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カタリゴト

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#天道

色つぼむ花月夜(ショートストーリー)

 花粉舞う春。  僕は、ぐずぐずの鼻をもぎとりたくなる。  薬をのむと眠くなるから、終日「春眠暁を覚えず」だ。  早く夏になればいいのに。  けど、都花沙は問答無用で僕を外に連れ出そうとする。 「ねえ、蛍琉。天神山の頂上の緑地に行ったことある? それほど高いわけじゃないけど、桜林があるんだって」 「僕はパスだよ。天道を連れていきなよ」 「えー、天道は部活が忙しくて全然付き合ってくれないんだもん。ねー、お願い」 「……完全武装で行くからな」 「やった。ありがとう」  付き合って