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【小説1-5】スクールカースト下位だった私が、レンタル彼女になったワケ

遅まきながらも、コミュニケーションのコツを掴んだ紗耶香 さやかは、それ以降はなんとかグループからあぶれることなく学生生活を送ることができた。

いわゆる『リア充』と呼ばれるスクールカーストの上位ではないが、最下位でもない中間層にいつもいる。けれども、自分のポジションなんて興味のない顔をしながら、その実はグループから追い出されないよう努力をしていた。

自分の話は極力してはいけない。自慢に聞こえる話はしてはいけない。相手を否定してはいけない。出過ぎた真似はしてはいけない。不機嫌な態度を取ってはいけない……と、自分に課した禁止事項でがんじがらめになっていって、誰からも嫌われないように必死だった。

紗耶香にとって、『人から嫌われれない自分』を演じることは、現実逃避でもあった。誰からも相手にされなかった本当の自分から目を逸らすのは、ある意味楽でもある。だからこそ紗耶香は装うことに知らず知らず力が入り、その完璧さが増すほどに人が集まってくるようになった。

そして、大学生、社会人と、月日が経つごとに紗耶香の評価は高くなり、社会人二年目から花形部署と評される秘書課に異動になった。

秘書課の所属になって半年。女性ばかりの職場のため、先輩にも後輩にも人並以上の気配りをしてきたが、学生の時には感じなかった微かな違和感を感じていたのだ。

なぜだか分からないが、周囲に気を遣い、そういう自分が評価されるほど、淋しさや孤独のようなものが胸に巣くうようだった。

努力をしたことが評価をされているというのに、喜びよりも虚しさが湧き上がってくる。

その評価は本当の自分にではなく、装った自分に対してのもの。だったら本当の自分だったら、評価してもらえないのだろうか――。

長いこと自分自身を縛り付けていた鎖が、紗耶香自身をぎりぎりと締め付けるようだった。


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