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【小説1-4】スクールカースト下位だった私が、レンタル彼女になったワケ

紗耶香さやかが変わったのは、高校へ入学するタイミングだった。

学校で常に一人でいた紗耶香は、友達と遊んだり話しをしたりしない分、勉強に充てる時間が十分にあった。校則の厳しい中学校では、携帯電話やゲーム機などを持ち込むことは許されず、休み時間の暇をつぶすことといったら勉強くらいしかなかったともいえる。

しかし、それが功を奏して、県下でも有数の進学校へ入学することができた。同じ中学から進学するのは、紗耶香以外にもう一人しかいない。

そんな環境の変化をチャンスと考えた紗耶香は、今までの自分のことを知る人などほとんどいない中で、新しい自分に生まれ変わろうと思ったのだ。

その計画は、入学式の前から始まっていた。

入学祝として携帯電話を手に入れた紗耶香は、SNSを駆使して同じ高校へ入学する予定の生徒を探し出した。当時は知らない相手とコミュニティを作って盛り上がるサイトが流行っていたこともあって、同じ高校へ進学する仲間を見つけるのは容易たやすかった。

新たな環境でスタートしたとしても、最初の人間関係でつまづいてしまったら、その後の三年間がお先真っ暗になってしまう。そう自分に言い聞かせて、なんとか五人と仲良くなった。

仲良くなるといっても、元々コミュニケーションが得意ではない紗耶香のこと、それぞれの趣味や興味のあることなどをノートに書き留めながら、交流を深めていく。

リアルタイムな会話とは違って、SNSは返信する内容を熟考できるのが良かったのだろう。

面と向かって「面白いことあった?」と聞かれたなら、以前のように言葉につまって下を向いてしまいそうだが、文章で返せばいいSNSの場合は、「今日電車で面白い人を見たよ」と返すだけで、おのずと話は転がっていく。会話の中で分からない言葉が出てきたら調べることもできたし、別の質問サイトで質問をすれば、模範解答を教えてくれる人もいた。

SNSは会話に苦手意識があった紗耶香に合ったコミュニケーションだった。

会話が苦手でも、なんとか返答や相槌を返すことさえできれば、以前から知り合いだったように仲良くなれる。たとえ実際に会った時に緊張してしまっていても、SNS上で盛り上がっていた話題を掘り返せば、親しくなることができるのだと分かった。

SNSというツールを得たことで、紗耶香の人生は劇的に変わろうとしていた。

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