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葬儀師・第六話「京都遠征編(その三)」

葬儀師・第六話『京都遠征編(その三)』・脚本

                  岡本蓮




◯  葬儀師庁京都市保安局・道場

   葬儀師庁は全国に門の監視や異邦人の駆逐を目的とした保安局を設置しており、ここ京都市保安局では今年、全国から集められた若い葬儀師たちが訓練に励んでいる。若い葬儀師たち、防具を着けて剣道に励む。

   深雪、道場の端であぐらをかいて見学する。しばし見学。久保田ともえ(二十四歳・女性)、深雪の隣に正座する。深雪、笑顔を久保田に向ける。

久保田「久しぶり」

深雪「おひさぁー」

久保田「変わらないね。深雪は」

深雪「ともえこそ、可愛いのにツンツンしてるとこ、全然変わってない」

   久保田、やっと微笑む。

久保田「そっちの班長は元気?」

   深雪、剣道のタイマンを張る籾木を見やる。

深雪「元気もなにも、ひどい死穢をたった三日で治しやがって、今はほら、あんなに元気」

   久保田、籾木を見る。籾木、相手に面を打つ。

籾木「めぇぇん‼︎」

   面を打たれた相手、籾木の剣幕に尻餅をつく。久保田、微笑む。

久保田「あの気力、どこから湧いてくるんだろう」

   久保田、籾木を見る眼差しが優しい。深雪、久保田の眼差しを見て呆然とする(久保田が籾木に気があることを察した)。

   間。

   頭の防具を脱ぐ籾木。

深雪「おつかれぇ」

籾木「おつかれぇってお前、いつまでサボる気だ」

深雪「サボってるわけじゃない。見て盗んでるのさ。人の動きを」

   籾木、深雪の隣に座る。(左から籾木、深雪、久保田の順)籾木、深雪のあぐらを見て、

籾木「正座しろ。特に女は」

深雪「(演技じみた)うわぁ。女性を差別するなんて……籾木くん。ひどい」

   籾木、皮肉に笑う。久保田、笑う。

久保田「ほんと、籾木班って仲いいよね。うちの班なんて、ほとんど私語、交わさないし」

籾木「軽口を叩く奴が多すぎるんだ」

西「誰のことかなぁ、籾木さん」

   西、鈴木、防具を手に提げて籾木たちに歩み寄る。久保田、笑顔。

久保田「蓮。それに鈴木も」

西「久しぶり。ともえ」

   西、鈴木、久保田の隣にあぐらをかく(左から、籾木、深雪、久保田、鈴木、西の順)。深雪、籾木に視線を送る。籾木、目を逸らす。

西「あーあ。東京はただでさえ忙しいのに、わざわざ訓練なんて開いて……予算の無駄だよ。財務省さーん。お仕事ですよぉ」

鈴木「教官に聞こえたらどうすんだ」

   鈴木、指導教官の川澄陽翔(五十歳・男性)と大根田気禅を見る。大根田の福耳を凝視する一同。

鈴木「あれは絶対地獄耳だ。俺たちの会話は筒抜け。懲罰まったなしだ」

西「あのおいぼれがぁ?」

鈴木「バカっ。あのジジイ、特類葬儀師の大根田気禅だぜ」

   一同、大根田を見る。久保田班の櫛田(二十三歳・男性)、中嶋(二十五歳・男性)、櫻井(十九歳・男性)、一同に歩み寄る。

櫛田「修練をサボって噂話か。鈴木」

   一同、櫛田を見る(籾木は無表情、久保田は微笑む、深雪は笑顔、西は鋭い目、鈴木は不敵な笑顔)。

深雪「櫛田ぁ。中嶋に、櫻井も」

櫛田「久しぶり。第二世代の同志よ」

西「お前、またデカくなったな」

櫛田「食べざかりなんだ」

   櫛田、西の右隣に座る。中嶋と櫻井も櫛田の隣に座る。

櫛田「なんでも近々ここ京都市内に大規模な門が開くっていう話だ」

   深雪、目を開く。

深雪「まさか……門が開く場所と日時なんて、予測できるわけが」

櫛田「(大笑い)」

   籾木班、櫛田を奇妙な面持ちで見る。

櫛田「お前ら知らないのか?」

鈴木「あっ?」

櫛田「政府はとっくに門の発生場所と大まかな日時を予測できてるんだぞ」

深雪「おかしい! だってそんな有益な情報、もうとっくに国民に知らされててもいいのに!」

   櫛田、大胆不敵に笑う。

