知って選ばないということ
7月最終日。日本の夏は東南アジアよりも暑い気がしています。
今日は普段は書きませんが、自分のことではないことを書こうと思います。
色んな人生があって、色んな生き方がありますが、勇気を持って一歩踏み出した仲間がいたことの備忘録として。
彼は日本生まれ日本育ちの、インドネシアにルーツを持った選手。2年間チームメイトとして共に戦った彼が、先日20代前半での引退を決断しました。寂しい想いと同時に、怪我の状態や自分自身の人生とも向き合って決めたと聞いて、私は彼の決断をとても誇らしく思いました。
同じチームでポジションを争ったライバルでもあり、同じ目標に向かって戦った仲間。
サッカー以外では、異国で同じ言葉でくだらない話ができる友人であり、いつも気にかけたくなる家族のような存在でもありました。
年齢は9個も私が上ですが、そんなことがただの数字でしかないくらい、楽しい時間を過ごすことができたことは、私にとって大きな喜びのひとつでした。
初めて私がチームに合流した日。
突然、「こんにちは!」と日本語で挨拶をされ、異国で部活みたいな挨拶をしてくる人がいるとは思ってもいなかったので、驚いたのを覚えています。
私が知っている彼の姿は、ほんの一部分に過ぎないと思いますが、大きな怪我を経験したり、苦しい時もたくさんあっただろうと思います。それでも自分を鼓舞して、誰も見ていないところで練習する姿も私は何度も見てきました。
彼と一緒にプレーしたのは2年間で1試合のみ。時間にして15分ほどでしたが、大きな怪我や苦しみを乗り越えて、途中出場で出てきた時の感動は心を動かされるものでした。
高校を卒業をして、単身異国に渡り、プロを目指して挑戦するという決断をしたこと。実際に自身の手でプロ契約を勝ち取り、約3年間プレーしたこと。
プロとしての年数や出場時間では測れない、素晴らしい経験をしたんじゃないかなと思います。
18歳で単身異国に渡って生活することが、どれだけ勇気のいることか。きっと私の想像もつかない苦労や苦悩があっただろうと思います。
そこを乗り越えて一歩踏み出し、プロとしての道を掴んだことは、色んな人に夢や勇気を与えたと思います。私自身も勇気や刺激をもらった1人です。
誰もがプロになれるわけではなく、チャンスを得て、挑戦し、それを実際に掴みにいける人は、自分が思っているよりも遥かに少ない。
だからこそ、勇気を持って、素晴らしいチャレンジをした仲間との縁があったことを備忘録として、今回綴らせてもらいました。
「知って選ばないのと、知らないで選ばないのは違う」
これは、私がプロになりたいと思っていた頃にかけて貰った言葉です。
プロの世界がどんなところなのか。自分の本当の気持ちはどんなものなのか。それは挑戦したからこそ得られるものだろうと、プロという厳しい競争の世界に飛び込み、自分の目で確かめてこようと思ったのを覚えています。
きっと彼も自分で飛び込んだからこそ、このタイミングで違う道に進む事を選んだのだと思います。
挑戦しなかったそれとは、全く違う価値の現在があるだろうと。
色んな人生や生き方がある中で、自分の人生を自分で評価する道を選ぶことは、難しいことであり、価値のあることでもあると私は思いました。
寂しい気持ちもありますが、一緒にプレーし、共に過ごした日々をこれから何年か経った時、ふと思い出し、そんな時もあったなと懐かしく思いながら、また一杯どこかでやれるのを楽しみにしています。
お疲れ様!
ではまた。
“ It’s up to you “
Renshi