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Re:04 秋の収穫祭、ナガノパープルと紫蘇のハーベストパフェ

Casey:巨樹さん、お帰りなさい!どうでしたかフランスは?

巨樹:ただいま!いやぁ、すごく面白かったですよ。パフェが世界トレンドになるという確信も持てましたし、色々と面白いお話ができそうです。長くなっちゃうと思うので、これは別途やりましょう!

Casey:いいですね〜。2〜3時間くらい聞きたいです(笑) 
フランスでのエピソードは次回のお楽しみということで、今回は9月限定のパフェについてお願いします!まずはパフェの名前から教えてください。


秋の訪れを知らせる収穫祭

巨樹:はい!9月の限定メニューは「ナガノパープルと紫蘇のハーベストパフェ」です。

Casey:このパフェは去年のリバイバルパフェですね?改めてどんなパフェなのか教えてください。

巨樹:Remake easyでは過去に40種類以上のパフェを出しているのですが、リバイバルになったのはこれで6個目なんです。シンプルに今年も食べたいと思ったのが大きな理由ですね。
パフェについてですが、9月になるとハーベスト、つまり「収穫」を迎える作物がたくさんあり、みずみずしいブドウにも旬が訪れます。爽やかな夏の終わりと秋の訪れを知らせる収穫祭を楽しんでもらいたいというパフェですね。

Casey:リバイバルについてもハーベストについても、聞きたいことがたくさん出てきました!でもまずはそれぞれのパフェのパーツについても教えてください。


巨樹:まずは一番下に透明な紫蘇のジュレがあります。香りだけついていて、とろみがあります。Remake easyのパフェではグラスの下に透明なものが来ることは少ないんですが、結構上品に見えますよね。
それから目玉になるフレッシュなブドウ、ナガノパープルがきて、その上に来るのはクーリーカシスパープルです。クーリーとはジュレほどゲル化してないけど、ソースほどシャバくない状態のものですね。さらにクランブル、中央には赤ワインのソルベがきます。

Casey:このソルベが美味しいんですよね、、

巨樹:白ワインは通常冷やして飲むけど、赤ワインは高めの温度帯で飲みますよね。常温の赤ワインの香りはデザートに使うにはちょっと強いんです。
ただ、赤ワインのタンニンや渋みを生のブドウやカシス、紫蘇と合わせて感じて欲しかったので、ソルベにすることでジューシーさと程よい渋みを表現しました。

Casey:実はこの9月限定パフェ、2023年の僕の一番の推しパフェなんです。なんだか答え合わせをしてるみたいで面白いです。

巨樹:昔のRemake easyではお酒が強いパフェも結構出してたんですけど、最近はアルコールが苦手な人でも楽しめるように、あんまり強くないものを作ってたんです。
でもアルコールの揮発性の香りとフルーツを合わせるのも僕の得意分野ですし、 Caseyさんのようにお酒が好きな方もいらっしゃるので、こういうパフェもたまに作りたいですね!

Casey:まさに僕はワインも好きなので、なんでこのパフェが好きなのか今の話を聞きながら改めて考えていたんですけど、ワインってブドウしか使ってないけど、香りを他のフルーツとかスパイスとかで例えるじゃないですか。このパフェはまさにワインの味わいを色々な素材でリメイクしてるような面白さがあるんですよね。

巨樹:確かにその観点はありますね。あとはそれに加えて食感の違うパーツを重ねることで、香りの広がり方にもバリエーションを作っています。
例えばクレームシャンティカシスでは、通常のように生クリームやチョコレートを使うと乳脂肪分と合わさってカシスらしさが出ないので、代わりに寒天を使っています。
そして上に乗る赤ワインと紫蘇のエスプーマとは口の中で溶けていくスピード、テクスチャーが異なるんです。