櫛田「だからそれをバラしたら大パニックになるに決まってるだろう。……あれを見ろ」

   櫛田、川澄と大根田を見る。一同も二人の教官を見る。

櫛田「特類葬儀師が二人も東西合同訓練を口実に京都入りしてるんだ。戦争が始まらないわけないじゃないか」

   考え込む一同。

籾木「櫛田の意見に同意だ」

   一同、籾木を見る。笑顔の櫛田。

籾木「人口が集中している地域により大規模な門が開くことは葬儀師の間では暗黙の了解。……問題なのは、そんな重要な情報がなぜ暗黙のうちに了解されなければならないのか……そしてなぜ国民にその情報を開示しないのか……」

櫛田「そういうこと」

深雪「それは櫛田の言う通りパニックを抑えるため……」

籾木「解せない」

   籾木を見る一同。

籾木「門の周辺は死穢で汚染されるにも関わらず住民を事前に避難させるような動きは見られない。避難はすべて門が開いた後に行われる。櫛田の噂話通り、本当に政府が門の発生場所を予見できるのなら、多少パニックになったとしても国民に何らかの警告を発するのが自然だ。……でもそんな動きはない。それが理解できない」

深雪「それは……」

川澄「それは国家機密だからだ」

   一同、振り返り、背後に仁王立ちする川澄を見て唖然とする。

深雪「川澄……教官」

川澄「なんでもいいから情報を公開すればいいというものでもない。それに、政府は門の位置を予測できない。だから対応は全て後手に回らざるを得ない」

久保田「しかし、ではなぜ特類葬儀師の川澄教官と大根田教官がわざわざ栃木県から出向してきたのですか? 特類葬儀師ならすでに関西には柳特類葬儀師がいらっしゃるのに」

   川澄、口を引き結ぶ。

川澄「余計な詮索はするな。長い物に巻かれろ。この件は不問にする」

   川澄、立ち去ろうと半身になる。

籾木「しかし! 川澄教官!」

川澄「不問にすると言っているのだ!」

   静まり返る道場。

川澄「葬儀師は門や異邦人に関して、いかなる詮索もしてはならない! そう規則に書いてあるだろう! 我々は公僕! ただ公に支えていればいいのだ!」

   立ち去る川澄。

深雪「でも……」

   深雪、言いかけるが、籾木に腕を掴まれて言うのを止める。

籾木「もういい。教官のご配慮をふいにする訳にはいかない」

深雪「配慮? 国民のためになる事をこれ以上詮索するなって言われたんだよ? それのなにが……」

籾木「いいや。川澄教官の言う通り、俺たち葬儀師は門や異邦人については何も詮索してはいけないという決まりがある。それを破れば無戸籍の葬儀師は市民権を奪われ、戸籍のある葬儀師でも公職からの追放はまぬがれない」

深雪「そんな……理不尽だよ」

久保田「理不尽だと思うのなら、私たちの力でその謎を解明するべきだよ」

深雪「ともえ……」

   中嶋、手を叩く。

中嶋「はい! 解散解散!」

   一同、中嶋を見る。

中嶋「俺たちには関係のないことさ。さあ! 修練に励もう!」

   中嶋に軽蔑の眼差しを向ける深雪。籾木、その深雪をながめる。

   間。

   三々五々、各々の持ち場に戻る一同。籾木、久保田と深雪を呼び止める。

籾木「久保田! 柊!」

   立ち止まる深雪と久保田、半身になって籾木を見る。

籾木「詮索するなよ。特に無戸籍の柊、お前は」

   頷く久保田。深雪、籾木をまっすぐに見る。

深雪「まさか。百歳まで生きる予定の人間がわざわざ面倒事に首を突っ込むわけないじゃん」

   深雪、微笑む。籾木も微笑む。

籾木「そうだよな。バカな事聞いた。すまない……」

   籾木、立ち去る。籾木の背中を見つめる久保田と深雪。


◯  葬儀師庁京都市保安局・宿舎

   十五畳ほどの大部屋に二段ベッドが六組据えられ、深雪、二段ベッドの下の段で眠る。暗い室内。見回りの教官、大部屋に忍び込み、若い葬儀師たちが眠っているのを確認して回る。目を閉じる深雪。深雪の前に立ち止まる教官。軋む床。数秒して教官、立ち去る。ドアの閉まる音。深雪、目を開けてベッドから上がる。


