プロレスファンこそ見てほしい『誰でも女子プロレス』の話
はじめに
先日、市ヶ谷チョコレート広場で『誰でも女子プロレス』を観戦した。
(2024.2.24『ダレジョEXTRA12』)
プロレス団体・我闘雲舞が主催する女性限定プロレス教室・『誰でも女子プロレス』。
プロレス団体が運営するプロレス教室やプロレスサークルでは珍しく、プロレスラー志望でなくても参加できるのだという。
これは、我闘雲舞の創始者・さくらえみが、今大会の冒頭に話していた言葉である。
野球と言っても、野球選手を目指す人や、バッティングセンターで打つのが楽しいという人が混在する状況を、プロレスにも持って行きたいという大胆かつ斬新なアイデア。
今回、私が『誰でも女子プロレス』を観に行った理由は単純だ。
丁度この日の夕方から日本武道館でNothing's Carved In Stoneのライブを観に行く予定があり、そのタイミングに行けそうな都心の興行を探していたところ、今回の興行に行きついたのである。
チョコレート広場から日本武道館までは徒歩で行ける距離にあるし、開始時間も興行時間もハシゴは十分間に合いそうだ。
あと、2019年5月に1度『誰でも女子プロレス』を観に行ったことがあり、その時に我闘雲舞の練習風景や一般参加者のエキシビジョンマッチに衝撃を受けた思い出が忘れられず、今回観に行こうと決めた背景もある。
そんな単純な理由で観に行った大会。
見終えて思ったのは、「やっぱり『誰でも女子プロレス』って凄い」という事でした。
金を払ってでも見たい、一般参加者の"表現"
今回の興行は、『誰でも女子プロレス』に参加している一般人のトレーニング風景を、観客からお金を取って見せていくのが主な内容だ。
故に、プロ選手は殆ど出ないし、興行も約1時間ほどで終わるし、通常興行に比べても破格のチケット代(2,200円)で観戦できてしまう。
(後から知ったのだけど、大会終了後に出場者と観客で軽く懇親会ということでビールも戴いてしまった。破格!)
でも、この一般人のトレーニング風景を、金を払って観る価値は確実にあったと私は言い切れる。
この日行われたのは以下のメニューだった。
まず最初に、ダレジョの参加者がトレーニング風景を見せていくところからスタート(①)。
その後は、「ロックアップ状態で場外に押し込んだ方が勝ち」という1vs1形式の『ロックアップ選手権』(②)、時間無制限で決着をつける1vs1の『エキシビジョンマッチ』(③)、ドロップキックを競い合う『ドロップキック選手権』(④)で構成されていく。
②の『ロックアップ選手権』は、体格差問わずに組み合わせが決定するのだが、体格の大きい人と小さい人の組み合わせになった時に、会場中が自然と後者を応援するムードになったり、一番最後に行われた一般参加者とさくらえみによる一騎打ちで一般参加者が勝利したり、ロックアップオンリーなのにプロレスの魅力が詰められているところが面白いと感じた。
③の『エキシビジョンマッチ』は、ダレジョ出身者の瀬戸ノノカを除いて一般参加者しかいない中でシングルが6試合組まれたのだが、当日まで私も名前を知らなかった人物が1人ひとり個性を発揮していたのである。
閂固めでギブアップを狙ったり、極楽固めからアルゼンチンバックブリーカーに持ち込んだり、プロでも見れない技や独創的な入りの技が使われていて、プロレスを観る上で予想してしまう方向を良い意味で裏切ってくれる新鮮さがそこにはあった。
このエキシビジョンマッチには、エルボーや蹴りといった打撃技、ボディスラムやジャーマンスープレックスといった投げ技、ドロップキックのような飛び技は出てこない。
そこは一般参加者だからこその指導方針が大きいと思うのだけど、そうした打撃・投げ技・飛び技が無くとも、試合が構成できるだけの極め技や丸め込みのバリエーションが豊富に揃っていた為、見劣りする箇所は皆無。
寧ろ、見た感じは普通の女性がサソリ固めや極楽固めを難なく極めたりするところに、私はただただ驚かされたのである(すごい!)。
つまるところ、年齢も目的も違う一般参加者が見せる"表現"に対して、金を払う共感や喜びのようなものが『誰でも女子プロレス』にはあるんじゃないかと私は感じている。
『ドロップキック選手権』はプロの登竜門説
一番最後に行われた④の『ドロップキック選手権』は、参加した12人がドロップキックを放つ様子を見て、観客が一番良いと思った選手に投票するというもので、過去には我闘雲舞デビュー前の沙也加が優勝した事もある。
全員が試技を1回実施した上で、本番では自己アピールとドロップキックを行う流れだったが、ここで優勝したのは、ドロップキック選手権後に「我闘雲舞の練習生になりたいです!」とさくらえみに直接志願した方だった。
私もこの方に投票したのだけど、本当に不思議なもので、私の中で何人か候補がいる中でも自然とこの人を選んでしまうような存在感があったと言うか。
自己アピールの時に「市ヶ谷の星になります!」と言っていたのだけれども、意気込みのこもり方が明らかに突出している印象を受けた。
前述の沙也加も輩出して、今回の優勝者が練習生になったので、ダレジョの『ドロップキック選手権』はプロの登竜門なのかもしれない、マジで。
まとめ~批判や否定が皆無なポジティブさ~
個人的に『誰でも女子プロレス』を見ていて凄いと感じたのは、「否定や批判の雰囲気が皆無」というところだった。
一般参加者がメインの興行という点も大きいのだろうけれど、それ以上に、大会前にアンケートが配布されて「良かった人の名前とポイントを書いてください」と促していた事で、指導してる側や見守る観客が参加者の失敗を責めたり笑ったりしないポジティブな雰囲気が形成されていた事が何より大きかったと思う。
あと、大会終盤の告知コーナーでは、参加者が「職場の部署が変わったけど頑張ってお金を稼ぐ!」とか「春休みに入ったのでプロレス観に行きます!」とアピールしていくのも凄く新鮮だった。
この手のプロレス興行における告知コーナーでは、選手が興行のPRをすることが殆どだったりするので、「告知と言っても堅くならず、自分の事でも全然良いんだよな」って思えた。斬新だけど、シンプルな事に気付かせてくれた瞬間。
そんな中、告知コーナーでの「私を練習生にしてください!」という告白は熱かった。正直聞いてて燃えたぜ。
今回、記事のタイトルを【プロレスファンこそ見てほしい『誰でも女子プロレス』の話】と打ったのには私なりに理由がある。
予備知識も全くない状態の人が試合して、その様子に沸き立って、雰囲気も肯定的…。
私がプロレスを見始めた時期に近い目線で、シンプルに目の前の事象を楽しめたからだ。
(主語がデカいのは良くないと思うんだけど…)
こういう雰囲気はHEAT-UPの道場生発表会に近いものを私自身感じている。
我闘雲舞もHEAT-UPも規模が決して大きくない団体ながら、有力な選手を次々輩出してる点で共通項があるし、両団体ともに「プロレスデビューを目的とした運営」をしていない所で一般人の裾野を拡げている事に貢献しているとは言えないだろうか?
是非1度、機会があったら『誰でも女子プロレス』を見てほしい。
年齢等の条件が課されていない、目的も異なる一般参加者が創り出した表現は、観る人の胸を打つものが確実にあったから。
新しいことにチャレンジする姿勢…。
野郎だけど、私も頑張ろう。。。