【Vol.29】サラリーマンは丁稚奉公
サラリーマンの源流は丁稚だと思います。
丁稚奉公自体はそれほど悪いものでもなく、右も左もわからない若造を教え、鍛える職業訓練所やインターンシップのような機能がありました。
このような場がなければ、都市は乞食や盗人で溢れいていたことでしょう。
修行は相当厳しく、自由もなく、報酬もかなり低いものだったと思いますが、若者に仕事を提供して、最低限の寝食を保証していたのです。
丁稚は修行して一人前になり、独立していきました。
時代は変わり、奉公先が商家から会社となり、指導者が主人から上司になりました。
会社は大規模で、部署に分断され、上司は部分的なことだけしか教えることができなくなりました。
大量生産や分業など時代の要請もあり、サラリーマンという不思議な職業が誕生したわけですが、丁稚のままで一人前として独立できなくなったのがサラリーマンだと思います。(もちろん、分業のスペシャリストになって独立する人もいますが、全体で見たらごく少数です)
法律が整備され、労働条件も格段に良くなり、収入も安定して、ある程度の自由も保証されるようになりましたが、サラリーマンは一人前になって独立することができず、歯車のままで職業人生を終える不全感を背負う運命を押しつけられることになりました。
右肩下がりの経済が続く現代では、会社も高齢のサラリーマンを雇い続けることが難しくなってきています。
困ったのはサラリーマンという職業は会社限定のスキルが多く、能力もアマチュアレベルで、人脈も会社の看板頼みなことが多いから、会社から捨てられるとどうにもならないことです。
皮肉ですが、組織の規模が大きいほど個人の職業資産は低い傾向だと思います。
サラリーマンという職業の限界が暗い影を落とすようになりました。