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プヲタが初めてThe BONEZのライブに行った話
はじめに
2024.4.6の夕暮れ時、私は千葉県の幕張メッセを訪れていた。
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この日は新日本プロレスの春のビッグマッチ・両国国技館大会があったりして、プロレス興行も色々開催されていたのだけど、この日は個人的にプロレス以上に惹かれるイベントが開催されたのだ。
The BONEZの幕張メッセワンマンライブ『SUNTOWN』だ。
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しがないプロレスファンの私からすると、プロレスラー・伊橋剛太の代名詞になってる「イェイ!カモン!」の元ネタになってる楽曲のボーカルがいたり、
同じくプロレスラーであるレッカの使っている入場曲で、ベースとドラムを演奏してる人がいたりする接点を見出しがちなバンドだ…。
今回、私がThe BONEZのライブを見てみたいと思ったキッカケは主に2つある。
1つ目は、2023年秋に出された声明文だ。
The BONEZとNumber_iのグループロゴについて、
SNS上で騒がれている事を俺たちのファンであるBONERを通じて知りました。
みんなで確認したけど
俺達とBONERが10年以上背負ってきたNロゴと
確かに似てはいるなぁと思った。
だからみんなが不安に思った気持ちもわかるよ、ありがとな!
でもロゴは似ているようで違うものだし
それぞれがそれぞれのロゴにプライドを持って
掲げていけば良いんじゃないかな?と思う。
それにThe BONEZを応援してきてくれたBONERなら間違うことなんてないっしょ?
これも何かの縁としてファン同士がお互いの音楽を知るきっかけになったら素敵なことじゃん。
彼らの楽曲が出た際には俺たちもチェックしてみるよ。
つまり何が言いたいかっていうとBONERは何も心配せず
これからもThe BONEZのサポートをよろしく! ってこと。
来年4/6幕張メッセ・SUNTOWNでみんな集合だぜー!
「後発のアイドルグループにロゴをパクられているのではないか?」という周囲からの指摘に対して、所謂"パクられた側"という立場にもかかわらず、珍しいくらい寛大な態度を示したバンド側。
普通なら法的措置とか起こりそうな案件だと思うのに、「お互いの音楽を知るきっかけになったら素敵な事じゃん」と言い切れるところが単純にスゴいと思っていて、この件でThe BONEZというバンドの事が気になり始めたのだ。
今回観に行った4/6幕張メッセ公演の存在も、このリリース文の最後で初めて知った。
2つ目は、2023年秋に公開されたPay money To my Painのドキュメンタリー映画だ。
P.T.P.のことは一部分しか知らなかったけれど、この映画を見てラウドロックというジャンルに興味を抱いた。
あと、この映画の感想をnoteに綴ったところ、フォロワー様経由で同作品にインタビュー出演していた某バンドの方から「映画キッカケでラウドロックに興味持ってもらえるの嬉しい」と後日人伝てに話を聞いて、生でラウドロックを聴いてみたいという気持ちが一層強まったというのもある。
そんな理由の諸々から足を運んだ今回のライブだった訳だが、一言で表すなら【人生観が変わってしまいそうな素晴らしいライブ】だった。
正直な話、私は今回のライブを見るにあたって「過去のライブ映像を見る」とか「既発曲を全部一通り聴いてみる」といった予習らしい予習は一切していない。
そもそも、自分の好きなバンドでさえ曲を聴いてアルバム曲の名前がすぐ出てこない人間なのだ。
テストでも検定でも無いので、その場その時を楽しめれば良いというスタンスで私はいる。
だから、これから書くことは個人の感想で、セットリストがどうとか専門的なことはサッパリ分からないので書けない。
そんな状態で見ても、The BONEZのライブは素晴らしいと思った。
「ロゴが真似されている」なんて話で揺らぐ事の無い、確固たる絆と信頼…。
当日の事を思い出しながら、しがないプロレスファンの端くれが書いたライブ鑑賞記になります。
①一体感
当日、会場に足を運んで先ず実感したのが、訪れているファンの一体感だった。
普通、会場で販売されるツアーTシャツは何種類かあって、それを着用してる人もいれば、前までのツアーシャツを着用してる人もいたりと、ライブ会場ではバンドやアーティストのファンを通じて様々な歴史を感じ取れる。
ただ、今回のThe BONEZではツアータイトルにもなっている『SUNTOWN』と書かれた黒Tシャツを身に付けたファンの割合が圧倒的に多かったのだ。
私自身、ライブに行く回数が多い人間ではないけれど、それでもここまで統一感のある圧倒的な黒一色は、ロビーで見てもスタンド席から見ても実に壮観であった。
あとから他の方に教えていただいたのだけれども、アリーナ席はTシャツ付きで販売されていたらしい。
ただ、それがあったとしても、この絶景は中々生まれないと感じたのだ。
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開始予定時刻から20分ほど押してライブが始まると、冒頭の数曲で前後2ブロックに分かれたアリーナ席にモッシュダイブの渦が巻き起こる。
