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義母、デイサービスよりコーヒーを選ぶ。

 義母、デイサービスを拒否する

朝、気温を見た瞬間に悟った。
「今日、外に出たら負けやな…」

義母も同じ考えだったらしい。
「今日はデイサービス、休みたい」

以前、義母がデイサービスを渋ったとき、義弟が極秘作戦を決行した。
義弟が電話越しで義母に耳打ちした途端、なぜかスムーズに出かけた義母。

何を言ったのかは今でも謎である。

「あれ、もしかして義弟の説得スキル、めっちゃ強いんちゃう?」と密かに思ったが、
毎回それに頼るのもどうかと思うし、確かに外は極寒。

この冷え込みの中、無理に外に出て風邪でもひかれたら、それこそ面倒なことになる。
義母が
「一人で部屋でゆっくりする」
と言うので、まぁええかと休む連絡を入れた。

家の中は静かだった。
主人と子供は、それぞれ仕事と学校。
私は在宅で、仕事。

「よし、義母もひとりでゆっくり過ごすって言ってるし、これで仕事は集中できるか」
そう思って仕事を始めたが…

始めた瞬間、スマホがブルっと震える。
義母からのメッセージ

📩 義母:お茶いる?

…いや、こっちは仕事してるんやが。

数分後、また通知。
📩 義母:寒いな

知ってるわ!!! 私も寒いわ!!!

さらに数分後。
📩 義母:ちょっとテレビ見てもいい?

いや、家やねんから自由に見てええやろ!

ていうか、それもう「一人でゆっくりする」って言わへんのよ。

 業務委託のいいところ

午前中の仕事を終え、午後の業務は「明日に回します」と連絡。
業務委託の良さは、こういうときに発揮される。
「義母を迎えに行かないといけないので…」という理由を作るのがうまくなったのは、果たして良いことなのか悪いことなのか。

まぁ、とりあえず今日はお互いズルをしてのんびりする方向で確定した(笑)

コーヒーと静寂(と昼飯)

だが、一つ問題があった。
「昼ご飯を作らなければならない」

「何か食べたいものある?」と聞くと、義母は「なんでもええ」と言う。
この「なんでもええ」ほど、決まらない選択肢はない。

結局、冷蔵庫と相談しながら簡単に作り、
ご飯を食べ終えたら、コーヒータイム突入。

部屋は暖房でポカポカ。
外は寒いが、ここはぬくぬく。
テレビでは特に興味のないワイドショーが流れている。
「政治って、結局コーヒーよりも苦いな」とか意味のないことを考える。

そのときだった。

義母が、ふとおもむろに言った。
「いつもありがとう」

…え? なんや?
急に言われると、逆に身構える。
「もしかして、余命宣告とかされた?」とか余計なことを考える。

でも、「ありがとう」と言われて悪い気はしない。

明日も寒いらしい

と天気予報。

「明日も寒いなぁ」と私。
「ほんま、寒いの嫌やなぁ」と義母。

「明日はデイサービス行く気ある?」

「…コーヒー次第やな」

おい、そこかーーーい!!

寒さとか、体調とか、そういう問題じゃないんかい。
お前の世界はコーヒーを中心に回っとるんかい。(すんません、言い過ぎました)

いや、でも考えてみたら、
天気が悪くても、仕事が忙しくても、人生に疲れても…
温かいコーヒー1杯で、なんかどうでもよくなるときってあるよな・・・。

そう考えると、
もしかして…
義母、真理にたどり着いたんじゃね?

明日は明日……か。


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