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造形構想基盤講義(大学院1年)

11/8に造形構想基盤講義の山崎担当回で、現在開催中の展示を鑑賞しました。こちらの展示は武蔵野美術大学の美術館•図書館が主催です。

Vol.4 彫刻の威力
——戸田裕介、冨井大裕 二人展

https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/22105/

今回の授業ではこの展示における分析的な鑑賞を実践しました。
今回は時間の都合もあり、冨井大裕(彫刻学科教授)の作品が主たる対象でした。(冨井先生おじゃましました!、戸田先生もじっくり堪能させていただいております!)

まずはメインビジュアル(?)にも採用されている下の作品について分析。出席者全員で分析しました。

https://mauml.musabi.ac.jp/museum/wp-content/uploads/sites/2/2018/08/tomii-web.jpg

冨井大裕《トルソ、或いはチャーハン #2》2022年
ゴミ箱の蓋(プラスチック・鉄)・針金・ビス、38.0×120.0×36.0㎝
展覧会は写真撮影はOKだったのですが、SNSはNG。変なリンクの載せ方ですいません
冨井先生、関係各位問題ありましたら映像学科山崎までご指摘いただけると幸いです
即座に対応します


1 構成による機能の剥奪

受講生からまずは素朴な印象や感想を募りつつ、いくつかの指摘から「機能」という観点に展開しました。
また、後の観点(3 レディメイドと記号)の伏線ともいえる
「皿にみえる」というインプレッションも。


2 原因と結果の双方向性

その後、各作品の構成要素が本来もつ「機能」という補助線をひきつつ、展示室に展開する全作品に分析対象を開きました。

受講生の中で注目されたのは、床にあるシャベルとコンクリートタイル(?)を用いた作品。(『シャベルの領分』)

一見、主従の関係が明白にみえる要素同士のなかに、機能が反転しているのではないかという仮説が導かれます。

3 レディメイドと記号(『トルソ、或いはチャーハン』とは?)

再び、全会場作品から、2で見出された仮説をもとに再度分析していきます。そこから、記号的な主従関係(原因と結果)が、物理的存在の主従関係では反転しているという指摘がありました。

それは冒頭でゴミ箱のフタがお皿にみえるとのインプレッションと呼応するかにみえました。(※)

(※)こちらの展開は、時間の都合上厳密な展開ができませんでした。
「ゴミ箱のフタがお皿にみえる」とは、『シェベルの領分』における
記号存在のような明確な反転ではなく、ゴミ箱という記号性を、存在的な構成(ここではフタの持ち手部分同士を密着し、壁に設置する)によって、実現されており(されているようにみえ)ここまでの仮説による展開ではやや整合がとれないともおもわれました。

(山崎の脳内)

また、時間の都合上留保された観点としては

・色彩や形状などの対立
・会場構成(1面における3作品について)
・ナナメ(なぜナナメでないものがあるのか)
・製品と製品の接合方法について(ネジ)
・時計にも見える作品
まだまだ十分に展開できそうなものがありました。

心残り

感想

授業後、ドキュメンタリを制作している学生との意見交換がはずみました。中立とは関係あるようで厳密には関係していない、中動態の話が挙がりました。中立の態度は、両ウィングを対等に扱うこと。それはドキュメンタリ的中立性の最たる一つかと思われるのですが(まじで私が思ってるだけかもしれませんが)
極めて主観的な眼差しでも、原因と結果の反転を描くことは、実質的な中立の達成になりうるのではないかとも。(もちろんこれまでのドキュメンタリの多くが達成してきたものでもあるとは思います)

(山崎連基)

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