「人間の精神は反復を嫌い、人間の肉体は反復を好む」
物事の予測に、本人の都合が100%叶うみたいな願望の成分が多すぎる人ってのは、当然、未来に裏切られるものだ。
だから、散々と、これ以上の真理なんて無いんじゃないか、って、私の師匠の名言をいくつか紹介してるんだが。
「人間の精神は反復を嫌い、人間の肉体は反復を好む」
それを私の言葉でもっと簡単に言うと
「人って飽きっぽいからね」
と。
音楽に向かってる自分を考えてみたらいいじゃないか。 反復フレーズを嫌うから、メロディやコードを動かそうとしてるんだろう。
飽きっぽいというか、繰り返してる事が退屈になってくるんだよ。
人間の精神は。
君のやってる音楽に飽きるから、他人の作る音楽に乗り換えてみたりするんだろう。
ブームは10年も続かないんだろう。皆が飽きて嫌気がさしたら、そこで人間は変化を求め、何かを変えようとする。
精神は飽きっぽいんだって話。
その精神が飽きないで続けていられるものが「ロングセラー」っていうか、10年も20年も飽きずに聞けるってのは、人間にとっては異常事態なのですよ。
その飽きっぽい人間を、飽きさせずに自分のカスタマーにし続けておけるからこそ、それがブランド化であり、それによってロングセラーのビジネスが成り立ってるって分かって無いんでしょ?
それと真逆の、普通よりも飽きっぽい人間に合わせて、その機嫌取ってたら、ビジネスになんかならない、というよりも、気まぐれな人たちのニーズをいちいち拾い集めて、それをビジネスに出来るほどの多角化は、よっぽどの資力のある大企業位にしかできそうにないだろう。
ところが、肉体ってのは、それとは真逆だ。
何かが一度、定着するのに時間がかかる。一度覚えた事は反復したがる。
その方が楽だから。
何も考えないで機械的、ロボット的に繰り返す作業、慣れ仕事を好む。
自分の体にある行動を繰り返させることで、自分にスキルを定着させる訳で、肉体は反復でしか対応できない。
君が必死になって練習している、そのピアノやギターのフレーズ。
それだって、反復練習の賜物だろ?
それが手癖になっちまうほど、反復練習を繰り返して、それだからこそ、上手くなったんでしょ。 なのに、折角、これまで苦労して、一度、肉体が覚えた仕事だからこそ離れがたいって思うから、例え、上手くいかないと分かっていても、今更、損切りもできない。見切りもつけらんない。
会社で何かの機械をオペレーションするのだろうと、何かの仕事手順を覚えてうまくやりこなすのだろうと、反復でしかこなせない事だったりしてね。
それを毎日何も考えずに繰り返す方が、思考を必要としないだけに肉体の方は楽なんだし。 だから「人間の精神は反復を嫌い、人間の肉体は反復を好む」って言ってるんだが。
だから「何十年も飽きずに続けていられる」って事自体が、その人にとってのベストセラーであり、ロングセラーだってだけなのにね。
その「飽きないの魔法」を否定してる人が、ビジネスを語ってるのには違和感が禁じ得ないんだけど。自分が時代に敏感だのふりをするだけの節操無しとか、単に自分が普通の人よりも遥かに飽きっぽい奴らが、次から次へと何を繰り出そうと、小動るぎもしない人達の存在の頼もしさたるや。
君のカスタマーがリピーターになるって事は、そういう事ですけど。
毎回、何も分かってない一見さんを相手に、そんな毎回毎回アピールしなきゃいけないみたいな不毛な事を考えてれば、そりゃ派手な見てくれの宣伝や広告は何度も何度も必要になるだろうけどさ。それって、本当にリピーターになってると言えるのかね?
そんな売り上げの何十パーセント近くを宣伝広告費として使いこんで、派手に売れてる、売り上げが上がっているみたいに見せかけなきゃいけない事を、毎度毎度、必要としなきゃいけない商売って、どんだけコスパ悪いのかって疑問に思った事は無いんでしょうか。自分のお客が、ひたすら宣伝でも繰り返さなきゃ、自分の商品なんか即座に買わなくなる程度の話なのか。
だったら、そんなもん、本当の意味の人のニーズなんか掘って無いんだと思うのは、ひねくれものの私の感性なのかw
元から必要とされてないとか、売る前からどうでもいいものと飽きられとんのとちゃうけ?
