【小説1-3】スクールカースト下位だった私が、レンタル彼女になったワケ
『本当の自分』という言葉がある。
『本当の』というからには、普段の自分は少なからず自分を偽っているということだ。
本当の紗耶香は、重度の人見知りで、初対面の人と打ち解けるのが苦手だった。それに、少しのことでクヨクヨしてしまい、周囲に歩調を合わせていないと不安になってしまう。
ふだん、職場で見せている紗耶香とは全く違う性格だ。
本当の自分を見せてしまえば、周囲から嫌われたり、がっかりされたりしてしまうだろう。だからこそ、本当の自分が出て来ないように、常に気を張っている。そのせいもあって、昼休みくらいは肩の力を抜いていたいと、こうして一人で過ごす時間を大切にしているのだった。
中学生の頃までは、平泉紗耶香というクラスメイトなど、誰からも認識されていなかっただろう。せいぜいが「あ、そんな人いたよね」「名前はわかるけど話したことない」と言われるのが関の山だ。なぜなら、学校にいる時はずっと息を殺すようにして、下を向いて過ごしていたからだ。
たまに話しかけてくる相手はいたが、そういう相手に対して紗耶香は一言も返事をすることができない。変なことを言ってしまわないか、笑われないかばかりが気になって、何も言うことができなくなってしまう。
そうなると、ますます下を向くことしかできなくて、初めからいなかったような扱いをされるため、幸いにもいじめられることはなかった。
――ただ、毎日が孤独だった。
一人でいることに慣れはしたが、孤独に慣れたわけではない。
クラスの中にはいくつかグループがあって、紗耶香はもちろんどのグループにも所属してはいなかった。けれども、年頃の女の子らしく、グループ単位で行動をすることに憧れていた。
一緒に昼休みを過ごす、移動教室へ行く、給食を食べる、休日に遊ぶ、お揃いの物を持つ……。どれも、紗耶香には手に入れることができず、羨ましいことだった。
もし、自分がグループに入れたら、昼休みはグループで固まって話をしたり、ふざけながら移動教室に行ったり、昨日観たテレビの話で盛り上がりながらお昼を食べたり、休みの日には服を買いに行ったりするだろう。
教室の隅でうつむきながらも、紗耶香は頭の中で架空の友人と会話をしたり、いつか自分があの輪の中に入ることを妄想していたのである。
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