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#文字
山の記憶、「山」の記憶
今回は、川端康成の『山の音』の読書感想文です。この作品については「ひとりで聞く音」でも書いたことがあります。
◆山と「山」
山は山ではないのに山としてまかり通っている。
山は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通っている。
体感しやすいように書き換えると以下のようになります。
「山」は山ではないのに山としてまかり通っている。
「山」は山とぜんぜん似ていないのに山としてまかり通って
小説にあって物語にはないもの(文字について・03)
小説にあって物語にはないものがあります。今回は、誰が見ても明らかなもの、誰の目にでも付くものを挙げてみます。
空白と黒いページです。
読んでいて不意に現れる白い部分、真っ黒なページですから、目に付くはずです。
こうしたものは、物語にはありませんでした。あり得なかったというべきでしょう。
ここで言う物語とは、もとが口頭で語られ、長い間口頭で伝えられていたものです。口承文学とも呼ばれ
「やま」に「山」を当てる、「山」に「やま」を当てる(言葉の中の言葉・02)
今回は「あなたとの出会い」で見た詩を、違った視点から見てみます。
*翻訳された詩
上田敏訳の「山のあなた」(『海潮音』より)というカール・ブッセ(上田敏はカアル・ブッセと表記しています)の詩を見てみます。
この詩は青空文庫でも読めますが、だいぶ下のほうにあって、探しづらいかもしれません。
*
まず、訳詩です。
以下は、ドイツ語の原文です。
残念ながら私はドイツ語に