◯  葬儀師庁京都市保安局・敷地内

   薄暗い京都市保安局の敷地内を歩く深雪。深雪、敷地を抜けて小川に出る。月光が深雪を照らす。深雪、自分に手を挙げる久保田班と籾木班の姿が目に入る。

   間。

   小川の河川敷に車座になる籾木班と久保田班一同。鈴虫の声。俯いていた籾木、ふと顔を上げる。

籾木「懲罰覚悟でここに集まってくれてありがとう」

   一同の真剣な顔。

籾木「俺たちは葬儀師だ。立場の違いはあれど、国民のために命を捧げると誓った兵士たちだ。だからここで必要な情報を交換する義務がある。隠された情報を国民のために開示する責任がある」

櫛田「前置きはそのくらいで、本題に移ろう。籾木遥希」

籾木「ああ。……今日の道場での出来事を憶えているな?」

   籾木、一同を見渡す。一同、うなずく。籾木、それを見て頷く。

籾木「俺たち葬儀師は門や異邦人について調べることはおろか、話し合ってもいけない。さらに知的妖怪や能力者と会話をすることも禁じられている。これを破ると厳しい罰を受けることになる」

   深雪、唾を飲んで喉仏が上下する。

籾木「二ヶ月くらい前、俺たち籾木班はある能力者を葬送する任務に当たった。その能力者は丙級から乙級に繰り上げになったことを除けばごく普通の異邦人だった。しかし、あの異邦人……彼女は……」

   櫛田、籾木を不信な目で見る。(籾木が蔑むべき対象である異邦人を彼女と呼んだから)

籾木「俺たちとコンタクトを取ろうとした」

   久保田班、一斉に驚きの表情を浮かべる。

久保田「私たちも昔、そういうことがあった」

   一同、久保田を見る。

久保田「二年前……あれはまだ寒さの残る春の日のこと……その日は冷たい雨が降り続いていて……私たちは……」

   (フラッシュ)

   年老いた能力者の男(仮に錫(すず)とする。能力者には鉱石や鉱物の名前を冠するのが通例)、血まみれで両膝を地面に突き、雨を浴びる。錫、虚ろな目で曇天を見上げる。久保田、櫛田、中嶋、櫻井、錫の前に歩み寄る。ぴくりともしない錫。櫛田、一歩前に出て、共鳴器官を構える。櫛田、錫の顔を見てから、共鳴器官を高く振り上げる。共鳴器官を振り下ろす櫛田。久保田、錫の口が動くのを見て叫ぶ。

