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アクセスの多い記事

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全体ビュー(全期間)でアクセスの多い記事を集めました。アクセスの多い順に並べてあります。
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#古井由吉

山の記憶、「山」の記憶

山の記憶、「山」の記憶

 今回は、川端康成の『山の音』の読書感想文です。この作品については「ひとりで聞く音」でも書いたことがあります。

◆山と「山」
 山は山ではないのに山としてまかり通っている。
 山は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通っている。

 体感しやすいように書き換えると以下のようになります。

「山」は山ではないのに山としてまかり通っている。
「山」は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通って

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「似ている」を求めて(「客」小説を求めて・01)

「似ている」を求めて(「客」小説を求めて・01)

「客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)」の続きです。ただし、今回のこの記事は新しい連載の第一回として書きます。

 なお、「「物に立たれて」を読む」は続けます。

*前回のまとめ
 まず連載を始める切っ掛けになった前回の記事をまとめます。

*「客」小説、ゲスト・ノベル
 語り手をふくめ、主要な登場人物が「客」である小説はきわめて多いと感じます。こじつければあ

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壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)

壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)

 今回は「ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)」の続きです。

「散文について」という連載を始めます。私は一般論やなんらかの分野の専門用語や学術語には疎いです。そんなわけで、ここでは私にとっての散文と小説について書きます。

*最初から壊れている
 文学史的なことは知りませんが、私にとって散文とは最初から壊れているものというイメージがあります。

 何をどんなふうに書いてもいい形

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言葉は「出る」、文字は「現れる」

言葉は「出る」、文字は「現れる」

「赤ちゃんのいる空間」の続きです。

 今回は個人的な語感に基づいた話をします。まず、まとめから書きます。

*まとめ 
 まず、今回のテーマである「出る」と「現れる」という言葉と文字についての私のイメージをまとめます。

「出るもの」と「現れるもの」という分け方をしますが、世界に「出るもの」と「現れるもの」の二種類のものがあるという意味ではありません。

「出る」も「現れる」も言葉です。この日本

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「どこでもない空間、いつでもない時間」(「物に立たれて」を読む・08)

「どこでもない空間、いつでもない時間」(「物に立たれて」を読む・08)

*「転々とする、転がる、ころころ変わる(「物に立たれて」を読む・06)」
*「客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作の『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)を使用します。

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「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)

「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)

 ようやく涼しくなってきたので、古井由吉の小説の感想文を書きたいと思います。体調を考慮して、少しずつ作業を進めていきます。具体的には、一回の記事でのテーマを絞っていくつもりです。

 古井由吉の小説については、このアカウントを開設した初期のころには、集中的に記事を書いていました。

 古井由吉の作品の感想文を連載として投稿するのは久しぶりです。

     *

 引用するさいには、古井由吉作の『

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転々とする、転がる、ころころ変わる(「物に立たれて」を読む・06)

転々とする、転がる、ころころ変わる(「物に立たれて」を読む・06)

*「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」
*「月、日(「物に立たれて」を読む・02)」
*「日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)」
*「日記、日記体、小説(「物に立たれて」を読む・04)」
*「「失調」で始まる小説(「物に立たれて」を読む・05)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガ

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日記、日記体、小説(「物に立たれて」を読む・04)

日記、日記体、小説(「物に立たれて」を読む・04)

*「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」
*「月、日(「物に立たれて」を読む・02)」
*「日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作の『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)を使用します。

  

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日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)

日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)

*「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」
*「月、日(「物に立たれて」を読む・02)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作の『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)を使用します。

     *

 まず、前回の記事をまとめます。

 

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月、日(「物に立たれて」を読む・02)

月、日(「物に立たれて」を読む・02)

「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」の続きです。古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作の『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)を使用します。

     *

 まず、前回の記事をまとめます。

 では、今回の記事を始めます。

*引用

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「失調」で始まる小説(「物に立たれて」を読む・05)

「失調」で始まる小説(「物に立たれて」を読む・05)

*「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」
*「月、日(「物に立たれて」を読む・02)」
*「日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)」
*「日記、日記体、小説(「物に立たれて」を読む・04)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作

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始まりと途中と終わりのあるものを、始まりと途中と終わりのないものとして読む(散文について・05)

始まりと途中と終わりのあるものを、始まりと途中と終わりのないものとして読む(散文について・05)

 違う連載の記事ですが、「「どこでもない空間、いつでもない時間」(「物に立たれて」を読む・08)」の続きとして書きます。

「壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)」の続編でもあります。

*はじめに 
 みなさんは、ある種の短詩、たとえば俳句をどのように鑑賞なさっているでしょうか? 

 俳句であれば、五七五です。短いです。短いからこそ、できることがあるように思います

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読みやすさについて

読みやすさについて

 今回は、「読みにくさについて」に引き続き、執筆中の記事の一部を独立させて、先に投稿することにします。これは体調が良くないための措置で、全体を一気に書こうとして無理をしないようにとの配慮からです。

 現在執筆している記事のタイトル(仮題)は「sense・意味・方向、order・順序・序列、space・空間・空白」です。前回の「読みにくさについて」では「sense・意味・方向、order・秩序・序

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客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)

客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)

*「「物に立たれて」(「物に立たれて」を読む・01)」
*「月、日(「物に立たれて」を読む・02)」
*「日、月、明(「物に立たれて」を読む・03)」
*「日記、日記体、小説(「物に立たれて」を読む・04)」
*「「失調」で始まる小説(「物に立たれて」を読む・05)」
*「転々とする、転がる、ころころ変わる(「物に立たれて」を読む・06)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」とい

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