マドリードで博物館・美術館巡りをしてみた
(2025年1月訪問)
今冬の3週間のボルドー滞在中、どこかに訪問しようと考えていて、今回は3泊4日でスペイン・マドリードを訪ねた。その理由は単純でボルドーからの直行便(できればワンワールド系)があったからである。
いや、それだけではなく、通信大学の今冬のスクーリングで西洋史概論を受講する予定で、講義はスペイン・ポルトガル史だ。西洋史なんて最後に勉強したのはいつだろうか、しかもすっかり忘れている。
卒業要件に西洋史の単位も必要で、受講するならば、16世紀の大航海時代から日本と交流があり、しかも我が故郷が大きく関係しているスペイン・ポルトガル史かなあとシラバスを見て決めたので、事前に現地で予習することにした。
マドリードの美術館、博物館を調べてみるとその数の多さたるや、とてもじゃないけど全てを見て回ることはできない。なので、興味を持ったところから順番に訪問することにした。
1. Museo Arqueológico Nacional(国立考古学博物館)
まず、入場料3ユーロでこんな膨大な展示を見ることができるのは素晴らしい。
考古学は土器や石器といった物質資料を研究素材とし、人類の出現以降が研究の対象となるため、展示は人類発祥の地、アフリカ大陸で発見された人骨から始まる。
旧石器時代、青銅器、金銀製品の時代と時代の流れに沿って展示されている。時期は違えど、日本と辿ってきた流れとあまり変わっておらず、ただこれがまだ紀元前で製作技術の高さに驚くしかない。日本史でいうところの古墳時代のような、墳墓と副葬品の展示では墳墓の違い、副葬品の豊かさに唸り、そしてそれでもまだ紀元前だということ、そしてコインが流通し始めていたことにも更に驚く。展示品の前でうんうん唸ったりして怪しげな動きをする日本人…..。
古代ローマ帝国の支配下時代に入ると、文明化が進んでいることがわかる。銅板に刻まれた法律や関連書類的なもの(合意書?)がこれでもかと展示してあり、紀元前から法整備が進んでいたことが見て取れる。
モザイク画やガラス製品の展示もあり、古代ローマ帝国恐るべしである。
中世に入ると更に文明が高度化しているのだが、残念ながらこの時代からの展示物は少なく、その後は古代エジプト・古代ギリシャの展示となっていた。ピラミッドに収める棺やミイラ、ギリシャ彫刻など見応え十分だった。
2.Museo Naval Madrid(マドリード海軍博物館)
入場料は寄付金という名目で3ユーロ。
13世紀から15世紀のスペインの夜明けと言われた時代、15世紀から16世紀の大航海時代、日の沈まない国と言われた16、17世紀、18世紀のスペイン無敵艦隊の時代と、21世紀までのスペイン海軍の歴史に関する展示だ。
スペインの航海技術が発達したからこそ、戦国時代に日本との交流が始まったと考えると、ほんと恐ろしい。一歩間違えると、日本も植民地化されていたかもしれないし…。案内板の「黄金時代」という文字を見て、「あんたらの黄金時代は、植民地化された他国にとっては暗黒時代だよ。」と心の中でツッコミを入れておいた。
スペイン語が分かれば、軍服を着た係の人からつきっきりで説明を受けることができたのだが、残念だ。
3.Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía(ソフィア王妃芸術センター)
入場料12ユーロ。
19世紀末から現在(近代〜現代)に至るまでのスペインおよび海外の重要な芸術作品を所蔵しており、1992年の開館から2年後にパブロ・ピカソの「ゲルニカ」がコレクションに加わったとのこと。館内の撮影はOK(フラッシュ不可)
世界的に有名なパブロ・ピカソ、サルバドール・ダリなどの作品をこれでもか!と多く展示していて、見応え十分である。
展示を見ていると、とにかく暗い色調の作品が多い。19世紀末からの作品ということで、この頃のスペインの時代背景を見てみると、スペイン内戦、フランコの独裁体制とスペインの暗黒時代ではないか、、なるほど。
そして、ピカソの有名な作品「ゲルニカ」
1937年、スペイン内戦時にバスク地方のゲルニカという村が無差別爆撃を受け、多数の犠牲者を出したことに対するピカソの激しい抗議の作品だ。その前に訴えかけてくるような暗い色調の作品ばかりを見た後だけに、更に迫り来る迫力があった。(語彙力乏しくてすみません)
4.Museo Nacional del Prado(プラド美術館)
入場料12ユーロ。館内撮影禁止。
歴代のスペイン王家のコレクションを中心に幅広いヨーロッパ絵画を展示する世界有数の美術館というだけあり、圧倒的な数のコレクションだ。とにかく絵画や美術品を浴びるように見た。見て、見て、見まくった。
絵画のシャワーを浴びて気がついたのが、風景画、静物画、生活や出来事の様子を描いたもの、風刺画のようなその時代の様子をつぶさに見ることができる絵が自分は好きみたいだ。なので、肖像画はまあまあ。全身が描かれていれば、ファッション史としての側面でいい勉強になるかなあという感じだ。
そして、苦手なのは宗教画だ。描かれる世界観がよく分からないし、大体があちこちの教会で見る絵画と変わりない。自分が宗教史、宗教美術が分かってないからというのもある。
そんな中、自分がとりわけ目を奪われたのが、
ダフィット・テニールス
農民の野外での祭り、酒屋や台所の風景など大衆的なものを題材とした作品群。絵画の中の人物の表情や動き、背景、そして室内であれば内装や小物など見ていて面白かった。
ピーテル・スネイエルス
戦場の風景画、特に城砦が描かれているものに釘付けだった。これって城郭研究の一級資料じゃない?って興奮しながら見ていた。
と、2日間で4カ所が精一杯だった。
とにかく情報量が多すぎて、1カ所見終わる度に、どこかで腰を落ち着けて頭の中を整理する必要があった。館内を歩き回って疲れたというよりも、脳を使いすぎて疲れたという感じだ。
今回は西洋史(スペイン史)と西洋美術史の予習的な感じで、何も知識がない状態で美術館・博物館巡りをしたが、今度はある程度の知識がついた時に改めて訪問したら、どう感じるのか、これを試してみたい。
ということで、備忘録的に記事を書いてみた。