私自身、モッシュダイブというものは「傍から見てたら楽しそうだけど、実際近くに寄るのは怖い」という認識があるのだが、不思議なもので、アリーナ席後方から前方へと人が大量に流れていく景色に圧倒され続けた。
多分、ライブ中に人がモッシュで射出されていった回数は1,000回単位に達していた気がする。それくらい、ミドルテンポの曲を除いてダイブが絶えなかった。
The BONEZ 10th Anniversary Tour
— The BONEZ Official 4月6日 幕張メッセイベントホール 「SUNTOWN」 開催 (@The__BONEZ) April 7, 2024
47 AREAS Grand Finale “SUNTOWN”
photo by @nekozephoto #thebonez #suntown pic.twitter.com/2HNTXaObyL
The BONEZ 10th Anniversary Tour
— The BONEZ Official 4月6日 幕張メッセイベントホール 「SUNTOWN」 開催 (@The__BONEZ) April 7, 2024
47 AREAS Grand Finale “SUNTOWN”
photo by @YSZ_PHOTO #thebonez #suntown pic.twitter.com/SLxXShlyI9
音楽フェスなどでは安全面の観点から「モッシュダイブ禁止」を打ち出している所は多く耳にする。
私自身、過去に小規模会場の別のバンドのライブを見た時に、後方に逃げていてもウィンドミルとかがバンバン身体に当たってきたりした経験もあって、正直なところモッシュダイブなどに対する印象は最悪に近いものがあった。
それでも、ボーカルのJESSEが「モッシュダイブが好きな人も、モッシュダイブが嫌いな人も共存できるライブを目指してる」とMCで語ったように、モッシュダイブが嫌いだったり苦手だったりする人間でも楽しめる空間が、この日の幕張メッセイベントホールにはあったのだ。
JESSE「(MCにて)モッシュが好きな人も、モッシュが苦手な人もいると思うけど、俺達のライブでは両者を共存させたい。(アリーナを指して)こいつらはモッシュが出来なかったら、警察のお世話になるかもしれないし、死んでしまうかもしれない。でも、モッシュで人の汗とかついたりしながらもハイタッチして活力になってくれたら嬉しい。だから、こいつらの事をどうか、白い目で見ないであげてください。」
「モッシュ好きな人も苦手な人も共存できる場所こそが『SUNTOWN』。俺はこの場所が最先端だと思ってる。」
モッシュダイブは頻繁に起こったけれど、ダイブが終わった観客達は真っ直ぐ客席へと戻っていったし、ボーカルのJESSEが客席に向かってダイブした時も、観客がJESSEをリフトし続ける傍ら、JESSEを避けるよう上手い具合にダイブしてた観客がいたし、JESSEが「真ん中を空けろ!」と指示したらモーセの十戒の如く客席中央が拓かれたし…。
とにかくもう、ファンの統率力と一体感の高さに圧倒されたのである。
中でも印象的だったのは、ライブ中盤に客席に向かってダイブした後、ステージに戻っていった時に発せられたJESSEの言葉だった。
JESSE「携帯落としたのスタッフに渡してるから、後で取りに来て!『貴重品を落としてもちゃんと還ってくる』で有名なThe BONEZのライブへようこそ!」
ファンを信頼しているからこそ発せられる演者の言葉に、バンドとBONERの揺るぎない関係性を垣間見たのである。
②予習せずともノリノリになったライブ
私は、好きなアーティストのライブであっても、曲に合わせて手を挙げたりシンガロングしたりするのが恥ずかしくて苦手なタチだ。
そんな私でも、知らず知らずのうちに一曲目から手を挙げたり、シンガロングしたりしてしまった。
こんなライブに出逢ったのは生まれて初めてかもしれない。
前述のように、私は今回のライブにあたって予習らしい予習はしていない。
それでも心の底から楽しめたのは、オープニングから起こった歓声と盛り上がりの凄まじさに引き寄せられた部分も大きい。
開始前アナウンスでライブへの期待感から起こる、観客の歓声と拍手は地鳴りのよう。
度々MCで触れられていた「誰も置いていかない」というスタンスは、何もモッシュダイブの有無だけではないのだ。
今回のワンマンライブでは、メンバーがコロナ禍に触れる場面も多々あった。
TSUYO$HI「コロナ禍の時は全然曲を作ろうと思えなくて。ライブでやった時に皆盛り上がる光景を浮かべながら曲を作るから。今日やってみて、『デカいところでライブやるの良いな』と思ったし、(今回のような大規模での)祭りも楽しかったけど、どちらかというと10,000人規模のライブを1回やるよりも、1,000人規模のライブを10回やりたいんだよね。その方が俺達も10回演奏できるし、皆も10回会いに来れるじゃん。(色んなバンドが)重大発表で大会場でのライブを発表したりするけど、重大発表でも大きい会場だけが全てではないと思うんだよね。」
JESSE「コロナ禍でライブハウスが悪者にされたり。だから、またもしライブハウスが悪く言われることがあったら、日本政府に中指立てて、全国ツアー回ってやるからな!!!」
