【小説1-1】スクールカースト下位だった私が、レンタル彼女になったワケ
――子供の頃から、人の顔色を見るクセがあった。
相手が不快に思っていないかどうか、怒っていないかどうが、呆れていないかどうか、バカにしていないかどうか……気づいたらそんなことを考えている。
相手の反応を受けて、いちいちビクビクするようなことは少なくなったが、自分の第一印象を良く思われたい気持ちは今でも変わらないなと、平泉紗耶香はほんの少しだけ過去を振り返った。
なぜなら、沙耶香の所属する秘書課を束ねる秋山から、その場しのぎの愛想笑いを咎められたからだ。
新卒で入社をして今年で三年目。
花形とも言われる秘書課に配属をされて、そろそろ半年が経とうとしている。入社してからほどなくして秘書課の存在を知った沙耶香は、女性の華やかさとたおやかさ、そしてカッコ良さを知って、自分もあの中に入りたいと思った。
何度か転課を願い出て、二年後にやっと叶った秘書課への配属だった。
来客の対応から役員のスケジュール管理など、業務に関してはそつなくこなしてきたつもりだ。それなのに、こうして個別の面談を設けられている事実は、紗耶香を暗い気持ちにさせた。
紗耶香自身は、愛想笑いをしてしまっている意識はなく、笑顔でいるつもりだ。「いつも笑っているね」とか「笑顔がいいね」と言われることも多く、沙耶香もその笑顔がアピールポイントだと思っていた。
だからこそ、それを欠点のように指摘されるとは意外だった。
「楽しくて笑っているならいいのよ。けれども、平泉さんの場合は、媚びているというか、なんだか嘘っぽいのよね。その目の奥、笑っていないわよ」
秋山にそう言われて、ドキッとする。
『媚びている』『嘘っぽい』『目が笑っていない』という指摘は、あながち間違っていない。人と接する際に、常に緊張している紗耶香のことを、秋山はすっかり見透しているようだ。
「あなたがプライベートでやる分には問題ないのよ。今流行りの、何……? あざと可愛いとか? それでも結構だわ。けれども、来客としていらっしゃるお客様は、人を見る目がある人がほとんどですからね。秘書課の人間がそんなだと、お客様に不信感を与えかねないの」
と、秋山は秘書課の課長らしく、はっきり言った。
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