新卒銀行員が入行3年目までに絶対取得しておきたい資格5選
日系金融機関の場合、入行から数年間の間は育成期間であり、営業成績などでも同期社員との差が付きにくいため、人事評価やボーナスの金額にはそれほどの差は付きません。
しかし、そんな若手社員でも、明確に差が付いてしまう分野が存在します。それが「資格試験」です。資格は、取得しているかどうかがはっきりと現れてしまう領域ですから、人事サイドとしても「若手社員の評価」に利用しやすいという側面があります。
そこで今回は、新卒で銀行に就職した新入社員が、入社3年までに絶対に取得しておきたい資格を5つ紹介します。
銀行業務検定(財務3級、税務3級、法務3級等)
まずは、なんと言っても「銀行業務検定」ですね。実用性があるかどうかはともかくとして、銀行に入行したからには取得は必須です。
「入行●年目までに、●●と××と△△を取得」「人事グレード●●になる為には、銀検科目■教科取得」などといったことが、昇進昇格の条件になっていることも少なくありません。仕事をしながら勉強して資格を取得するという事ができるかどうかという最初の関門であり、レースから脱落しないようにがんばって取得しましょう苦笑
ちなみに、銀行業務検定試験の試験科目自体は、多岐に渡っておりますが、三大科目とも称される「財務、税務、法務」を取得しておけばとりあえず問題ないと思います。加えて、入社した時の職種(法人系、個人系等)に応じた科目(信託、外為、投資信託等)を受験しておけば安泰ですね。
さて。気になるのは銀行業務検定3級試験の難易度ですが、正直そこまで難しくはありません。3週間*週20時間勉強くらいで合格できるレベルですね。3級試験であれば、問題形式は5肢択一問題*50問の出題であり、合格点は60/100点ですから、気持ち的には楽ですね。また、基本的には過去問類似問題が出題されますから、対策についても比較的容易だと思います。3級試験の合格率は、30~40%といったところです。
大体のケースでは、会社経由での団体申し込みとなる訳ですが、合否の結果だけではなく点数まで支店長に把握されます。記録はずっと残り続けますから、舐めてかかりすぎて不合格にならないように注意しましょう。
証券外務員1種・2種
こちらの資格についても、近年取得必須となっているケースが多く、内定中に取得を推進しているケースすらもあります。都銀のみならず、地方銀行や信用金庫でも同様の傾向があり、私の場合には上位資格である「内部管理責任者」も取得がマストでした。
試験が対象としている領域としては、株式・投資信託の仕組みに始まって、それらを取り巻く法律やコンプライアンスといった内容がメインです。
ちなみに証券外務員1種については、そうした内容に加えて、デリバティブ関連(信用取引、オプション、スワップ等)も試験の対象領域となります。まあ、字面だけ読んでも「???」という感じだと思いますが、仕組みさえ理解してしまえばそこまで難しい内容ではありませんので、試験のためにサッと暗記して、サッと合格して、サッと忘れれば良いと思います。
出題は、○×問題と五肢択一問題から構成されており、1種2種ともに70%以上の得点率で合格となります。必要勉強時間としては、簿記試験などと同じくらいですね。2種で3週間程度(60~70時間)、1種で4週間程度(100時間弱)の勉強期間があれば十分合格できると思います。
ちなみに、非常に認知度の低い資格試験ですが、受験者数は1種2種合わせて年間8万人前後と、実は受験者数が結構多いです(まあ、受験者の90%くらいが金融関係者なので、一般の方が受験する事は滅多にないと思います)。
簿記3級・2級
特に法人系の銀行員の方にとっては、簿記の知識を持っていないと、決算書を読むことができません。大企業の決算書(有価証券報告書)であればともかくとして、中小企業の決算書の場合には「!?」というような仕訳がたまに見られます。もちろん、税理士の監修の元で税務申告している訳ですが、税理士に満足に費用を支払っていない為なのか、よく分からない仕訳に遭遇したりすることも少なくありません。
また、そうしたケースでなくとも、仕訳やBS・PLの基本的な作り方を知らないと、分からないことがあった場合に税理士や経営者に質問をすることも出来ません。これでは、財務のプロとしては不十分であるといわざるを得ません。
銀行員にとって、簿記の知識というのは「知っていて当たり前の一般教養」レベルです。法律に詳しくないと弁護士にはなれないのと一緒で、簿記に詳しくないと銀行員にはなれません。まあ、取得していないと何かと困ることは間違いありませんので、騙されたと思って取得しておいて下さい。
簿記合格までの必要勉強時間については、3級60時間、2級100時間程度といったところでしょうか(別の記事で、若干違うことを言っているのは目を瞑ってください)。
