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THE GUILD勉強会 #04「攻めるメディア!」レポート 後編

第二部、THE GUILDの深津さんがモデレートするディスカッションの後編になります。

レポート前編
レポート中編
・レポート後編(当記事)


1対1で向き合い続けることでしか信頼を得られない


会場質問:日経電子版ではコンテンツは主にテキストですが、今後、テキスト以外の音声や動画コンテンツへどう取組まれる予定か教えて頂けますか。


武市
:音声や動画コンテンツは増やしていく方針で、すでに一部取り組んでいます。日経新聞には「経済の発展に寄与する(一部抜粋)」という社是があります。ですので、経済の発展のためにメディアとしてやるべきことに取り組んでいます。時代に応じて手段は変わるので、最適解が音声なら音声、動画なら動画に取り組みます。
その他では「コミュニティ」にも取り組んでいます。今は誰もが情報発信できる時代。個々の発信にフォーカスするのも、これからのメディアの役割と考えています。

会場質問:日経電子版やAbemaTVは、新聞やTVといったプラットフォームから、新たなプラットフォームへ移行し、プラットフォーム兼パブリッシャーという立場でコンテンツを提供されている。
TBSさんは現状、プラットフォームを作らずパブリッシャーに徹しているように見える。この先、どういった未来を描いているのでしょうか?


池田:個人的な意見になりますが…
「TBSニュース」というと、顔の見えないマスメディアの情報発信と受け止められがちです。ですが今なら、記者一人ひとりの顔が見え、記者ごとにフォロワーがいてコミュニケーションを取り、質問もできる。マスメディアの中にいる人間が、1対1で向き合う事には意味があるのではないでしょうか。例えば「TBSは嫌いだけど、池田ならフォローしておこうかな」という事もあり得ます。

今は(TBSという)名前だけで信頼してもらえる時代ではない。個々の専門性をもつ数百人の記者たちが、1対1で向き合う事が大事だと考えています。
「TVで放送したら観てくれるでしょ、サヨウナラ」ではなく、個々の記者がどういった取材をしてどういった情報を持っていて、どう分かりやすく伝えていくか。向き合う姿勢…

「誠実さ」というと、言葉が軽すぎますね…

たとえば。
Twitter上で罵倒しあっているのを見かけると勿体無いなって思う。応えられる事には応えていきたいです。
生活者と取材者の関係を構築していく為には、ただ愚直に向き合い続けるしかないのかな。

質問者:TBSとして、視聴者とのエンゲージメントを強めていく事が目的?

池田:どんなメディアも、ビジネスとか抜きにして人とちゃんと向き合っていかないと信頼されないと思うんですね。
CMだってニュースだって、視聴者を騙せない。
フェイクニュースだらけの、何を信じれば良いのか分からない社会にはしたくないので、質問に対してちゃんと応えられるような場を広げていかないといけないのではないでしょうか。

TBSを「向き合える会社」にしていけたら良いなと考えて働いています。


メディアの価値=良い議論がどれだけ生まれたか


会場質問:プロの作るコンテンツに優位性を感じているのか、優位性があるとすればその価値をどう計測しているのでしょうか?

武市:現時点では優位性を感じています。ストーリーでは、正面からコンテンツ力で勝負する取り組みを行い、良い効果が計測されたので継続している。
ただ事実だけのニュースをそのまま文字で伝える報道は、技術の発展によって早い段階で自動化されるかもしれない。また、それだけで読者に価値を感じてもらうのも難しいのではないか。

報道には「学び」が重要だと考えています。事実の裏にあるストーリー、難しい事象の解説、読者のキャリアに活かしやすい編集。
これは素人が簡単に作り出せるものではないと考えていて、例えば取材先との関係性、正確に分かりやすく伝える力といった、プロの技術が必要だと信じています。


:僕も、プロの作るコンテンツに優位性があると思っている。ニュース特集やドキュメンタリーは、まだネット上にあまり存在していない。そういった、まだ記事やYouTube動画で検索してもヒットしないコンテンツを積極的に作ろうと意識している。ただ、その価値を計測するための指標は作っている最中で、まだ話せる段階ではない。
現状の指標はPV数。作っている際に手応えを感じているコンテンツはPV数が伸びがち。

池田:難しいですね、PV数や再生数じゃない指標を見つけたいです。
ビジネスとは相容れないところもあるが、先程はなしたような向き合うことで価値を感じて頂けるようなニュースを出していかないといけない。
再生回数が多ければ良いコンテンツとは、みなさん考えていないと思うので、再生回数に変わる指標を会社を超えて議論していきたい。

深津noteでは、PV数は見なくて良いと社内で言っている。
noteは「書くメディア」なので、「書き続けられる事」を指標にしている。
読む側の立場では、記事の良し悪しはさほど重要とは考えていなくて、その記事が呼び水となってどれだけ良い議論が世の中に生まれたかというのが、インターネットやTwitter上では一番価値があると思っている。
「すごい名文の記事を読んで学んだ、終了」よりは、喧嘩になるかもしれないけど「この記事があったのでTPPに対する議論が何万人で行われた」「ブレグジットに対して議論が巻き起こり、個々の意思表明がこれだけ行われた」など、良い議論がどれだけ生まれたかが、これからのメディアの価値になっていくのかなと思っている。

こばかな:そろそろお時間になりますので、締めの言葉をお願いします。


深津:インターネット時代のメディアのスタンダードは何なのかというのを、会社を超えて共同研究していかないと、「我々はフェイクニュースに負けた」「我々はネコ動画に負けた」となりかねない。(会場:笑)


今日の勉強会が、会社を超えてメディア同士が手を組んで取り組むきっかけになれば良いなと思っています。

(会場拍手👏)

写真提供:THE GUILD

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