Casey:なるほど、密度の違うエアリーなパーツが重なってるからこそ、独特な香りの広がりがあるんですね。

巨樹:エアリーなパーツが多い中で、ブドウは常に口の中にいるんです。8月パフェのシャインマスカットは1/8にカットしていましたが、今回のナガノパープルは半分に割ってます。黒ブドウの旨みと渋みは噛めば噛むほど出てくるので、あえて大きく切ったまま使っています。

Casey:昔から思っていたんですけど、Remake easyで楽しめるものって四次元のパフェですよね。皿に盛るデザートと比べてグラスの中に入ることで縦軸が生まれ、それを順に食べ進めることで口の中に時間軸が生まれる。

巨樹:そう言ってもらえると嬉しいです!今回は特に官能的でジューシーなパフェで、弾けた香りに味わいが広がってくる。一口の秋の味覚のイメージです。


噛むほどに旨みが出るナガノパープル

Casey:「ハーベストパフェ」と冠していますが、ここにはどんな思いがあるのでしょうか?

巨樹:僕らは今都市に住んでいて、一次産業とは離れた生活をしている人がほとんどです。でも人類の歴史の中では、収穫は多くの人にとって冬を越すための命に関わることで、豊作はみんなで祝おうと思うのが自然なことでした。それを忘れてしまっているからこそ、立ち戻ろうと思っての「ハーベストパフェ」です。

Casey:確かに、収穫の秋は本来人間の根源的な幸福の時期ですもんね。ただ、色々な秋の味覚がある中で、なぜブドウ、なぜナガノパープルなのでしょうか。

巨樹:秋の味覚をたくさん組み合わせることもできたけど、Remake easyとしてやるべきことはまず一つの素材に向き合うこと。そして相乗効果を得られるような素材でまとめることです。そんな中でナガノパープルを使いたいと思ったんです。

Casey:ナガノパープルは他のブドウと比べてどんな特徴があるんですか?

巨樹:初めて食べたのは8年くらい前にぶどう狩りに行った時でした。農家さんにパティシエですって話をしたら、8品種くらい食べさせてくれたんです。その中にあったのがナガノパープルで、初めてみる品種でした。
ブドウには白ブドウ、黒ブドウとあって、色が濃いほどポリフェノールが多くて、渋みやタンニンが多くなります。ナガノパープルは色の濃いブドウですけど、身には渋みがなかったんです。そしてシャインマスカットのパキッとした皮とは対照的に、噛むほどに旨みを感じました。最初に食べた時からいつかスイーツに使いたいなと思ってました。
獲れる時期は短くて、9月だけなんです。8月にも10月にも獲れないからこそ、9月のパフェにぴったりだなと。

Casey:皮の旨み、意識して食べてみます!そして今回のパフェ、僕が驚いたのはブドウと紫蘇の組み合わせなんですが、これはどこからアイディアを得たんですか?

巨樹:前にお寿司やさんに行った時に、穂紫蘇をみたんですよ。それがブドウに似てるなと思って。花って一輪咲くのが普通ですけど、シソ科は縦に軸があって、横に花が咲くんです。ブドウとか山ぶどう、カシス、赤すぐりなんかも似たように花を咲かせるんです。何か繋がりがあるのかなっていう遊び心で最初は合わせました。

Casey:ビジュアル!そんな着想もあるんですね。穂紫蘇もパフェに乗ってますよね。でも実際に合わせてみると絶妙なコンビネーションになりましたね。

巨樹:紫蘇の余韻は長いんですけど、ブドウの旨みは中盤にくる。だからもっとアタックのはやいカシスを合わせました。

Casey:素材の特徴が出てくる時間差をうまく活用してるのは面白いですね!

巨樹:ちなみにフランスではいま紫蘇が流行り始めてます。レストランとかでも出てくるし、洋風のハーブとは違う雰囲気がウケているみたいです。抹茶、ゆずのブームに続くかもしれませんね。

Casey:そうなんですね!確かに僕も今年フランスに行ったとき、紫蘇をソースに使ったメニューをみたかもです。


数千人の審査員の前で毎月コンクール

Casey:冒頭でも少し触れましたが、Remake easyでリバイバルパフェが出てくる基準て何かあるんですか?

