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私が知らないあなた~対抗戦で表出する、新たなる魅力と可能性について~

はじめに~今の対抗戦に通ずる『スマブラ』・『対バン』的要素~

私は、『対抗戦』というものが(どちらかというと)苦手なタチだ。

古くは『新日本プロレスvsUインター』など、今でも伝説に残る対抗戦はあるけれど、今は求められるものが変わったように思う。
殺伐さやギスギスした情念とかではなく、今は『大乱闘スマッシュブラザーズ』的なクロスオーバー的な要素が高まっている、とでも言いましょうか。

2022年1月に行われた『新日本プロレスvsプロレスリング・ノア』なんかは、その最たる例かもしれない。
違いを越えて、双方のファンが満足度高めで帰れた多幸感は、今でも忘れられない。

片方のファンが泣くのではなく、双方のファンが上がるという点では、音楽における『対バン』(=複数バンドによる共演)にも似た趣を感じた。


私個人としては、殺伐さやギスギスとした雰囲気よりも、新鮮な顔合わせだとか、そこで起こる化学反応に対して金を払いたい気持ちがある。


でも、対抗戦というフォーマットも案外悪くないな、と最近思い始めた。

何故ならば、選手の新たな一面が垣間見れるからだ。


『NOAH vs DDT』に抱く、私個人の不安と期待

2022.6.12に、さいたまスーパーアリーナで行われる『サイバーファイトフェスティバル2022』


今年で2回目となる、サイバーエージェントグループ傘下のサイバーファイトグループに属する4団体による合同興行だ。
(DDTプロレスリング、プロレスリング・ノア、ガンバレ☆プロレス、東京女子プロレス)


サイバーファイトフェスの目玉の一つが、『NOAH vs DDT』という、普段本戦で絡みのない2団体による対抗戦だ。

2022年のサイバーファイトフェスで組まれた『拳王vs佐々木大輔』は、NOAHや東京女子プロレスのシングル王座戦前という配置から、団体の期待値の高さが窺える。
樋口和貞は、異なるユニットの遠藤哲哉、秋山準と共闘して、NOAHとの対抗戦に臨む


ただ、2021年に行われた第1回サイバーファイトフェスでは、前述した新日本vsNOAHのような多幸感は無かったし、個人的には、言いようのないしこりを双方のファンに残してしまった感も否めなかった。

『NOAH vs DDT』には、往々にしてそのような不安を感じているのですが、今回は戦前から、新たな刺激を提示してくる選手が目立つ。


例えば、今回のフェスで本戦オープニング(『藤村加偉&岡田欣也vs高鹿佑也&小嶋斗偉』)を務める岡田欣也は、大会前の記者会見で、こんな風にDDT勢に仕掛けていた。

 「サイバーファイトフェスまであと10日です。是非、小嶋選手、高鹿選手、一緒に道場で良い汗を流しませんか?(拒否されると)NOAHの合同練習、怖いですか?NOAHの練習についていけないからですか?」


"合同練習"というワードを用いたNOAH側の挑発に対して、「自分達の道場で汗を流す」、「合同練習する意味が分からない」と返していた小嶋斗偉も、最後は我慢できず、会見終わりにこんな言葉を漏らした。

「しょーもな」


私は小嶋の言葉を聞いて、驚きを隠せなかった。

別に、岡田の仕掛けたアクションが小嶋に理解されなかった事や、小嶋の挑発に対する返答への失望感では無い。

会見前日(6.1DDT後楽園)、前説での話し方も含め、聞き手が不安を感じてしまうくらい心もとなかった彼が放つ、「しょーもな」という言葉が、どんな雄弁なマイクよりも痛烈に聞こえたからだ。

このマイクを聞いて印象が大分変わったといいますか。
口下手でも、芯は据わっている選手。

小嶋は、今後のDDTを担う期待と将来性に溢れている良い選手だ。


また、後半の対抗戦でカードが組まれているNOAHの小峠篤司は、自身を見下してきたDDTの秋山準に向けて、『業界の老害』と返すバチバチっぷり。


多分、今回のフェスで一番跳ねる可能性があるんじゃないだろうか、と。


岡田欣也も小嶋も小峠も、普段から雄弁な方ではないし、どちらかといえば不器用な選手かもしれない。
だからこそ、彼らの発信は私の胸に響いてきた。

対抗戦は、何もマイナスな事ばかりではない


まとめ

対抗戦というフィルターを通じて、選手の知らない一面が引き出される事がある。

私自身、普段NOAHを観ることが多いのだが、(誤解を恐れず言うと)対抗戦の結果が悔しいものであっても、それを糧にしていく選手を何名も見てきたからだ。


2021年のサイバーファイトフェスを見ても、NOAH勢が辛酸を嘗める結果になったが、何もマイナスな事ばかりではなかったと私は思っている。

例えば、オープニングの対抗戦を制した宮脇純太は、退場するDDT勢を見下ろし、両手を上げて勝ち誇ってみせた。
普段大人しく見えた宮脇が、大胆な行動に打って出たのは驚きもあり、嬉しくもあった。
対抗戦でなければ見られない、新たなる一面だった。

また、対抗戦で直接敗戦を喫した清宮海斗も、敗戦を糧にした一人だと私は思っている。

2021年7月のGHCタッグ王座決定戦における激闘や、同年秋の武藤敬司超えに向けた執念、GHCヘビー級王者・藤田和之の欠場した2022年春・両国の決定戦立候補などで、私自身「勝ってくれ!」という気持ちを清宮に乗せられたのは、挫折から這い上がろうとする過程が何よりカッコ良かったからだ。


対抗戦に向けたDDTとNOAHの煽り合いに一喜一憂してしまいがち私ですが、サイバーファイトフェス当日は、「日頃のイメージを覆し、ギャップで観客の胸を射抜く選手は一体誰なのか?」という点に注目しつつ見ていきたいと思います。

この点を、活かすも殺すも選手次第。
結果如何にかかわらず、今後のキャリアに弾みをつける選手は誰になるか?

私は楽しみでなりません。


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