私が好きなプロレスもそうだったけど、コロナ禍直後のスポーツやエンターテインメントはマスク無しで声が出せるようになるまで約3年近くの期間を要した。
今回のようなモッシュダイブとシンガロングなんて1年以上前なら考えられなかったし、そんなタイミングで行ったなら「非常識だ」という批判は免れなかっただろう。
そんな生粋のライブバンドが求めていた光景が、コロナ禍を経て戻ってきた。
初見の私でも、この奇跡のような光景が当たり前でないことをハッキリ実感したのである。
本当にスゴかったんだ…。
③子供達の存在
今回のライブを語る上で外せないポイントだと感じたのは、客席にいた子供の多さだ。
ファミリー席が設けられていた会場には、ロックバンドのワンマンライブでは中々見慣れない親子連れを多数見かけた。
恐らく小学校に上がる前の子供達だろうが、イヤーマフを付けて音に合わせて身体を動かしながら楽しむ光景は新鮮だった。
ライブ後にJESSEがファミリー席に向かって叫んだ一言に、私は胸を打たれる。
「子供達!今日のライブ見て『いつか(アリーナの)こっち側に行きたい』と言ってくれるようなタイミングになるまで、俺達も頑張るからな!」
個人的かつ月並みな意見になってしまうけれど、幼少期に親から受ける影響って決して少なくない。
それは音楽とかプロレスとかの趣味も同様だと私は思っていて、親の影響が出る生育環境の中から段々と形作られていく音楽観だとか趣味・嗜好があると私は感じている。
だから、こういう未来のロックシーンを作るであろう子供達に対しても、目を向けて動いているThe BONEZの取り組みが新鮮に映った。
このような取り組みってロックバンドではあまり見られない印象があるからこそ、バンド側が将来のリスナーを育もうとしている意気の良さに、ライブを初めて見た私も拍手を送らずにはいられないのだ。
これは中々出来ることではない、と。
まとめ
The BONEZというバンドが幕張で作り上げた『SUNTOWN』という理想郷は、私の人生観を変えてしまうほどの衝撃に満ち溢れていた。
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モッシュダイブの是非だとかコロナ禍以降のライブ観だとか色々考え方が分かれる問題であっても、冒頭で触れたロゴのように、自分達の姿勢にプライドを持っているからこそ周囲からの反応にもブレない。
そこに、The BONEZのカッコ良さがあるんだなって思った。
JESSE「BONERも含めて、誰か1人欠けてしまっても幕張には来れませんでした。今、死にたいって思うやつもいるかもしれない。実際俺もDMで相談されることもある。でも、人間頑張ることしか出来ないんだよ。だからお前らも頑張れよ!俺も頑張るから!」
「(アリーナに向けて)多分お前ら、友達いないんだろ?(笑)でも、友達いないとか同じ趣味の人がいないと思ってたジャンルでも、今日こんなに多くの人達が集まりました。」
最近はSNSの発達もあり、どのジャンルも演者とファンの距離感が良くも悪くも近くなりがちだけど、演者もファンも互いに引くべき一線を置きつつリスペクトし合うThe BONEZとBONERの関係性が、スタンド席から見ていて非常に眩しく見えてしまった。
端的に言うと、そんな関係性が羨ましかった。そこに自己顕示とか無い感じが特に。
何より、会場で見かけるBONERの皆様の和気藹々とした空気とか優しさとか、会場ブースにいたスタッフさんの手厚い気遣いとかに触れて、尚更そんな事を思った。
あと、個人的にはJESSEがPay money To my Painについて触れたMCも非常に素晴らしかった。
JESSE「普通、バンドって友達と組んでっていうパターンが多いと思うけど、俺らの場合は1人の男がキッカケで集まったところがあって。で、最初のうちはP.T.P.のファンからも『何で別のバンドやるの?』と言われたり、RIZEのファンからも『RIZEあるのに何で?』って言われて、皆全然(ライブに)来なかったんですよ。本当のファンほど痛いほど気持ちが伝わってきたというか。(Kの亡くなった)12.30って、KenKenの誕生日でもあるんだよね。本当なら嬉しい日だけど、思い出すよね…。でも、2013.1.11にThe BONEZでライブをやった後も、メンバーから『音源作ろう』とか『ライブやろう』ってやってきた積み重ねが今なんですよ。」
「人の死って9割9分楽しいものではなくて。それはどんな邪悪な人だとしても。でも、その残り1%でも、(Kの死がキッカケで)バンドを組んで、それが良かったって思えるように俺らは今までやってきました。今もしかしたら『嫌なことがある』とか、『死にたい』って思うやつはいるかもしれないけど、9割9分そういう状況でも引っくり返せるって事を俺達は伝えたいです。」
「9割9分辛いことがあっても引っくり返せる。」
幕張メッセ・イベントホールの大会場を埋めて、The BONEZとBONERが体現して見せた2024.4.6の光景こそが、そのMCを証明するだけの説得力を担保していた。
この発言に、観客が勇気を貰わない訳が無いだろう。
The BONEZ、楽しかったです!
次はライブハウスで観たい!
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※関連項目