巨樹:会員制のパフェバーで毎月の季節のパフェを楽しみにしている人がいる中で、リバイバルパフェが嬉しい人もいれば、そうでない人もいるんですよ。今月のCaseyさんみたいに好きなパフェがまた出てきたら改めて味わえるって喜んでもらえるけど、新しいのが食べたいという意見ももちろんあります。
取材でだったり会員さんにはよくお話しするんですけど、僕は普段の作業部屋の温度と湿度を2ヶ月後の平均気温・湿度に設定して過ごしています。パティシエとしてたくさんの素材やスイーツをインプットした僕の身体がその環境下で本能的に「食べたい」と思うものをRemake easyのメニューにしているんです。結論で言うと今年もこのパフェを「食べたい」と思ったのが理由で、言ってしまえば誰よりも美味しい物好きの僕のわがままで決まっています。

Casey:この話は僕も聞いたことありますが、技術と本能の使い分けが面白いですよね。また食べたいと思うだけの完成度を実現しているってことですね。

巨樹:もちろん僕自身も色々なチャレンジを続けていて、技術も身につけていて、成長はしてます。それでも去年の自分を超えられないこともあるんです。
ただ、一度リバイバルしたら3回目は基本的に出しません。自分の成長が止まっちゃうので。僕としては毎月コンクールをやっていて、審査員が何千人もいる気分なんです。「またこいつが来たよ」と思われるのを超えていかなければいけない。自分自身のミッションのために封印しています。

Casey:確かにそのプレッシャーは相当なものですよね。。これまでリバイバルしたパフェを振り返ってみましょうか。

巨樹:今までのリバイバルは、
2022・2023年3月「桜グリオットピスターシュパフェ」
2022・2023年8月「ソーテルヌとグアバのサヴァランパフェ」
2022・2023年10月「金木犀と柿とフロマージュブランのシブーストパフェ」
2023・2024年5月「日本茶とマンゴーのティラミスパフェ」
2023・2024年6月「ローズピーチメルバパフェ」
どこかで機会があれば殿堂入りしたこのパフェたちも復活させたいですけどね。

Casey:そうそうたる顔ぶれですねぇ。12ヶ月分の殿堂入りができたら面白いですよね!それも巨樹さんの裏ミッションになりそう(笑)

巨樹:それは大変だけど面白そうですね!(笑)


生きる喜びを思い出すパフェ

Casey:本当は聞きたいことがもっとあるんですけど、取材という形式だから深掘りきれないのが残念です...!!
改めて9月限定「ナガノパープルと紫蘇のハーベストパフェ」はどんなパフェなのか、教えてください。

巨樹:生きる喜びを感じていただきたいです。いつものパフェでも至福のひとときを感じていただけているとは思いますが、秋がどれほど美しい季節なのか、改めて想いをはせるきっかけになったら嬉しいです。

Casey:Remake easyでも四季の移ろいは感じますが、秋はどんな立ち位置なんでしょうか。

巨樹:蓄える冬が終わって、息吹の春が来ます。梅雨で大地に水が浸透し、夏に緑が茂る。その溜まりに溜まったエネルギーが秋に実ります。そんな夏の終わりと、秋の足音。本来秋はそういう季節だったはずだから、それをパフェから感じて欲しいです。

Casey:秋の美しさ、人間らしさ。。これは人間讃歌のパフェですね。

巨樹:いいですねそれ!
ナガノパープル自体は生産量が多くはないので、これで知られるようになるといいなとも思っています。

Casey:一次産業の需要を作ることもRemake easyにできることですよね。ありがとうございました!
ちなみに2024年の暫定推しパフェは8月の「シャインマスカットとドラゴンフルーツのココ夏モンブランパフェ」なので、2つを比べるのも楽しみです!

巨樹:白ブドウと黒ブドウの対決、面白いですね。こちらこそありがとうございました!



秋の夜長のナガノパープル。収穫の喜びを味わいに、ぜひRemake easyへ。

Casey