見出し画像

トイトレから学ぶ

我が家の長女が初トイレを成功させた。半年後の3-K(3歳になるカレンダーイヤーの9月から始まるNY州の幼児教育プログラム)開始までにトイトレを済ませておけとのお達しにより重い腰をあげた我々がさあ本気でがんばるか、と動き出して1週間もしないうちにさらりとやって見せた娘。子育てとは教えることよりも学ぶことの方が多く、いつも子供が勝手に成長していく姿に驚かされるのだが、今回もまたひとつ、大事なことを教えてもらったので書き留めておこうと思う。

月並みだが子育てにはそれはそれは色んな考え方があって、1歳とか2歳とかですら、子供にAdvancedな経験をさせたい親、成功体験を積ませたい親、躾をする親、自由にする親、丁寧な(細かい)親、大らかな(雑な)親、子供との距離感も多種多様で、まあ十人十色である。
私自身も出産前、一人目産後、二人目産後と日を追うごとにスタンスが変わっていっている。かつて子育ての崇高な理想を密かに抱いていた私は現在、たった2年半で理想の大半をギブアップしたけれど、思い描いていたよりもずっとずっと子育ては双方向的なものであり、日々変わりゆくものであることを学んでいる。

娘が2歳になったころから、実母からの「あら、まだオムツしてるの?」攻撃が始まった。(笑)母としては責めているつもりは一切ないのだが、「あなたは2歳になる前に取れていたわよ」なんてたまにポロっと言ってくるものだから、え、そういうものなの?と思って調べて「トイトレなんてさせるだけ無駄。一生オムツしてるわけじゃないんだから勝手にとれるのを待てばいい」説を目にしてホッとしてみたり、はたまた我が家のナニーには「ほっといたら4-5歳までオムツしてる子いるわよ!どこかでやらなきゃダメよ!」とお尻叩かれてみたり。ほんじゃあ、とまだパンパンオムツでニコニコしている娘にしぶしぶ「お姉ちゃんパンツ」を試してみたのだが突如オムツを奪われた娘はお漏らししてすごく嫌そう。トイレに連れていかれるのも気乗りしていないし、毎度お漏らしされるこちらもこちらでたまんないなーめんどくさーこれ誰得なんだっけーとなって結局しばらくちゃんとトイトレに向き合ってこなかったのでした。

ところが少しした頃から娘がおしっこやうんちをする度にオムツ変えてくれと自分から報告に来るように。「汚れたオムツは不快だ」という感覚が出てきたなら良いサイン、オムツを変えるときに一緒にトイレに行って一回便座に座ってからお尻をふく、をやり始めた。そんなこんなしているうちに、オムツを履きながらもトイレに行きたいと言い出すようになった。一緒にトイレに行き、便座に座らせる。でも座るだけ座って、"All done!"といって出てくる。そしてオムツの中でおしっこをする。
娘はおそらくもうトイレの用途も、オムツの用途も全て完璧にわかっているのだ。ママのトイレを社会科見学しながら、"Mama, pee pee?" とニヤニヤしながら聞いてくるし。それでも頑なに "No pee pee potty. I want a diaper!"と主張してくる。

と、ここへきて、あ、こいつはもうできるのに躊躇してるな?と思ったのである。そして、気づく、今が背中の押し時なのでは!
「最近忙しいんだよなー。毎日お漏らしにつきあってらんないなーオムツもうちょい履かせておこっかなー」という怠惰な心の声と戦いつつデイケアの先生に相談にいったところ、彼女はひとこと、「二週間よ!」と言った。
二週間で子供は習得する。貴女がすべきことは、二週間、ソファやカーペットをタオルで覆い、一貫して家に帰ったらまず最初にオムツを外す。そしてお漏らしに付き合いなさい。決して怒らない、あわてない。お漏らしをしたら、おしっこできたことをほめて、娘と一緒にお漏らしをふきなさい。そして次はおしっこしたくなったら先に教えてねと伝えること。そして一番大事なこと、これをパパとナニーに共有して、家族でconsistentなアプローチをとりなさい。Good luck!

タイムラインを示してくれたこと、明確なTo doを与えてくれたこと、日々仕事着にピンヒールで子供たちをバタバタとドロップしに行く私をずっと見てきて、私の愚痴や弱音にも付き合ってくれた先生の、「大丈夫、効率的にいけるわよ、思い切ってがんばなさい!」のメッセージに力がみなぎった私は、その日から徹底的にトイトレを始めた。

初日、二日目、三日目、案の定娘はしっかりお漏らし。初回、慌てるなと言われたのに慌てて娘をトイレに移動させようとしてギャン泣きさせてしまった私は大反省。お漏らしにはどっしり付き合う。一緒にふく。No pee pee pottyと訴える娘を、オムツの方が楽だよね~でもpee pee pottyできたらかっこいいよね~とはぐらかす。とにかく二週間がんばろう、それでだめならまた相談しよう。
そんなことを思っていた矢先、娘が"I wanna pee pee."とやってきた。お、じゃあトイレ行こっか?というと「ん!」と頷く娘。トイレに入ると娘は小さな声で"I can try."と言った。そして順番にズボンとお姉ちゃんパンツを脱ぐ。ここで漏らしちゃうかな、もしくは座ってもやっぱりおしっこできなくてall done!って言っちゃうかな、そう思ってみていたら、おもむろに便座に座った娘はちょろちょろ~~~とおしっこをしたのである(涙) 小躍りしそうになるのをこらえて穏やかに最後まで見守ったあと、終わってお尻をふいてあげて、思いっきり抱きしめた。よくできたね。
"I did it! I did it!!"そういって飛び跳ねる娘を見て、たかがおしっこ、されどおしっこ、歳をとるたびに涙腺が緩む一方の私は涙があふれそうになった。

誰もが通る道。でもめちゃくちゃ大きな一歩だ。トイレを前にした彼女の "I can try."を聞いて思った。ママに向かって言ったんじゃない。伏し目がちに自分に言い聞かせるように言ったあの言葉は、彼女が自分の意思で、ひとつのハードルを克服しようとしたってことだ。

子育てって、親がやらせたいことをやらせればいいわけじゃない、かといってほっとけばいいわけでもない。こっちだって未熟だし、何が正解かわからない。情報過多の社会に振り回されるし、比較したり、マウントとったりする人がいるのも事実だ。子供が何か問題を起こせば、親が責められる。だから自分を守りたくもなる。うちの子は礼儀正しいです、優秀です、そういって自分の手柄にしたくもなる。

でもそんな思惑を次々に打ちのめしていってくれるのが愛すべき我が子供たちだ。そんなママの想像の範囲におさまらない君たちの成長を見るのは、何よりも楽しい。この先次から次へと新たな成長局面を目の当たりにして、そのたびに涙腺が崩壊するのだろう。

彼らの「やりたい」を尊重すること、「でも不安」に寄り添うこと、そして足踏みするタイミングで、挑戦しやすい環境を作ってあげられたら、失敗したり疲れたら手ぶらでかーえろって思ってもらえる場所になれたらいいな。
さて、今日も第二回目、成功できるかな?♡

いいなと思ったら応援しよう!