それゆけ、親衛隊

友人から日本ではスープストックが炎上しているらしいと聞き、ネットを見てみてあらあら・・・。色々誇張されていたりほんの一部のツイートが拡散されて大袈裟に報道されているだけなのだと思うけれど、まあでもおそらくこれって結構氷山の一角だよね。ネット上で匿名で文句を言うのはなんだかなあと思うけれど、堂々と言うことが許されないpolitically incorrectな感情が人の心には渦巻いているのもまた事実。

自らを振り返ってみても、独身の頃って家族連れの多いガヤガヤした空間は避けていたし、そのためにプラスのお金を払って高めのお店に行っていた気がする。鮮明に残っている記憶として、麻布十番にあるいわゆる「高級」中華店のランチに行ったときのこと、女性5-6人組くらいがそれぞれに1-2人子供を連れてランチをしていて、子供の悲鳴、奇声、爆笑、泣き声を一言も制することなく会話に夢中、一部の子供はテーブルのまわりを走り回っていてさながら児童館化していたことがあって、その隣で食事をしていた私はさすがにイラッとして店員さんに、一言言っていただけないだろうか、とお願いしたことがあった。それに対し店員さんは、「すみません、お子様連れのお客様なので我々からは言えません。申し訳ありません。」の一点張り。ああ、これは社会のひずみだなあと思ったことを覚えている。
あのときの自分の行動は、今の私から見て「心の狭い独身女」のすることだっただろうか。そうは思わない。でも今だったら、たぶん店員さんにではなく直接声をかけたかもしれない。大変ですよねーって共感しながら、走っちゃってて危ないので少し見てあげてくださ〜いって。もしくは子供たちにもうちょっと静かにしようね〜とか言っちゃうかも。(笑)でもそれは「私も同じ立場だ」という前提があるから出来ることでもある。当時は「あなたにはわからない」と言われるのが怖くて間接的に伝えようとするのが精一杯だった。

権利を主張する前に、自分とは違う立場の人へのほんの少しの想像力を持つこと、高いお金払ってるからといって完璧に快適な空間をあたりまえに享受できるわけではないけれど(それならさらに払って個室とるしかない!)、子供がいたら何をやってもいいわけでもないから、社会に生きるならそういうコンフリクトとどう共存していくか、考え続けないといけないと思う。だから今回の話を「心の狭い独身女はいらない」という店側のメッセージだと言う某有名人の言葉は、もし仮にそれが正しかったとしても、この無駄な対立構造を悪化させるだけだからやめてーと私は思う...。

子供はぐずる。泣いたり突如奇声をあげたり、かと思ったらいきなり爆笑し始めたり、机の上のものを床に落とすのが楽しくてしょうがない謎の生き物だ。自分だって昔そんな謎の生き物だったんだから、可愛いとか愛おしいとか思わなくて全然いいから「へんなの~(笑)」くらいの心の余裕をもって見てやってもいいんじゃないでしょうかね。一方で親たちは、子供のうるささは自分たちが一番わかってるんだから、それを周りの人にも一緒に体験させてしまうなら、「うるさくしてすみません~」くらいのコミュニケーション自分からとればいいじゃない、と思う。なんて言うとなぜ謝らなければならない!と怒る人が出てきそうだけど、これは謝罪の「すみません」じゃなく、「あなたの気持ち、想像できてるよ!わかってるよ!」というメッセージの「すみません」だと思っている。「うるさいなあ・・」と一瞬頭をよぎったであろう人に、すかさず「うるさいですよね、すみません!」と満面の笑みで言うと、ほぼ100パーセント笑顔で「いえいえ!子供は仕方ないですよ!かわいいねえ~」とか言ってあやしてくれ始める。

ニューヨークにいると、レストランで隣になった人、街中で目があった人、そういう人たちと微笑みあったり声を掛け合うことがごく普通なので、この子供問題についても居心地が悪いと感じたことはほぼない。子供を連れてどこかに行ったら、まず周りの人全員にニコニコ声かけて娘に笑顔で手でもふらせるのだ。それで私の四方すべてに娘の親衛隊みたいなものが出来上がる。(笑)まわりをできる限り味方につける、これが子持ちの一番の快適なサバイブ方法だと思うのだ。敵作っていいことなんかひとつもありゃしない。

たまに、そのさらに上を行くツワモノがこっちにはいたりする。先日娘と犬を連れて夫と日本からNYに飛行機で帰っていたときのこと、隣の席に子供2人連れのお母さんが座っていて、なんとも愛らしい5-6歳くらいの姉弟が即座に夫の席にきて、ワンちゃん可愛いね、赤ちゃんも可愛いねと声をかけてくれた。すっかり彼らの親衛隊となってしまった夫はニコニコしながら犬を触らせてあげて、その姉弟の話をウンウンと聞いている間に、お母さんは深い眠りに・・・。結局自分の娘と犬と隣のお母さんの娘と息子の子守りをしながらフライトを過ごすことになってしまった夫を隣に見ながら、私は反対側の席でよかった~と胸をなでおろしたのであった。(笑)

これは極端な例だし、さすがにちょっと頼むよお母さん、と思うけど、味方につけてから頼る、というわかりやすい例だったなあと思う。途中でこっちが相手するのに疲れたら、お母さんを起こして、我々寝るから娘と息子返すね、と言えばいい。もうこの時点でコミュニケーションがとりやすい関係が出来上がってるから。

今日はコミュニケーションとりたくない、だれにも話しかけられたくない、静かな環境でほっておいてほしい、そう思うなら個室取るかオーセンティックバー行くか自室でデリバリーが一番。もしくはBoseのQuiet Comfortがあれば大概の騒音はキャンセルされる。夫のいびきだって子供の夜泣きだってあんまり聞こえないくらいなんだから、かなり使えるヨ!

次に日本に帰ったら、スープストックに寄ってみようと思う。きっとネットで言われているような話はほんの一部で、多くのママたちが周りに配慮しながら一生懸命子育てをして、それを優しいまなざしで見守るお客さんたちがたくさんいるのだろうと思う。お店側も、きっとそういう空間を目指して方針転換したんだろうと思うし、そのための施策をきっと色々考えているのではないだろうか! Boseつけて素敵なオフィスカジュアルで颯爽とランチを食べて、子供たちに優しく微笑みかけて去る、そんなカッコよくて幸せな単身女性が店内にたくさん溢れているといいなあ。

とりあえずスープストックの離乳食はヘルシーでおいしそうでめちゃくちゃ魅力的!ニューヨークにも出店してくれないかなあ〜

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