ユニクロU・カットソーの袖丈の長さのデザインは売り上げに直結する。
以前、noteでもユニクロUの新作をチェックすることでそのトレンドを読み取っているようなことを書いた記憶があります。
今回も新作が発売されたので、お店に見に行ってきました!
ファッションブログではないので、どれがお勧めとかのコメントはしませんが、購入した商品で面白い気づきがあったので書いてみたいと思います。
ぼくが買ったのは、タートルネックのカットソー。
https://www.uniqlo.com/jp/store/goods/419547-24
これです。ゆったりめのシルエットと、生地感がとても良い商品だと思います。
で、今回は、世の中のオーバーサイズトレンドを意識し、2サイズアップで購入してみました。いつもはMを買っているのですが、XLサイズを買ってみたという訳です。
(オーバーサイズトレンドは、ヴェトモンがファッション界を席巻したことによるものですが、それは色々な記事があるので調べてみてください。)
(このようなオーバーサイズ購入傾向は僕だけに限った事ではなくて、ユニクロのサイトの商品ページを見ると女性がメンズアイテムを買った感想を上げていたりと、その端緒を見ることができます。)
で、試着した時に気づいたのですが、XLサイズを、M体形のぼくが来ても、袖が極端に長いと感じられなかったんです。
ここでぼくは、ピンと来たんですね。なるほど、ユニクロは、昨今のオーバーサイズブームを理解し、消費者が大きめサイズを買っても、違和感が少なくなるように袖丈の長さを若干短めにデザインしているのではないかと。
ぼくの経験上、長袖カットソーで最も見栄えが悪くなるのは、袖丈の長さの余りだと思っています。半袖だったら、オーバーサイズでも見栄えが悪くなることはないのですが、長袖だとそうはいきません。
オーバーサイズで試着した時に、袖の長さが気になって購入をやめるという人も出るでしょう。(ぼくも試着してあまりにも袖丈が長ければ買ってないと思います。)
そう考えると、基本サイズをオーバーサイズにしてしまえばよいかというと、そうは簡単ではないと思います。ユニクロがターゲットにしているのは、マスですし大衆です。なので、別にトレンドに合わせたくない人もいる。ジャストサイズで買いたい人もいる。そういう人たちにも商品を売らなければいけません。
そういうある種の矛盾する問題が持ち上がるのですが、それをユニクロUは袖丈と、手元のリブのデザインでクレバーに解決しているという事に気が付きました。(数年前のカットソーではリブではない仕様のものも並行して出していました。)
袖丈を若干短めに設計することで、オーバーサイズで着た時にも、袖が余りにくくする。そして、リブ仕様のデザインにすることで手元で止まりやすくする。これによって、消費者が自分好みのシルエットを、サイズ選択で調整できるようになっていると思うのです。(ジャストフィットできた場合袖丈が短く感じられるという問題は起こりそうですが、長すぎるよりちょっと短いほうが購買に影響しにくいという判断なのでしょう。)
これは、ユニバーサルデザインと言えるかもしれませんね。
ファッションデザインにおいて、シルエットや各パーツの寸法の決定は非常に重要なもので、それによって着た際の美しさが決定します。そういう美的な観点で寸法を捉えることは多いと思うのですが、それと並行して、より多くの枚数を売るためという視点でも寸法を決定しているというのは、かなり大きな学びでした。
恐らく試着している人の多くは、このようなことを考えているわけではなく、着た瞬間に違和感があるかどうかを瞬時に判断していると思います。そして、袖丈の長さに違和感があれば購入をやめてしまうのです。
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この気づきを考えている中で思い出したのは、数年前に起こったユニクロとGUのガウチョパンツブームです。
https://www.modalina.jp/modapedia/w/e382ace382a6e38381e383a7e383bbe38391e383b3e38384/
当時恐ろしい枚数が売れたと記憶しているのですが、それの原因として、南充浩さんというファッションライターの方が、その要因の一つとして、裾上げの必要のないことを指摘していました。
予め丈を短くデザインして、どのような体系の人が着用しても不自然にならないようなデザインであることで、裾上げの手間も省けますし、通販でも買いやすくなります。
そのような利便性を上げて、購入のハードルを下げるという事は、直接的な購買数にも大きな影響を与えるのだなと。特にユニクロのような全世界を対象としているビジネスならば、一つの商品の丈の長さが変わっただけで、売り上げが大きく変わることはとっくに把握していると思います。
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ガウチョパンツに関しては、まだシンプルなアイデアだと言えると思うのですが、オーバーサイズブームのような社会的風潮やトレンドをも読み取り、それを寸法に反映してるというのは、本心から凄いと思いました。
写真で見ると本当にシンプルなデザインなのですが、当たり前ですがめちゃくちゃ考えられている。しかも色々な角度から。
僕ら建築の世界にいる人たちも、この姿勢から学ぶことができると思います。美的な部分も追求しつつ、社会背景を理解し、そこに合わせ売れるためのアイデアも詰め込んでいく。
ユニクロUの商品からの学びでした。
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アーキテクチャーフォト後藤の思考推敲
アーキテクチャーフォト編集長が、単著『建築家のためのウェブ発信講義( http://amzn.to/2ESVm0N )』執筆以降に考えたこ…
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