簿記試験自体の難易度は決して高くはないのですが、とにかく計算量が多いため、日頃の勉強においてどれだけ計算練習を行ってきたかが、如実に点数に表れます。四則計算が出来れば全く問題ないレベルの計算ですが、計算に対する「慣れ」が必要な科目ですから、手を動かして紙に書いて勉強して下さい。
合格点も70/100とやや高めの設定なので、気持ち少しプレッシャーを感じますよね。合格率は、3級試験は平均50%程度、2級試験は平均30%といったところでしょうか。ただ、2級試験に関しては、試験ごとの難易度の差が激しいので、回によっては合格率10%未満だったり50%近くだったりしますので、あくまでも参考程度に考えておいて下さい。
ちなみに、銀行業務検定の財務3級試験は、簿記3級程度の知識を前提としている節があります。簿記の領域に関しては、テキストでもさらっとしか解説されていないので、「仕分などが全く分からない」という方は、まずは簿記3級を取得し、前提知識を付けた上で財務3級に臨むことをお勧めします。
FP3級・2級
10年前くらいまでは、銀行といえば預金業務と貸出業務がメインであり、それだけを行っていれば十分利益を上げることが出来ました。しかし、金利低下に伴って資金収益の減少したことで、金利収入一辺倒の体制を改め、収益源の多角化を図ることが業界全体のテーマとなりました。
近年、銀行が対象とする事業領域や行員に求められる知識量は激増しつつある訳ですが、そうした流れの中心にある資格試験がFP(ファイナンシャル・プランナー)資格と言えます。この資格試験が対象としている領域は、社会保険、不動産、金融資産運用、税金、遺言・相続、事業承継など多岐に渡っており、それらの知識を広く浅く習得し、最低限の基礎教養を身につける為には最適な資格だと思います。
また、FP試験の知識を足がかりとして、社労士・税理士・証券アナリスト・宅建士といった上位資格取得を目指すことも出来ます。実生活にも活かせる知識も結構ありますので、銀行員であろうがなかろうが、取得しておいて損はないと思います。
FP試験に関しては3級合格率が70~80%、2級合格率が15~40%といったところです(学科、実技によって多少差はあります)。いずれの試験も合格点は60%以上と低めの設定ですし、基本的には択一問題での出題ですので、心理的にも楽だと思います。ただ、上述のとおり、試験範囲が膨大な領域に渡っており、覚えるべき法律や制度、計算方式等が多いことから、「暗記が苦手」というタイプの方は苦戦するかもしれません。
宅建士
言わずと知れた不動産系資格の代表格であり、取得していると一目置かれます。
銀行業務(特に法人系)は、不動産担保と切っても切れない関係にありますし、高度な知識を要求される領域ですので、宅建士資格を取得しておくことの効用は大きいです(不動産は様々な法律、条例、都市計画などが絡み合っていますし、抵当権や根抵当権などの登記事務に精通していないと、担保として全く意味のないものとなってしまいます汗)。
また、上述の通り貸出関連収益が減少している状況の中で、不動産売買や仲介業務から得られる手数料収入というのは大変貴重な存在なので、宅建資格を保有している行員の存在感は年々増していると言えます。
ちなみに、個人営業系の方でも、宅建資格を保有しておくことには大いに意味があります。資産家は金融資産のみならず、不動産を多く保有していることが常であり、固定資産税や所得税等の毎年の税金や、不動産の承継問題に頭を悩ませています。
難易度については上記の4資格よりも1段高く、合格には200~300時間程度の勉強時間を要すると思います。また、年1度しか試験がなく、不合格となってしまうと次年度に試験を受けるモチベーションも維持しづらいので、そういった意味でも難関といえるかもしれません。
合格得点は試験ごとに異なっていますが、概ね33~35点/50点満点といったところであり、合格率は15%前後で安定しています。出題形式は四肢択一問題であり一見取り組みやすそうですが、問題の難易度は結構高いため、合格は簡単ではありません。
結婚や出産といったライフイベントを経てしまうと、なかなか勉強への時間を取ることが難しくなってきます。そういった意味でも、若手行員時代に可能な限り必要な資格は取得しておくのがベターと言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
特に若手時代というのは、とにかく勉強の日々です。上記の資格のみならず、生命保険や変額保険、損害保険といった資格に加え、無数の社内資格を受験することになります。
社会人として慣れていない時期に、働きながら勉強するというのは結構大変ですが、結婚したり家族ができると、正直勉強どころではなくなってしまいます。
何の資格も、銀行員としての基礎教養を養うための必須資格ですので、修行だと思って受験するようにして下さい。