久保田「待って!」

   櫛田、動きを止める。櫛田の共鳴器官の刃が錫の首筋に添えられる。

久保田「何か言ってる」

中嶋「班長! 命乞いの言葉にほだされたんかぁ⁉︎」

   久保田、中嶋を見て、首を横に振る。久保田、ふたたび錫を見やって、彼に歩み寄る。

櫻井「危険だよ! 何をする気だ! 班長!」

   久保田、錫の真横にひざまずく。久保田、錫の口元に耳を近づける。

錫「(神よ)……お守りください……どうか……慈悲があるのなら……私たちの家族を……」

   久保田、目を見開く。

久保田「どういう事? あなたにも家族がいるの?」

錫「ああ……可愛い娘が……賢い妻が……強き息子が……」

   久保田、錫を見る。錫、疲弊した目で久保田を見る。

錫「繰り返すのか……戦争の歴史を……」

   久保田、驚きに目を見開く。

久保田「それはどう言う意味?」

錫「どうもこうも、お前たちの罪のことを言っている……。お前たちは罪を犯した。人の土地に踏み入り、金品を、女を、子供を奪った罪だ……」

久保田「そんなことした覚えは……」

錫「(徐々に高まる)もう何も奪わせない。我々は戦うと誓ったのだ。故郷を守るために!」

   久保田、ひるむ。

錫「もう好き勝手やらせないぞ……この戦いをはじめたのは、お前たちではないかぁ!」

   錫、櫛田を睨む。櫛田、一瞬錫に気圧される。

M(櫛田)「なんだ、この剣幕は……」

錫「(はげしい怒り)お前たちを処刑台に送ってやる!」

   錫、右足を前に出す。

中嶋「班長!」

   錫、櫛田に向かって突進する。久保田、振り返る。櫛田、その瞬間に錫の首筋へ共鳴器官を振り下ろす。水たまりに飛び散る血。重い物(錫の頭)が地面に落ちる音。血まみれの櫛田。久保田の悲壮な顔。

   (フラッシュ終わり)

   沈鬱な表情の久保田班。

西「久保田の話を聞いてて思ったんだが」

   一同、西を見る。

西「異邦人と喋っちゃいけねぇって規則は、わたしたちが異邦人に感情移入しないようにするためじゃねぇのかなぁ。思い付きだけどよ」

   一同、考える。

櫛田「それは一理ある」

   一同、櫛田を見る。

櫛田「だが、であるならその規則を破った際に科される罰則はどうなる? いくらなんでも重すぎはしないか?」

西「それは……」

櫻井「その……」

   一同、櫻井を見る。櫻井、もじもじする。

櫻井「コンタクトを取ろうとした異邦人のことを教えてよ。必要な情報を交換する義務があるんでしょう?」

   櫛田、中嶋、頷く。籾木、うなずく。

籾木「簡単な任務だった。政府高官の車両を狙ったテロリズムだ。それを首謀した女の能力者を幹線道路に追い詰め、そこで送るはずだった。……しかし彼女は命の危機を察すると、突然俺たちに向けて喋り出したんだ」

   (フラッシュ)

   第二話冒頭の、女の能力者の女系の能面。

   (フラッシュ終わり)

   沈鬱な顔の籾木班。真剣な顔の久保田班。

籾木「故郷を奪われた者の気持ちがどうとか、なぜ我々が争い合っているのかだとか……脈絡のない話だった」

中嶋「それで、その異邦人はどうなったん?」

   籾木の顔。

   (フラッシュ)

   女の能力者に噛み付くレブンエカシ。驚く籾木班。

   (フラッシュ終わり)

籾木「……送られた」

中嶋「どいつに?」

   籾木、回想する。

   (フラッシュ)

   後ろを見る籾木、特類葬儀師の二ノ宮周五郎と目が合う。二ノ宮、涼しい顔。

   (フラッシュ終わり)

籾木「特類葬儀師の……二ノ宮周五郎、だ……」

久保田「なんで特類が出張ってきたの⁉︎  簡単な任務だったんでしょ?」

籾木「ああ……簡単なはずだった。それをいきなり横から掻っさらって」

   深雪、はっとする。

深雪「あの時も」

   籾木、深雪を見る。

深雪「ここで任務に当たった時も、知的妖怪がべらべらと喋り出したと思ったらいきなり特類が出てきて」

中嶋「また二ノ宮さんか?」

深雪「いいや違う。大阪の、柳特類葬儀師が……」

   一同、驚く。

櫛田「偶然にしては出来すぎている」

   一同、頷く。

籾木「みんなの話を考え合わせると……つまりこうだ。まず、異邦人との接触を禁ずる規則を破ると、敵前逃亡に違い処罰を受ける。そして異邦人が俺たち葬儀師と接触を図ろうとすると、なぜか都合よく特類葬儀師が出張ってきて彼らを送ってしまう。まるで口を封じるように……」

深雪「知られたくない情報があるってこと……? それも異邦人だけが知ってて私たちは知らない情報を……」

   深雪、はっとする。

   (フラッシュ)

(第四話の三本目の柱のシーン)並んで歩く深雪、横溝。二人、鳥居をくぐる。社を構える広場に出る二人。二人、歩きながら話す。

横溝「手を引け。柊」

   横溝の真剣な顔。

   (フラッシュ終わり)

M(深雪)「そんな……」

   (横溝は異邦人の脅威ではなく、政府の脅威から深雪を守ろうとした。それに深雪は気がついた)

