夢幻鉄道 14 卒婚
久しぶりに昔の旅仲間の彼女に会った。
ふわふわとした雰囲気はそのままで「あ、久しぶり。」とにこやかに言って去っていった。
その前はいつだったか。彼女の婚姻届の証人になったときだったかな。今回、僕も結婚することになり、招待状を送った。来てくれるかな。そう思いながら床につく。
~ある日だれかの夢の中に入る。それが夢幻鉄道の物語となる~
“結婚おめでとう。幸せになってね。“という想念と共に、いつの間にか繋いでいた手から、本当に幸せを祈ってくれているのが伝わってくる。ああ、懐かしいな。こういう女性だった。
“休んでたと聞いたよ。どこか悪いの?“
僕が気になってたことを聞いた。
“結婚に対しての卒業証書をいただいたの。“とだけ言うと顔を反対側に向けてしまった。
繋いだ手が震えているから、泣いてるんだな。
“私はこの経験を学びに変えるよ。国籍も肌の色も宗教も飛び越えた。今度は性別と年齢を超えるよ。体と心が離れてしまう乖離DIDについても経験して感謝してるんだ“今年は大脱皮するよ。そのタイミングで、あなたに再会できてよかった。それぞれの道で経験と感動の大輪の花束を抱えて、また、いつか交差する時がきたら、たくさん笑おうね。“
“うんうん。“
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そこで目が覚めた。僕の右手があたたかかった。同時に心も温かかった。
彼女の言葉選びは美しい。変わらないものがそこに感じられた。
どうしてだろう、付き合ったことも無い異性の友。彼女の卒婚と僕の結婚は、同時期に交差点で交わった。お互いにエールを送りあう。
そんな関係性。君にもあるかな。