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2つのWBCが教えてくれた時代の変化②〜白血球編

【悲願は「太陽路線」のがん治療】
日本の野球が「北風と太陽」でいえば、笑顔絶えない太陽路線で優勝したことは私にも希望をもたらしたことを前回の記事で書いた。

これまで世の中で起こっている問題への対処は「北風」路線で行われることが多かったように思う。例えば、世界中のテロリストへの対処において、大国や国連は自衛と称して、テロリストを爆撃してきた。しかしそれによって、テロリストだけでなく、多くの罪なき民間人が死傷し、対象となる小国のインフラはボロボロになった。

一方、戦闘に反対する人々の中には、テロリストになる人々がなぜテロ組織に入ってしまうかの原因を突き止め、入る前に引き留めようと、貧困対策などを行っている人もいる。戦闘のない「太陽」路線の対策だ。しかし、この太陽路線ではテロの増加に追い付かないと、やはり、爆撃などの「北風」対策が主に行われている。しかし、これでは憎悪の連鎖を産むばかりで、テロ撲滅にはなり得ない。テロリストの潜伏する国はどこまで民間人の犠牲に耐えられるのか、ギリギリまで攻撃は続くのだ。

そして、それは正常細胞へのダメージに耐えながらがん細胞を撲滅しようとする抗がん剤治療に似ている。自分の正常な細胞を犠牲にしつつの「北風」治療だ。がん治療の分野にも「太陽」路線の治療が主流にならないものか。それはがんを患って以来の悲願である。

【「はたらく細胞」に気づかされたこと】
WBCの試合を見ながらそんなことを考えていた頃、私はもう一つ見始めたものがあった。「はたらく細胞」という漫画をご存知だろうか。体内を舞台に、赤血球や白血球などの免疫細胞を擬人化して、インフルエンザにかかったり、熱中症になった時、身体の中ではどういうことが行われるかを描いている。その漫画のアニメ版がNetflixで配信されていたのだ。

配信されている14のストーリーでは感染症、外傷、生活習慣病、アレルギー、食中毒、がんなどに免疫細胞たちがどう対処するか、血液循環の仕組みや胸腺細胞についてなど、身体が恒常性を保つためのはたらきが描かれている。免疫細胞や血球たちは、どんな身体の状態にも対処し、自分の住処である身体を守るために、本当に一生懸命に働いている。宿主の人間が不摂生をすればするほど、彼らの仕事は大変になり、時には自らの命も賭して健気に働いてくれるのだ。生活習慣病であるがんを患っている私は、体内で、負けそうになっては持ち直し、必死で頑張っているであろう自らの体内の免疫細胞たちのことを思って涙せずにはいられなかった。その涙がピークに達したのは、やはり「がん細胞」のことを描いた回だった。

【がん細胞の悲しみ】
細胞コピープログラムのバグによって生まれたがん細胞は、生まれたばかりの小さい頃から悪者扱いされ、免疫細胞に命を狙われている。がん細胞とて、命を与えられた宿主の細胞の一つだ。自分の意思でこんな姿になったわけでなく、生まれた時にはすでにがん細胞として、パトロールする免疫細胞に命を狙われ逃げ回らねばならない存在だったのだ。そんながん細胞は常に命をつけ狙われる自分を守るためにどんどん増殖して仲間を増やそうとする。しかし、容赦なく襲ってくる免疫細胞たち。そんな免疫細胞である白血球に対し、がん細胞は「自分だってがん細胞になりたくて生まれてきたわけじゃない。なのになぜ、毎日殺されそうになりながら逃げ惑わなければならないんだ。こんな人生を望んで生まれてきたわけじゃない。」と叫ぶのだ。鬼束ちひろの「月光」のサビが浮かぶ。この腐敗した世界とは、不摂生により汚れた私の身体だ。

このがん細胞の涙ながらの叫びを聞きながら、私はごめんねとしかいえなかった。私の不摂生が細胞のコピーにバグを生んだのかもしれないのだ。不摂生ということについては思い当たることがたくさんある私は、がん細胞に謝っても謝りきれない。できることは、せめて安らかに死んでいって欲しいと願うこと。仏教で言えば成仏して欲しい。

