宝石の夢(小説)
「どっ、どゅえぇえぇえぇッ!?!?」
ベッドから転げ落ちた衝撃で目が覚めると、私ゼロはダイヤモンドになっていた。…いや、本当に。体は叩いてもコチンという音、輝かしい全身。…ていうか足の小指が、ない!?辺りを見回して、小さい宝石を見つける。小さい悲鳴を漏らしつつ、体に痛みが無いことを確認し転ばないようにゆっくりと立ち上がってみる。
「た、てる…よかった…ていうか、どゆこと…」
どうやら私だけ宝石、ダイヤモンドになっているようだ。呆気にとられてポカンとしていると、パタパタと同居人のイチが部屋に入ってきた。
「どうしたの?って、眩しっ…。」
「イチ!聞いてくれ!俺、宝石になってるんだけど!?」
「はぁ?」
呆れ顔でまじまじと見るイチ。普段表情にあまり出さない彼女だが、みるみると表情が動いていくのが分かった。
「どっ、どゅえぇえぇえぇッ!?!?」
同じ悲鳴が聞こえた。デジャブかよ、と思ったりしてるうちに私自身はどうやら落ち着いたみたいだ(状況は呑み込めていないが)。
「ど、どういうこと…」
「俺だって状況が飲み込めないんだけど…」
そんなこんなお互いを落ち着けるために会話を続けていたら、ドアから激しくドンドンと鳴る音が聞こえた。
「ど、どちら様?」
イチが声をかけると知らない人達がドアを蹴破り私の部屋に入ってきた。
「おい!誰だ!」
私が声を出すのもつかの間、急に体のバランスが崩れて視点が90度動いた。
「ゼロ!」
イチの悲鳴で視線を上げると知らない男が金槌を私の頭に向かって殴ろうとしているところまで見えた。
ある日突然、ダイヤモンドになって、小指を無くして、そんでもって殺されるなんて…いや、殺されるじゃなくて粉々にされる、が正解か?なんて日だ!と叫んだ瞬間。
「どっ、どゅえぇえぇえぇッ!?!?」
ベットから転げ落ちた衝撃で目が覚めた。痛くて悲鳴を上げてしまったようだ。青ざめた体で手と足の指を見る。
「ゆ、夢…オチ…。」
小説にある展開すぎてベタだが、夢だと分かって安堵した。もう一度ベッドで眠ろうと立ち上がった時、どうやらイチがさっきの声を聞きつけたようだ。ドタドタと大きい音を立てて走ってきた。
「どうしたの!?」
「って…眩しっ…!?」
どうやら悪夢はまだ続いているようだった。