僕とあの子と世の中と
「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい。」
小学校の時に習った詩が、今さらながら心に響く。
あの子とは、高校生の時に出会った。
一つ下の後輩だったが、自然と仲良くなれた。
高校を卒業した後も、僕が学校の近くにいると知ると、あの子は授業を抜け出して、会いに来てくれた。
「やれやれ」と思いながらも、楽しそうに話すあの子の笑顔には敵わなかった。
大学生になったあの子と、久しぶりに会った。
どうやら、お城めぐりにはまっているらしい。
「毎回違う男性と二人きりで」というのが気になったが、否定はしなかった。
めずらしく、あの子から連絡がきた。
冷たい病室の写真と、「また、無理だった」の一言。
さすがに驚いて、少し感情的になってしまった。
あの子からの返信はなかった。
ある日、あの子に呼び出された。
僕を見るなり、あの子は寂しそうに僕に向かって両手を広げた。
あの子をいつも心配する僕。
僕の心配を気づきもしないあの子。
あの子は誰よりも寂しがり屋で、誰よりも自由だった。
世の中の音はうるさくて、誰も気づいていない。
道路に囲まれた住宅街のちいさな公園で、沈みゆく夕日の中、僕はそっとあの子を抱きしめた。
最後で読んでいただき、ありがとうございました!
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