体内でいらなくなった細胞はアポトーシスという仕組みによってプログラム死するようにできている。免疫細胞たちはがん細胞のアポトーシスを促すのであるが、がん細胞の成仏とは、このアポトーシスによって死ぬことかもしれない。
体内で生まれたがん細胞は、日々生まれては免疫細胞によって葬られ、健康な人の場合は、大きくなる前に消えてゆく。これが身体の自然な働きであり、私たちの身体をがん細胞の増殖からも守ってくれている。しかし、不摂生や何らかのストレスが続くと、がん細胞は増殖を続け、免疫細胞も守りきれなくなって、体を蝕み始める。

そうなってくると、がんをなくすための治療が行われるわけだが、現在、標準治療として行われている三大療法、手術、抗がん剤、放射線は体へのダメージが大きく、特に抗がん剤の多くはがん細胞だけでなく、正常な細胞も殺してしまうため、正常な細胞が壊れて体調が悪くなるのとがん細胞が消えるののどちらが早いかを競うチキンレースのようなものだ。また、一種類の抗がん剤の投与でがんを消しきれなかった場合、そのがんは薬剤耐性を獲得して、さらに強力になったりする。それは、上記したテロリスト撲滅と同じようなもので、爆撃すれば、生き残ったものの憎悪は増し、さらに強硬にテロ行為を行うようになるのに似ている。

「北風」的なやり方にはどうしてもこういう副作用や辛い結果がついて回る。そうならないようにするためには、「太陽」的な方法によって、なるべく穏便に彼らに消えてもらうしかない。テロを穏便に減らす時は貧困対策などでテロリストのなり手を減らしていく。では、がん細胞にアポトーシスしてもらうにはどうすればいいのだろう。免疫細胞に頑張ってもらうには私たちは何をすればいいのだろう。

がん細胞はテロリスト集団にいつのまにか引き込まれていた少年兵のようである。彼らをテロ組織から引き戻すには、彼らの悲しみや怒りを理解し、仕事を与え、優しく保護する。がん細胞にとって、そうした理解や保護にあたるものは何なのだろう?

近年、免疫細胞を活性化して身体に戻す治療法なども生まれつつある。しかし、まだこれらは自由診療のため高額で、誰でも手が出せるものではない。
そういえば、「はたらく細胞」にもそんなシーンがあったが、ナチュラルキラー細胞は笑うことで活性化することは科学的にも証明されているようだ。これがどのくらい効果を持つかはまだ数値化されてはいないし、即効性のあるものでもないが、これは「太陽」路線の治療法としてひとつの希望である。今後、ほかにも笑いと同じような効果を持つ自然現象や生理現象が見つかって、なんとかがん細胞が安らかに成仏できる確実な方法の発見につながることを願う。

【そういえばこれもWBCだった】
そんなことを考えながら「はたらく細胞」を見ていて、私はあることに気づいた。このアニメのメインの登場人物(細胞)である白血球のユニフォームに『WBC』と書いてあるではないか。一瞬なぜ?と思ったが、すぐにそれがWhite Blood  Cellの頭文字であることに気づいた。そういえば、血液検査最初の項目である白血球量の横にWBCと書いてあったっけ。

野球の世界では今回のWBCをきっかけに新たな風が吹き始め、北風路線のチーム強化法から太陽路線に変わって行こうとしている。これはとても健康的なことだ。だとすると、がん患者の体内でどんどん白血球(WBC)が活発に働いて、がん細胞を穏便に消してくれる「太陽」路線の治療法が見直される日も近づいているのではないか、、、。そんな期待が頭の隅から湧いてきた。

体内の免疫細胞たちが活発に働ける環境を整え、彼らがどんどん働ける環境に体を変えていく方法がもっと研究されてもいいのではないかと、以前から思ってきた。副作用をもたらす対症療法ではなく、身体が自分で自分の病を治す力を強化し、がん細胞を消す太陽路線の方法の研究がもっともっと進んで欲しい。

チェックポイント阻害剤など、免疫の一部の機能を人間が作った薬で操作して、自然の摂理にはない身体の働きによってがん細胞を消すとか、免疫細胞を取り出して、外で活性化させて戻すといった、細胞の一部の機能を利用した人為的な免疫利用の方法はすでにあるが、そういうものではなく、身体全体の環境が整うことで自然に免疫が活性化する治療方法を見つけるということである。

