【短編/刑事モノ】窓一重 ~前篇~
初投稿は刑事モノの短編シナリオを掲載します。
あらすじ
主人公・知沙(21)は、親友の友梨佳が何者かに殺害され動揺のさなか。しかし、悲しむ暇もなく見知らぬ『K.S.』と名乗る人物からの手紙を見つけてしまう。刑事である兄・浩介(27)は妹を救えるのか!?
女子大生 vs ストーカー vs 刑事視点で描く手に汗握る短編刑事アクション。
<人物表>
大野知沙(21) 大学生。スーパーでバイト
大野浩介(27) 県警刑事。知沙の兄
鮫島和夫(40) 殺人容疑者
柳沢慶一(29) 県警刑事。大野の同僚
堀田友梨佳(故人・21) 知沙の親友
※固有名詞は実在の人物・組織とは関係ございません。
①西原台第二団地・外観
②西原台第二団地・807号室・中
大野知沙(21)、ソファに座り、スマホを悲しそうに眺めている。
堀田友梨佳(21)と知沙が写った写真。
知沙「なんで友梨佳があんな目に……」
インターホンが鳴る。
知沙、玄関の扉を開けるが、誰もいない。
床に置かれた手紙。
知沙、手紙を拾い首を傾げる。
③県警・会議室
入口横には「女子大学生殺害事件対策本部」の札。
中では刑事数名が慌ただしく捜査している。
ホワイトボードには友梨佳の写真。
大野浩介(27)、必死に書類をめくっている。
柳沢慶一(29)、大野の元へ駆け寄ってくる。
柳沢「大野、これ観ろよ」
柳沢、パソコンで防犯カメラの映像を流す。深夜、スーパー西原から出てきて、自動ドアごしに店内をみつめる鮫島和夫(40)。店前をうろうろしたのちその場を離れる鮫島。
大野「『スーパー西原』って……」
防犯カメラ映像の中、店内から笑顔で出てくる知沙と友梨佳。大野、こわばった表情。
大野「こいつの狙いは……」
柳沢「妹さんが危ない」
慌てて立ち上がり電話をかける大野。
④西原台第二団地・807号室・中
スマホで電話を受ける知沙。
知沙「もしもし、お兄ちゃん?」
大野「知沙、今家か?」
知沙「そうだけど」
大野「いいか、今から俺が行くまで絶対に外に出るんじゃないぞ、お前の身が危ない」
知沙「えっどういうこと?」
大野「いいな、わかったな」
知沙「てかさっき、変な手紙が玄関に……」
電話の切れる音。ちゃぶ台の上、開封された手紙。
「知沙へ もう悲しまなくていいんだよ。今日が僕らの結婚記念日だからね。今から迎えに行くね KS」
知沙「KS……?誰?」
SNSの友達リストを確認する知沙。KSに該当する人物がいない。
再び手紙を眺める。「今から迎えに行くね」の文字が目に入る。
部屋の中を行ったり来たりする知沙。
知沙「友梨佳、私どうしたらいいの?」
頭を抱え歩き回る。
少しのち、息を一つ吐き、玄関から外へ出ていく知沙。
⑤西原台第二団地・南階段
鮫島、左手に花束、右手に銃を持ち、肩に一眼レフをかけ、8階を仰ぎ見る。
鮫島「今から行くからね」
不敵な笑みを浮かべゆっくりと階段を登り始める。
⑥西原台第二団地・エレベーター前
知沙、エレベーターの下りボタンを連打するが、1階へ向かっている表示。きびすを返し階段を下り始める知沙。
⑦街中・車道
赤信号でイライラしている大野。携帯が鳴りスピーカーで通話する。
柳沢「おい大野、今どこだ! 警部に報告してからと言っただろう!」
大野「そんなの待ってられるかよ!」
柳沢「単独行動は危険だと……」
大野、電話を切り、アクセルを踏む。
⑧同団地・南階段
鼻歌を歌いながらゆっくりと登る鮫島。
⑨同団地・北階段
慌ただしく駆け降りる知沙。
⑩同団地・地上
知沙、地上まで降り息を切らし立ち止まる。
知沙の背後、肩に何者かの手が伸びる。
気配に気づいた知沙、相手の腕をねじり素早く身をひるがえす。
大野「いててて、俺だよ俺」
知沙「兄ちゃん!」
手を放す知沙。
大野「まったく。なんでこんなところにいるんだ、家から出るなと言っただろ!?」
知沙「だって玄関にこれが」
手紙を大野に渡す。大野、手紙を一瞥
知沙「KSって……」
大野「鮫島和夫、40歳。お前と同じスーパーのアルバイト店員だ」
知沙「鮫島!? 確かになんだかいつも見られてるような気がしてたけど……えっまさか友梨佳も……!?」
大野、黙ってエレベーターに乗り込む。後に続いて乗る知沙。
大野「お前は来るな」
知沙「私も行く」
大野「いいから走って逃げろ」
知沙「兄ちゃんだけじゃ心もとない」
大野「……降りろ」
黙って動かない知沙。
大野、無理やり知沙を突き飛ばしてエレベーターから降ろすと、すぐに閉まるボタンを押す。
知沙、振り返り大野を睨みつける。
大野「兄ちゃん、負けたことないだろ? 大丈夫だ」
ファイティングポーズをする大野、ドアが閉まり上階へエレベーターが動く。
窓一重~後篇~へ続く