アメリカで国際関係論のPhDに進学すべき7つの理由

魔界アメリカからこんにちは。ワシントンdc在住の佐々木です。
さて、今日はアメリカで国際関係論のPhDに進学するのはいいよというお話を書こうと思います。
個人のキャリア、日本、世界という3つのレベルから見ていきます。
まずは個人の話から。

①お金がもらえる💰️

日本の博士では、学振に採用されると、年間240万円の研究奨励金を2年間もらえます。採択率は20%前後という噂です。他方、アメリカのPhDは、だいたい年間50,000ドル(800万円)もらえます。アメリカの方が物価は高いですが、質素ながらも人間らしい生活を送れます。

  • 保険も大学が加入してくれるケースが多く、日本よりちょっと高いかなぐらいの医療費

  • 学会への交通費や各種研究プログラムへの参加費も別途もらえる

  • 論文や書籍は基本的に大学の図書館経由でオンラインで無料で閲覧可能

  • 最近どの大学も賃上げ要求をしており、もらえるお金は上昇傾向

  • 学割がめちゃくちゃ充実していて、Amazon PrimeとかApple Musicとかめちゃ安いし、クラッシックコンサートも8割引き

このように総合すると、おそらく日本よりもQOLが高いでしょう。

②たぶん最先端の研究

めちゃ聞いたことがある先生がいる。例えば、うちの大学には、米国戦略家のハル・ブランズ教授、中国外交のジェシカ・チェン・ウェイス教授がいます。昔は、歴史が終わったり終らなかったりするフランシス・フクヤマ、リベラル・インターナショナル・オーダーのアイケンベリーが教鞭を取っていました。国際政治という学問自体が西側の学問なので、ここはもう割り切って西側で学びましょう。
このように、世界的に有名で研究成果もバリバリな教授陣に指導してもらうのはとても良いことでしょう。就職などでの推薦状のパワーが強いそうです。
あくまで個人的な感想ですが、ブレグジット以降、イギリスの国際政治界隈の研究力・お金・プレゼンスが如実に落ちており、イギリス行くよりはアメリカをおすすめします。

③北米の国際政治コミュニティへのアクセス

APSAやISAといった国際政治界隈の学会は北米で開かれるので、あまり負担なく参加できます。やはり日本から飛ぶと時差も大きいし、航空券高いし、ホテル代高い!でも①で書いたようにドルでもらってれば大丈夫です。
また偉い先生はしょっちゅうシンクタンクで講演しに来たりするので、ワシントンdc、ニューヨーク、ボストンなどの大都市圏は大学に所属する教授以外の研究者とも触れ合える機会が多い。
コミュニティもしっかりしてて、オンライン研究会などもある。

④研究発信のコスパがいい

アメリカにいるので、論文も英語で書きます。紀要(っていうんだっけ、いつも英語にするとき英語名はなんだろうと思うやつ)の何十倍もの人があなたの論文を読みます。論文のオープンアクセス費用も大学が負担するのでお金に気を揉む必要もないです。
日本よりもジャーナルの数めちゃくちゃ多い。アメリカだけじゃなくて、イギリスのジャーナルに出すという選択肢も増えるので、Rejectされても別のジャーナルに出せばいい。ジャーナルに断られても、オンライン雑誌も充実しているし、5000ワードだと平均で350ドルぐらいもらえるから、日本では載せられなかった良い作品でもだいたいどこかに出すことができる。

⑤就職がいいらしい

私はまだ就職活動をしていないからわからないが、日本でPhDを取ってもアメリカで就職できないが、アメリカのPhDを取ればおよそ世界中の大学のポストに応募することはできる。
アメリカのアカデミアは競争が熾烈化しているので、アメリカのいい大学で教えるには、HYPS(ハーバード、イェール、プリンストン、スタンフォード)のPhDが必須になってきているようだ。アメリカ以外のポストは中堅大学のPhDでも大丈夫らしい。
アカデミア就職が難しかったとしても、グーグルやフェイスブックで国際政治関係のPhD用ポストがあるし、シンクタンクへの就職も選択肢に入る。アメリカだとPhDを持っていると高い給料がもらえるのだ。

では、次は、日本にとって何がいいのか?

⑥自由で開かれた国際政治界隈

ある1つの言説が正しいという巨大な圧力は、国を間違った方向に進ませかねない。日本ではXX先生が言ったからとか、XX先生派閥がとか、小学校っぽい謎のムーブがあるのではないか。しかも、イーロン・マスクはTwitterを買収したし、中国は三戦(法律戦・世論戦・心理戦)とか言ってるし、日本の言論空間の脆弱性が目立つ。
アメリカの国際政治界隈は非常に混沌としており、多様な議論が生まれ、ある1つの言説が正しいと収斂しそうにもないところだ。
次の30年間、日本が集団思考・派閥文化に陥って方向を見誤らないためには、一定数外に出て、強力な外野を作ったほうがいいなと思うようになった。まぁわたしは日本のアカデミアに属していないから、あくまで外から見た印象です。

⑦アメリカのアジア研究の底上げ

アジア回帰がゆるやかに進む中で、日本人として米中対立を研究する価値は高まっているんじゃないかと思う。ある程度中立的に米中関係を見れるところがいい。
正直に言うと、アメリカの国際政治の研究者のTier 1は欧州研究、Tier 2は中東研究、Tier 3はアジア研究だと思う。競争力と資金力、語学の壁などがそのヒエラルキーを形成している。つまるところ、アジア研究の弱さはアメリカの弱さでもあり、その弱さがあまりイケてないインド太平洋政策につながりかねない。中国に行ったこともないし、中国語もしゃべれない研究者が普通にいるのだ。
日本で中国やインドなどアジア地域の研究を目指す人が、アメリカのPhDに入ることで、アメリカのアジア研究の底上げができると思う。

こんな感じで、たぶんアメリカで国際政治のPhDを取るっていうのは、良い選択なんじゃないでしょうか。自分の次の世代がいっぱい魔界アメリカに来てくれたら、嬉しいなと思います。

次回以降は、じゃあ具体的にどうやって進学するんだい!という話を書いていこうと思います。

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