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【詩】業、あるいはカルマ
心はいつも、消えたがっている。
思考はいつも、終わりたがっている。
消えればすぐに、楽になる。
終わればもう、苦しくない。
こちらの辛いことは、
あちらに行けば消えてなくなる。
仕事も、親も、職場も、未来も。
夢も、期待も、願いも、救いも。
きれいさっぱりなくなって、永遠の静寂の中、
ただ静かに揺蕩うだろう。
揺蕩ううちに身体も心もなにもかも、
溶けて消えてなくなって、
ボクはもう、どこにもいない。
そんな終わりが、欲しいんだ。
そんな安らぎが、欲しいのに。
いま、ボクはここにいる。
いま、ボクは足掻いている。
心が張り裂けそうになりながら。
自分をズタズタに刻みながら。
それでもまだ、生きている。
消えてなるものか、終わってなるものか。
例え身体が壊れても、例え心が砕けても。
人を害する度胸はないのに、
己を害する度胸で世界をひっくり返す。
そう、意気込むボクがいる。
死にたいのに死にたくない。
消えたいのに消えられない。
これは妄執だろうか、執着だろうか。
希望だろうか、期待だろうか。
この祈りが、この渇望が。
ボクを生かし、苦しめる。
だからきっと、この思いこそ。
ボクがボクたる、業、なのだろう。