンピックに出ておられたのか、と思い、目を細めてしまった次第である。

(キスクラでみどりさんの左には山田先生だが、右は城田憲子氏か?)

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