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ネタバレ全開!Y&A特撮フカボリLabo 7

不遇の戦隊『光戦隊マスクマン』


 お久しぶりです。

 今回、語りたいのは『光戦隊マスクマン』(1987年放映)。
 この作品、You Tubeなどではなかなか観られない。私も昔のよしみのTTFCとAmazon(有料)でどうにか鑑賞できたに過ぎない。
 けれど、どうしてどうして。中々の秀作と思っているのでここに書くことにした。

 ただタイトルに書いた通りこの作品、内容はかなりいいのにネットが一般的に定着する以前のTVでもほとんど再放送がなかった。
 私にも推測がつく大きな理由。
 それはコンセプトが「オーラパワー」を駆使して人類を脅かす地底人たちの組織・チューブと戦う、というものだったから。
 オープニングでは、谷隼人の扮する姿長官が、座禅を組んだまま”オーラパワー(=気)”の力で宙に浮かぶカットが出てくる。
 1995年の地下鉄サリン事件以降、この描写は大抵の日本人にとって拒絶反応を引き起こすものになった。言わずと知れた教祖の松本智津夫がこれと同じことをしたためである。
 放映年度と事件の発生年とでは隔たりがあるが、それまでも彼らは選挙に出馬するなどしてこういう姿を見せていた。そしてその姿は犯罪を犯していないその頃でも、決して世間にいい印象を与えてはいなかった。

 だが、物語はカルト宗教とは全く違う性質のものだ。

 何よりキャラクターたちの突き抜けた健やかさと明るさが、それを雄弁に否定してくれる。
 そう、この作品、キャラクターたちが想定外に好感度の高いリアクションを見せてくれるのだ。

 主人公・レッドマスクのタケルはある日、突然現れた裸足の美女・ミオと熱烈な恋に落ちる。だが愛を重ねる日々の中、チューブの来襲により引き起こされた地震の地割れに、彼女は吸い込まれてしまう。タケルはそれでもミオの生存に一縷の望みをかけて、一途に彼女を想い続ける。

 ブルーマスクのアキラは16歳らしい、可愛らしい弟キャラと甘いマスク、それをいい意味で裏切るような、キレッキレの太極拳の腕前(この演者さんは当時、世界1,2を争う、トップレベルの太極拳の選手だった)でTVの前の私を魅了した。
 マジ、結婚したいとまで当時は思った(苦笑)。

 けれど後から観返して魅力を再発見できたのは、残る3人の方だった。

 ブラックマスクのケンタ。
 彼は戦隊でも時々描かれがちな、女好きだが全く女の子からは好かれないという、男性の共感を呼びそうな、でも女性にも親しみやすいキャラだった。
 それなのに、すごく気になる女の子を追いかけようとして、目の前でおばあちゃんが(車にひかれてもおかしくないほど、よろよろと)横断歩道を渡りはじめたら、それを見兼ねてそちらに手を貸しに行くのだ。

 また話の中で一度だけ、女性の方もケンタに好意を持ったことがあったのだが、ケンタはその娘を戦いに巻き込むわけにはいかない、と自分の想いを断ち切るのだ。
 それまでのケンタの、女性に対する好意が報われないことについては並々ならぬものがあっただけに、この決断には驚かされた。
(観ている側としては、結ばれてもいいんじゃない?と思えるものだった)
 そしてその後のケンタの女性への好意は、話中では全て報われないのだったー。

 ここまで女性関係には恵まれないのに、決して助けるべき人を見誤らない。こういう人は戦隊シリーズでも、中々いないと思う。

 女性陣も負けてはいない。
 ピンクマスクのモモコ。
 ロングヘアのよく似合う美女で、濃いめの眉でもきつい感じを与えず、かわいらしい印象が強かった。
 花を終始大事に育て、メルヘンな夢を見たことをハルカに話して「少女趣味」と、からかわれたりする。
 他の3人がチューブの怪人に氷漬けにされた時には、年下のアキラと二人っきりで戦わなければならず、そのアキラ相手にも怯えを隠せないまま戦いに向かう様に、「可憐」という二文字しか私の脳には浮かばなかった。
 が、子ども達に太極拳を教える姿は凛々しい、を越えて雄々しい。それどころか、自分の教え子の子ども達がチューブの怪人に騙されてさらわれたことを知ると、その可憐さの片鱗すら見えない猛々しさをもって、鬼の形相で追いすがる。
 近いところで、普段のモモコはシンケンイエローのことはちゃんとキャラが被るが、この話で彼女は軽々とこれを凌駕していった。

 そして最も楽しく予想を裏切るキャラを見せてくれたのがイエローマスクのハルカ。
 モモコとは反対に設定されたような、ショートカットの活動的なキャラクターだ。忍者の末裔で、忍術を使って敵と戦う。ーこういう設定はまぁまぁよくある。
 が、悲しみや怒りに感極まった時のハルカはすごい。
 普通なら「放っといてよ!」と目に涙を浮かべながら基地を飛びだすくらいで済むはずのところを、ハルカは味方に向けて煙玉を爆発させる!(いや、基地の中が煙で充満しちゃうだろ!)
またある時は煙玉こそ使わずに基地を飛びだしたものの、何を思ったか真夜中のプールに飛び込み、悲しみを表現する。

 もう、斜め上の反応どころではない。

 それ以外でも設定の都合なのか、「忍者の修行で叶わなかったけど、本当はダンサーになりたかった」という腕前をもって、ハルカがダンススクールに通えない少女のインストラクターになってコンクールの優勝を目指したりする話もあって、とにかく見ていて飽きない娘なのだ。
(優勝するってことは、本格的にダンスを教えているスクールの先生とタイマンを張るってことだからねぇ、これ)
 1周目はアキラ君に見とれていた私だったが、2周目にはこのハルカちゃんにすっかり心を奪われ、とうとうファンになってしまった。

 残念ながら、ストーリーの最後の方はちょっとグダグダになってしまった印象が拭えないが、『マスクマン』はストーリーもキャラクターも、今の戦隊にはない、規格外の感性を楽しめる作品だと思う。

 ちょっと盛り上がりはじめると宗教がらみの事件が起こったりして、そのたびに冷や水を掛けられる不遇の戦隊の一面もあるが、そこは関係ないものとして評価されたら嬉しいな、と思う作品である。

 ちなみに『マスクマン』の胸の「5」のマークは、この戦隊が『ファイブマン』で打って出ようとしたものの、ボツになった名残らしい。
 別個に『ファイブマン』が制作されただけに、やっぱりちょっと可哀想…。

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