がん対策基本法22条への不満
11月19、20両日にオンラインで開かれた「血液がんフォーラム2022」(認定NPO法人「キャンサーネットジャパン」主催)に参加した。血液がんの専門医たちが、悪性リンパ腫の種類ごとの特性や治療法、予後などについて解説したほか、患者団体の関係者らのトークが繰り広げられた。私が特に関心を抱いたのが、「がん対策基本法」に関する登壇者の不満だった。
「法22条で定められている民間団体の活動を支援するための施策(の実施)を感じたことがない」。フォーラムの共催者で、がん患者らでつくる一般社団法人「 グループ・ネクサス・ジャパン」の天野慎介理事長は、フォーラム内の座談会でこう嘆き、他の出席者たちもうなずいていた。
2006年に成立した基本法では、がんの予防や診断、治療技術の向上などを基本理念として掲げ、国と都道府県に総合的ながん対策の推進基本計画を定めるように義務付けている。がんの早期発見につなげるための検診の質の向上や全国どこでも同じ水準の治療が受けられるようにすることも要請。がんに関する情報提供や治療法の開発、患者の雇用の継続に向けた対策の推進も盛り込まれている。
民主党(当時)の参院議員だった故・山本孝史さんが法案審議で、自身ががんを患っていることを明かした上で、成立を訴えた姿を覚えている人もいるかもしれない。結果的には与野党が協力して成立させ、その後のがん対策を推進させるきっかけとなった。
さて、天野さんが指摘した22条の内容は次の通りだ。
明示されてはいないが、民間団体の活動を支援するための「必要な施策」には、財政的な支援や患者支援を担う人材の確保も含まれていると解釈していいだろう。しかし、天野さんは座談会で、財源やスタッフの確保の難しさを挙げながら、「支援活動はボランティアが主体。どんなに熱意があっても続けるのは3年が限界だ」という趣旨の発言をし、22条に定められた行政側の施策が十分ではないという考えを示していた。
詳細には言及されなかったので、現時点で天野さんの本意は分からない。背景を探れないかと思い、国会会議録検索システムで「がん対策基本法 二十二条」で過去の審議状況を振り返ったが、関連するやりとりがにわかには見当たらなかった。
リンパ腫を発症してから知ったが、患者は突然の告知で動揺する中、急いで病気に関する知識を身に付け、最も望ましい治療法を探り、仕事と治療を両立させ、高額の医療費を払い続ける事態と向き合わされる。そんな困難を乗り切るための相談窓口として、全国各地の「がん相談支援センター」という公的な機関はあるが、やはり頼りになるのは「グループ・ネクサス・ジャパン」のように患者の立場を理解している民間団体だ。彼らの活動の発展をはばむ原因があるなら、解消策を考える必要がある。
私自身、本格的な治療が一段落したら、その方策を探りたい。今後に向けて新たな目標ができた。
※2022年12月14日タイトルを修正