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浪漫

今、僕の目の前には一人の女性が座っている。
僕が恋心を抱いている人だ。

二人きりで食事をするのは初めてではないが、彼女から誘われたのは今日が初めてで、変に緊張している。
いつもは饒舌な僕も今日ばっかりはうまく話せずにいた。

「あんたもさ、そろそろ彼女の一人でもつくったら?」
ふいに彼女が言った。
「今はいいかな、一人の方が気楽だし。それに、人のこと言えないでしょ?」
当然想いは伝えられず、今日も得意の強がりを披露する。
「私は、できたよ。彼氏」
「えっ……いつから!?なんで言ってくれないの!」
「まあまあ、落ち着いてよ。いつから……ん-と、今日。ていうか今?」
彼女の言葉が全く理解できなかった。
「これじゃわかんないよね……。ねえ、私と付き合ってみない?」
言葉が出ない僕。
「も~、なんとか言ってよ。はぁ……ちょっとお手洗い行ってくる。そろそろ時間だから帰る準備してて」
そう言って彼女は席を立った。
「あっ、そうだ!さっきの告白、オッケーなら今日のご飯代、あんたの奢りね!」
いたずらな笑顔を僕に向ける彼女。

僕は、急いで財布を取り出した。
会計伝票がラブレターに見えたのはきっと僕だけだろう。


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