1.南極(The Last Desert)2022 / Day1: Paradise Bay
レースは朝4時にスタートすると前日のブリーフィングで伝えられた。
が、上陸中止。
上陸地周辺に大量の氷が漂流していて、ゴムボートで近づくことができず、安全に上陸することができないと判断されたのである。
いよいよレースが始まると、早起きし、緊張しながらも準備万端でゴムボートに乗ろうと集まってきたところでこのアナウンスである。
別の上陸ポイントへ移動するということで一旦解散となった。但し、いつ状況が変わるか分からないので、アナウンスには注視しておくべしと。
* * *
そして、午後、上陸地をParadise Bayに変えていよいよレースが始まる。ゴムボートで選手が続々と上陸する。最後のゴムボートが到着してから15分後にレース開始となる。
と、運悪く最後のゴムボートに乗って上陸してしまった。上陸してから15分後のスタートってことで、時間があまりなく、ドロップバッグを置いたり、シューズを履き替えたりしていたら、もう時間がないから焦る、焦る。
レースは14時開始、20時終了予定で、1kmの周回コースを6時間走り続けることになる。コースは緩やかな上りとジグザグの下り。
コースは約20cmの積雪で、コース設定時にスタッフに踏み固められ、また先頭集団にも踏み固められているはずだと思っていたが、ズボズボと足がはまってしまい、とにかく走りづらい、というか歩きづらい。
上りで息が上がると、グラシエゴーグルが曇り、コースが見えづらくなり、足がズボズボはまるわ、倒れるわ、とにかく雪上を走ることが初めてなので戸惑いを隠せなかった。
グラシエゴーグル、使えねえな。
と、周回を戻ってきたところで、今度はスキーゴーグルに変えてみた。おっ!視界が広がった!と喜んだのも束の間、やはり息が上がるとスキーゴーグルが曇ってコースが見えづらくなるのだ。
ゴーグルいらね!と外して走ろうとすると、スタッフに注意される。目が雪の反射で焼けてしまうからである。これはブリーフィングの際に、日焼けと同じくらいに散々注意されたことでもある。
とにかく視界不良の状態で走るもんだから、フラついたり、雪に足がズボズボはまったりと、距離が稼げないこと、そして他の選手から周回遅れでどんどん抜かされることに焦り始めます。
そして、気のせいか、なんか地面が揺れている気がするんですけど?!?!
ジグザグの下りで僅かな地面の揺れを感じて、他の選手やスタッフに、
「なんか地面揺れてません?」
って聞いてみるも、そうかなぁ?って反応である。
しかも、だんだん雪が激しく降ってくるし、風も強く吹き付けてくる。うわぁ、南極きっついわ。これがあと6日間も続くってこと?周回コースをぐるぐる回りながら、だんだん気弱になってくる。
更に、踏み固められたコースが今度はアイスバーンっぽい状態になり、特に下りなんかは滑りまくりで怖いんだけど・・・。これは危ないということで、軽アイゼンを装着して走るように指示が出る。
うぉっ、これむっちゃ使えるじゃん!
Kathoola製のマイクロスパイク、大会指定の軽アイゼンで国内で見つけることは難しく、アメリカからわざわざ取り寄せた代物である。以降、この軽アイゼンが雪上ランで大活躍するのである。
と、レース始まってから4時間後、周回を戻ってきたところで、
「今日はここまで、ドロップバッグからダウンジャケット出して、温まって。」
と言われる。
時計は18時を指している。
あれ?20時までではなかったの?
なんか知らんがラッキー!と速攻でコースを離脱し、そそくさとゴムボートに乗る支度を始める。退却の準備だけは速い。
その日の晩のブリーフィングで、天候不良のため、船長から船へ帰還するように指示が出たため、18時でレース終了となったという説明がなされた。
この日のガーミンの記録がこちら。
1km23分のペースという記録が、雪上で苦戦した様子を物語っている。また、地面が揺れた気がしたというのは間違いではなかった。ガーミンの記録では海の上を走っていることになっている。要は氷の上を走っていたからなんだな!
船に戻ってシャワーを浴びようとした時、シェルの下に来ていた衣服がぐっちょり濡れていた。これは着込みすぎだったんだなと、翌日はレイヤリングを変えようと思った。
はぁぁぁ、ほんと先が思いやられるぜ。