FIREではなくFREEがいい(1)
いきなり結論だけど、FIREよりはFREEを目指した方がいい。
多くの人が目にしたことがあり、知っていると思うが、
"FIRE"は"Financial Independence,Retire Early"の略語だ。
代わりに提唱したい"FREE"は"Freelance"の略語だ。こちらはかなり昔からあるけど、再評価の時代になってきたと思っている。
FIREは証券会社の広告活動ではないだろうかと訝っている。
サイドFIREとか色々な亜種みたいなネーミングも出ているが、それ自体がFIREのコンセプトの弱さ、自己矛盾がよく現れている証拠だろう。
かつてのDINKSのように消えていく運命だろうから、そんな一時の流行に自分の人生を安易に委ねるのはとても危険だと思う。
まず、大前提として、FIREの分厚い壁を知っておこう。
FIREはインデックス株で4%の配当所得で生活することを目標にする戦略だけど、多くの人にとってはかなりハードルが高いだろう。
少し計算すればわかるけど、仮に年間の生活費500万円を配当所得だけで得ようとすると、元本は約1.6億円必要になる。
複利という神様の力を使っても、到達するのはかなり遅い。
大雑把だけど、毎月13.7万円を40年間、年利4%の複利で積み立ててやっと1.6億円だ。4%の年利も約束されているわけでもないし、毎月15万円近くを40年間も積み立てるのは、ほとんどの人にとって無理だろう。
もし仮に達成できたとしても、これでは"FIRE"とはとても呼べない。
"Financial Independence(経済的独立)"だとしても、"Retire Early(早期引退)"ではないから。
インデックス株は長期投資の商品で、FIREの手段にするには相性が悪い。
RE(早期引退)したいなら、FI(経済的独立)するための手段ではなく、FIした後に購入する投資商品だろう。
また、最近ではコロナショックもあったように、世界経済は不定期に極端な不況に陥ることがある。株価の暴落時は、元本が半分以下になることもあるだろうし、配当が出ないこともあるだろう。
一時的とはいえ、コツコツと何十年も貯めたインデックス株の価値が半分以下になっても、何もなす術はない。
依存度が高ければ高いほど、精神的なダメージも高くなるはずだ。
インデックス株自体を否定するつもりは全くなく、優れた商品だと思うが、完全依存するライフスタイルはリスクが高い。
国の年金制度が怪しいから、老後に少しの足しになればいいという程度のスタンスで貯金の代わりにすることには賛成だ。
インデックス投資だろうと何だろうと、すべての投資に絶対に安全などなく、自己責任だ。
絶対に安全という投資商品を勧められたら、それは間違いなく詐欺商品だ。
以上はFI(経済的独立・Financial Independence)の脆弱性だ。
次に、RE(早期引退・Retire Early)の脆弱性について書いてみたい。
人間は社会的な生き物で、社会と関わらずに生きていくことは不可能だ。
社会に貢献して、他者に喜ばれ、その対価を報酬としてもらうことによって幸福を感じるように遺伝子でプログラムされている。
RE(早期引退・Retire Early) してしまうと、この幸福感を失うことになる。
多くの人が早期引退の夢を見るのは、今の仕事や職場が苦痛だからだろう。
しかし、早期引退した後のプランは何かあるのだろうか?
明確なプランがない人は辞めておいた方がいい。
最初のうちは自由に遊ぶことで充実するだろうけど、やがて退屈に絶望し、引退を辞めて元に戻っていく人も多いはずだ。
RetireをRetireするという笑えない結末になる。
仕事が苦痛なのは、金を稼ぐために、自分がやりたくもないことを他人に強制されているからだ。または、大企業組織の歯車で、自分がやっている仕事の役割が見えず、社会から感謝もされないからだ。
そういう人間たちが多く集まれば、人間関係が良いわけはないし、モチベーションも低く、職場全体の環境が悪くなるのは当たり前だ。
自分にやりたいことが明確にあり、そういう人間たちに囲まれていれば、仕事だからといって苦痛は感じないだろう。
大体何もすることがないと、良くてニート、酷いとアル中や廃人になる。
東南アジアなどではリタイアしたアル中をたまに見かけるけど(沈没)、孤独で短命な人が多いのではないだろうか?
やることが何もないというのは、思っているよりかなり地獄だ。
FIREを信仰するのは、マッチ売りの少女がマッチをするみたいなものだ。
最初は勢いよく燃えるけど、すぐに灰になって消える運命だ。
一瞬の幻想が消えた後には残酷な現実に戻る。現実逃避の罠だ。
長くなってしまったので、FREEについては次回書きたい。(つづく)