【大谷翔平が目指したもの】
考えてみれば、大谷翔平が目指したのはこういうことではないのだろうか。ドーピングをせずに、食事やトレーニング完璧にすることで、世界最強の体を作り、世界最高のパフォーマンスにたどり着いた。それは彼が人間の身体の可能性を信じたからだろう。医療の世界も同じことではないのだろうか。今、がん治療の世界では、食事療法や瞑想などの精神統一法などが重視されることはほとんどない。こういう昔ながらの養生を標準治療と同時にやったところで、意味なしと言わんばかりの医師もまだまだ多い。けれど、やったところで副作用もなければ、体に悪いわけなどない食養生などがなぜ推奨されないのかが不思議でしょうがない。多くの医師は、人間が頭で考え、実験して作った薬や治療法は信じても、人間の身体自身の可能性というのは全く信じていないのである。もっと信じてもいいのではないだろうか。

大谷が愛読書にしているという中村天風の本、まださわりしか読んでいないが、多分書かれているのはそういうことであろう。彼自身、自分の力で当時の不治の病である結核を治した人である(前の投稿その①WBC野球編にそのことはやや詳しく書いています)。

長くなってしまった。なんだか、WBCつながりで思いついたことを無理やりこじつけて書いているように思う人もいるかもしれないが、私は本当にこう思う。野球のWBCと「はたらく細胞」のWBCを見ながら、スッとこういうことが頭に浮かんだし、こうした考えはこれまでも自らのがんと向き合う中で考え続けてきたことだ。

大谷をはじめとした侍JAPANの選手たちの楽しそうにプレイする姿と明るい笑顔を見たことで、世の中が北風から南風吹く太陽に路線にシフトしてくれることを期待した。そういう世の中の変化によって、がん治療の世界にも、WBC=白血球が力を増し、自然の摂理に従って平和的にがん細胞を減らす「太陽」路線の治療が登場し、主流となっていってくれることを願っている。


【補足:killerキラー殺人者ではなくpredatorプレデター捕食者?】

最後に一つ、この文章を書きながら思いついたことがあったので書きたしておく。
体内の免疫細胞のいくつかにはキラーT細胞やNK(ナチュラルキラー)細胞など、キラー(killer=殺人者)という言葉が付けられている。これは「闘病」という言葉の発想と同様、病を悪と捉えて、それを殺すという発想から人間が付けた名称だ。しかし、自分の細胞が変異したがん細胞を絶対悪と捉えて良いのだろうか。「はたらく細胞」の中でも描かれていたが、がん細胞自身、自らの意志でなく知らぬ間にバグによりがん細胞になっていたわけで、本人からしたら我が身の不幸を呪うしかないではないか。まだ解明はされていないが、がん細胞にも何らかの存在価値があって生まれている可能性だってなくはない。今はそれは置いておくが、がん細胞を単純に悪として、免疫細胞の名称に簡単に殺すという言葉を使うことはなんだか短絡的な気がする。しかし、免疫細胞ががん細胞をアポトーシスに誘導し、消滅させることは事実である。それは自然の摂理だ。だとしたら、それは殺すというより、食物連鎖の捕食のようなものと考えた方がよいのではないだろうか。生きるためには命を頂かざるを得ない、そんな関係だ。例えば、細胞のオートファジーという働きは体内で免疫細胞が貪食したがん細胞や細菌などをスクラップアンドビルトするもので、一旦分解し、その素材を使って、必要なものを再構成していく。そういう細胞の働きを考えると、免疫細胞もkillerキラーよりもpredatorプレデター捕食者という発想で名前をつけた方が良かったのではないかと思うのだ。そういう発想で命やがん細胞というものを考えることで、病に対する考え方も変わってくるのではないだろうか。これは、今後病気を治していく中で私も考えてみようと思う。


※現在、座っての作業しかできないため、仕事が限られており、
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自分で稼いで治療も暮らしも賄わねばならないのですが、こうしたおひとりさまが、同じ境遇に陥ったとき、どうやって生きていけるかの実験でもあります。
生活保護では標準治療しか受けられず、標準治療では余命を告げられる段階で、現在の私の考えている生き方の実験はできません。私も大谷翔平のように人間の体の可能性に賭けたいのです。何卒サポートよろしくお願いいたします。

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