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71. 8丁目のポルシェ

8丁目の森に迷い込んだの
あなた今日は帰れないわ
カウンター越しのお喋り
おじさま素敵なお帽子ね

午前零時をまわったて解けちゃくれない
魔法ばっかで嫌になるわ
明け方になって訪れる
静寂がやけに怖いの

教えてポルシェ
終わりは来るの
教えてポルシェ
赤いカーペットに血が滲むわ

あかんたれたバーテンダー
あたし最初っからやる気なんてないわ
あなたが救い出してくれる
日を待ち続けてた

3軒目の女の子になりました
あなた今日は帰さないわ
残り一杯分のキープボトルは
スレスレのあたしによく似ている

教えてポルシェ
迎えは来るの
誰の元へも帰らないわ
気儘に漂わせてくれ……
あかんたれたバーテンダー
まさか期待なんてこれっぽちもしないわ
ここで出会った事実を
二度と思い出さないで
教えて…

あかんたれたバーテンダー
これしきのことじゃ泣けないわ
消えない痕が残るほどの
愛で壊して頂戴よ
あかんたれたバーテンだ
これでお終いよ失くすものなんて無いわ
グレンフィディック12年 喫み干したら
後は おやすみ

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銀座8丁目の隠れ家
雑居ビルの1階に小さな窓のついた扉がある
カウンターひとつの小さなバー「アンコーラ」
当時の私は、何も知らない若者だった。

通っていた専門学校の側にあったカラオケ店で
実に潤いのあるシフトを提出していたあの頃。
いつものように
フライドポテトを150gずつに仕込みしている私に
店長が声をかけて来た。

「ちゃん鳥居ちょっとお手伝いしてくれない?」

「ほい。もちろんです〜」と答えたあと

「ほんとに!!」と想像以上の大きな声が返って来て、あ、失敗した。と思った。

話を聞くと、後に店長のお嫁さんになった、
当時の彼女さんが働いている銀座のバーが人手不足で
一度だけでもいいからお手伝いに行ってくれないかと言うことだった。

フライドポテトを小分けにするか
そのフライドポテトをフライヤーに入れるのが
主な仕事かと勘違いするほど、
ポテトすぎる(種類豊富激うま)カラオケ店でまさか
銀座のアルバイト審査が行われていただなんて。

でも私は別に嫌ではなかった。
寧ろそんな場所今後行けないだろうし見てみたいと言う好奇心さえ芽生えていた。

それから具体的に話は進んで、
後日彼女さんが出勤している日に
店長も同行でそのバーに行くことになった。

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