昔、この曲の事を紹介してたレビューがあって
「Metal Guru なんて、何のことを言ってるのかも全く分からないし、イントロのシャウトといいコーラスといい、聞いて、何て変な曲なんだと最初に思った。 けど、この曲の不思議さは、その最初の印象が変わらずにずっと続く!」
と書いてあったのを思い出す。
私も最初は、そんなに好きじゃなかったんだけど。
変な曲だなぁと思って・・・と思ってたんだが。
あ、あのレビューに書いてあった事はホンマだ。
何か思い出して、また聴こうとするんだよ。
しかも、この曲って、最初に聞いた「変な曲だなぁ」って印象がずっと変わらずに、それが何となく気になっちゃうのである。また聴くと「変な曲だなぁ」って、相変わらず思っちゃうのだけど。
気づいたら、その内、すっかり、この曲にハマってた。
不思議な引力というか、魔力がある。
そのうち、こんな曲も聞けるようになってしまったw
何だ、このイカレタ進行はw
流石レコード会社に勤めてたまさぼーちゃんは、そのことをキッチリ言語化してた。
「エヴァーグリーンの魔力」
最初に聞いた印象がいい意味で変わらず、中々飽きがこないのである。
複雑だの単調な演奏だとか上手いとか下手とか、一般的な音楽の評価とか、技能の評価みたいな話とかそういうこととは全く関係がない。歌詞がいいとか、自分の気持ちに寄り添ってくれるみたいな話とも実は無縁だ。
音楽自体に、何故か、繰り返したくなる呪文の魔力があるのだよね。
聞く側にとっては無論の事、下手すれば弾く側にとっても。
「それは、どこの田舎の年に一度の祭りですか」レベルの日本のライブの間隔空きすぎペースならいざ知らず。毎日毎日、来る日も来る日も、ひたすら同じ曲ばかりを求めに応じて演奏やってるような海外のミュージシャンなんかにとっては、その「繰り返しの魔法」ってえらく重要な気がしてるんです。だって、演奏してる本人だって、1日何度も同じ曲演奏してれば、そりゃ、幾らなんでも飽きるし、アレンジの一つも変えたくなるだろうよ!
まあ、これ、音楽の繰り返しの魔力を紹介する時に使ってる事例なんだけども。
どうせ、最初に聞いた時には、大体が「何、この変な曲」って思うんだよ。
でも、繰り返しの魔力が発動しだすと、精神の方が癖になってやめられなくなる、って事は、確かにあることなのだ。
けど、それは別に
”変な曲を演奏してるから”
とか
”変なフレーズ”
だから惹かれてる訳じゃない。そんな上っ面の記号とは関係がない。
Metal Guru は奇抜な所はあっても、これ、割とそれ以外はスタンダードな曲なんだよね。Venus Loon は流石にイカレタ展開だとは思うのだが。それだって別に難しいことをやってる訳ではない。
けど、この人たちが演奏してると、何故かそれを何度も聞き返したくなるとか、繰り返したくなる魔力がこもってるんだよ。
その魔力を持ってない人間が、努力して、これに似た曲作ろうと、パフォーマンスをどんなに似せようと、繰り返したくなる魔力までは再現できないんです。
だから、日本人は、それを何か勘違いしてるんじゃないかと思う事がしばしある。ガワの部分だけ、よく似せたコピー製品作ろうと無駄だと分かってないというか、繰り返したくなるほどの吸引力や魔力まで再現してないってことを、てんから理解できてないのである。
他ならぬその人の、その音楽を聴きたくなる、ってのは、その魔力を求めての事であって、よく似たコピー製品作って「俺の方が上手いし、才能がある」とか言ってるのは、もう、言葉を隠さずにハッキリ言うけど
アホ
としか言いようが無いんだよね。繰り返したくなるほどの魅力なんか、お前にねぇよ、ってことを身の程知らずにも理解できてないというか。
飽きないの魔法が発動するどころか、一度、最後まで聞きとおすのさえ堪えがたいのに、寝言に付き合っていられるか。
それは個性や感性の違いとかの違い以前で、人類のオーパーツみたいな人間を相手にしてるという事を、自分で理解もできていない、見る目の無さと聞く耳の無さでしかないと思うのですが。
それが、どんなに努力を重ねようと、どんなに必死に音楽に向かおうと、君が売れない理由です。
繰り返したくなるほどの、クセになっちまうようなほどの魅力や魔力を再現できてないんだ。
それが簡単に再現できるくらいなら、誰も苦労は無いです。
だって、だからこそ、魔力としか言いようが無いんだもの。
その事に気づいてから、何十年経ったって、言語化してみようと思っても、この程度にしかならない。