52.Dock
ステージ上に身を乗せた自分は夢うつつ
自分に向けられたまなざしを食べる。
どこにだって行けるような気持ちにさせてくれる
色とりどりの照明を全身に浴びながら
大きく息を吸い込み背伸びをする。
音は海。
とめどなく寄せては返す波と、どこまでも深く潜っていける未知の場所
冷静ではいられない閑かな熱がそこに存在している。
音の輪郭を撫でながら、
かなしみの淵を歩いたり、おとぎの国の中でワルツを踊ったり
鳥にだって、魚にだって、砂漠の夜空に光る星にだってなれる。
きっと何者にでもなれる瞬間があって
私はそれを愛している。
もっと深くつながりたい、どこまでも入っていきたい。
命がけずれてもいいから、今日いい歌が歌いたい。
この瞬間にいい歌が歌いたい。
音楽活動をしていて、ライブ会場のブッキングイベントで出会わせていただいた
アーティストの本番を聴いていて鳥肌が立つ時がある。
きっと音と深く繋がっているのだ
ライブはコミュニケーションだと教わったこともあるが
わたしは好きな音楽家が、深く音とつながり
そして完全な楽曲世界に入り込んでいる時間を見届けられることに喜びを感じる。
こんな瞬間に立ち会えて本当によかったと何度も思った。
こういう夜があるから生きていける。と思った。
ライブ出演本数を増やしてから、いま憧れる存在も増えた。
昨日寝る前に、あの人の音楽をこの先もずっと聴いていたいと思う人を思い浮かべたら、
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