久保田「口封じって……、まさにそう。今日の川澄教官も、なにか鬼気迫った感じが……」

   久保田、はっとする。

櫛田「どうした? 班長」

久保田「全部特類葬儀師が絡んでる」

   目を見開く一同。

久保田「特類葬儀師は他の葬儀師とは比べ物にならないほど位が高い。だから私たちが知らない情報を知っていても不思議じゃない……」

鈴木「おいおいそれってよぉ……!」

   一同、鈴木を見る。

鈴木「まるで特類の野郎どもが俺たちを監視してるみてぇじゃねぇかよぉ!」

   唖然とする一同。

櫻井「上は何を隠したいんだろう。僕たちは被害者だ。異邦人たちの。じゃあ、何も後ろめたいことなんてないじゃないか……」

   考え込む一同。

深雪「後ろめたいこと、ある!」

   一斉に深雪を見る一同。深雪、皆を見渡す。

深雪「ともえの話とうちらの話に共通することが一つだけある。……能力者が口を揃えて訴えた、故郷を奪われたとか、人や物を奪われたとか……たぶん、日本政府は私たちの知らないところで異邦人たちの大切な物を奪ったんじゃないかなぁ」

   籾木、顎に手を当てて考える。

籾木「確かに……柊の話にしては筋が通っている」

   深雪、籾木にジメジメとした視線を送る。籾木、深雪の視線に気づいてはっとする。

籾木「いいや。なんでもない……。柊の考察が正しければ、特類のお歴々の行動も理解できる。……彼らは異邦人の駆逐はもちろん、俺たち一介の葬儀師の監督も担っているんじゃないだろうか……」

鈴木「おい。それ俺の考えだぜ。籾木くんよぉ」

籾木「すまない。黙れ」

鈴木「あぁ⁉︎  ごらぁ!」

   籾木、鈴木を無視して考える。

籾木「柊」

深雪「なに?」

鈴木「おい! 無視すんな!」

籾木「ここで出会った知的妖怪のことを覚えているか?」

   (フラッシュ)

   佐伯春樹のことを喋る知的な泥田坊。

   (フラッシュ終わり)

   深雪、はっとする。

深雪「失脚した佐伯春樹がどうとか……なんだったっけ……」

籾木「俺はほとんど気絶していたからよくは覚えていないが……彼は確かにこう言った。公になれば今の対異邦人政策が大きな転換を迫られるほどの秘密を佐伯春樹が握っていたと……」

西「佐伯なんとかって、あの不祥事起こした?」

籾木「ああ。葬儀師庁の機密文書を違法に持ち出した罪で職を追われている……。最初は公文書を漏洩した愚か者と思っていたが、もしかしたら……」

   籾木の腕時計、鳴る。籾木、腕時計のアラームを止める。

櫛田「時間のようだな」

   頷き合う一同。櫛田、立ち上がる。

櫛田「第二世代の同志たちよ。俺たちは同じ痛みを経験した仲間だ。今夜のことは他言無用で頼む」

西「第二世代だけかよ? 戸籍を持ってる奴らは仲間外れか?」

   籾木と久保田を映す。

久保田「櫛田」

櫛田「……籾木遥希と班長も、同じ釜のメシを食った同志だ。裏切りはなしだぞ」

   櫛田、足早に宿舎に戻る。櫻井と中嶋、櫛田について行く。久保田、歩き出すが、半身になり籾木たちに向く。

久保田「今夜はありがとう。どう転んでも、籾木班のみんなは信用する。じゃあ。おやすみ」

深雪「おやすみー」

   深雪、久保田に手を振る。籾木、唇を引き結ぶ。西と鈴木、うなずく。久保田、微笑んで宿舎に戻る。

   静寂。

深雪「あーあ。面倒なことに首を突っ込んじゃった」

籾木「だから止めたんだ」

深雪「はいはい。ごめんなさい」

   沈黙。

籾木「俺たち……」

   籾木を見る深雪、西、鈴木。

籾木「あっ、いいや。なんでもない」

   籾木、含み笑い。

鈴木「気になるだろうガァ。籾木ぃ」

   鈴木、籾木の肩に腕をまわす。含み笑いの籾木、月を見上げる。一同、籾木に倣って月を見上げる。

M(籾木)「俺たち……まるで家族みたいだな……」

   (オープニング)

   (※オープニングがエンディング代わり)










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