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Re:12 素材をリスペクトし、豆からパフェへ!クランベリーと凍頂烏龍薫るビーントゥバーチョコレートパフェ

こんにちは!
Remake easyコンシェルジュのCaseyです。

このnoteでは僕Caseyが案内人として、皆様をRemake easyにお連れいたします。
Remake easyのパフェの魅力や、普段はあまり目に触れない取り組みなどをご紹介する企画です。

冬もピークを超えたのか、まだまだ寒い日が続くのか。
そんな時には濃厚で芳醇な、2月らしいアレが食べたくなりますよね...!!

さて、今回もRemake easyプロデューサーの林巨樹に、2月の限定パフェについて聞いてみました!



カカオを見つめ直す

Casey:巨樹さん、よろしくお願いします!僕は今回個人的にすごく楽しみにしていたんです。インタビュー日の少し前になりますが、巨樹さんがXで投稿していた内容が興味深く、、

巨樹:よろしくお願いします!そうですね、今回はすごく深いトピックになりそうです。

Casey:そうだと思います!それでは早速、2月限定パフェの名前を教えてください。

巨樹:2月限定「クランベリーと凍頂烏龍薫るビーントゥバーチョコレートパフェ」です!

Casey:チョコレートが出てくることは予告されていましたが、クランベリーに凍頂烏龍?聞いたことがあるような、ないような。パフェの概要について教えてください!

巨樹:今回は過去のRemake easyのチョコレートパフェの中でもザ・チョコレートパフェですね。今までは去年2月の紅不知火「大将季」だったり、その前の年はチョコミントだったり。フルーツやミントとの掛け算を楽しむようなパフェでした。
今回のパフェはチョコレートとその原料であるカカオ豆を主体に持ってきて、その世界観を拡張してくれるような素材で合わせたパフェになります。

Casey:確かにRemake easyの過去のパフェに限らず、チョコレートというと何かと掛け合わせてるケースが多いですよね。今回チョコレートを真ん中に持ってこようと思ったのはどんな理由があるんですか?

巨樹:チョコレートの歴史では、オレンジに合う、ウィスキーに合うと、色々な組み合わせが生み出されてきました。でもそれは逆にチョコレートそのものの魅力が足りないといわれているようにも感じるんです。
チョコレートはフルーツであって、その種子に当たるのがカカオ豆だと知らない人も多いです。フルーツであるが故に酸味だったり香りにもポテンシャルがあるのに、それが隠れてしまっているんです。

Casey:去年の2月パフェにもカカオパルプが登場しましたよね。カカオの果肉の部分は流通が難しくてなかなか日本には入ってこないんですよね。僕も去年初めて食べて味わい深さにびっくりしましたし、改めてカカオはフルーツなんだなと感じたのを覚えています。

巨樹:やっぱり作り手も食べ手もカカオについてもっと知らないといけないし、フルーツとしての魅力を再確認しないといけないと思うんです。
Remake easyは素材をリスペクトして、あるべき形にリメイクすることをバリューの一つに置いています。なのでカカオを見つめ直し、可能性を感じていただくために、カカオをメインにしたパフェにしました。

Casey:なるほど。カカオの持つ香りや味わいを最大限引き出すために選ばれたのがクランベリーと凍頂烏龍だったと。なぜこの素材を選んだかという前に、カカオ・チョコレートのどんな魅力を引き立てたかったんですか?

巨樹;実は今回このパフェを作るにあたって、半年前からカカオ豆の選定をしていました。インドネシア、ガーナ、エクアドル、ベネズエラなどをメインにいくつかの農園のものをチェックしましたね。

Casey:そんな前から構想してたんですか!普段よりさらに気合いが入ってますね

巨樹:カカオはもともと中南米にあったもので、今から5000年以上前には使われていました。ただ皆さんが普段食べるようなカカオは、ここ200年くらいで西洋諸国がプランテーションを作ったところで収穫されているものがほとんどなので、本当にずっとカカオと暮らしてきた人々じゃない人たちが作っているんですよね。

Casey:15世紀末からの大航海時代に西洋人がアメリカを「発見」し、そこから植民地主義の時代の中で作られた産業ですね。

巨樹:インドネシアはアジアですし、ガーナはアフリカです。我々日本人はチョコレートといえばガーナと思いがちですが、本来ガーナにはアメリカ原産であるカカオという植物はなかったんです。なので、素材をよりリスペクトするという意味で、原産地である中南米がいいと思い、今回はベネズエラ産のカカオを使うことに決めました。

Casey:カカオ栽培に耐える・適した土地での生産は拡大しましたが、カカオやチョコレート自体の物語を味わうという意味では、やはり中南米がベストですよね。
そしてベネズエラ産で選んだカカオ豆の特徴はどんなところですか?

巨樹:素晴らしいベリーのような果実感と、余韻が華やかに抜けていくのが特徴だと感じました。このベリー感も個性的で、ストロベリーのような軽い感じではなく、凝縮されていて香りが強いベリー。フランボワーズの方が近いですが、もう少しくすんだ酸味と甘味があります。一番近いものはクランベリーだと思ったので、今回はクランベリーを使いました。

Casey:「くすんだ」というのが面白い表現ですね。クランベリーは凝縮した酸味と甘味を確かに感じますが。

巨樹:この「くすみ」がクランベリーだけだとまだ足りなかったんです。なので今回はドライフルーツのクランベリーにハマナスの花を加えました。

Casey:ハマナスですか。あまり馴染みがないですが、どんなお花なんですか?

巨樹:東アジア原産のバラのようなお花で、ハーブティーにして飲まれたりします。玫瑰花といえばわかる人もいるかもしれませんね。バラ科の持っている花のくすんだ香りをクランベリーに足したら、ベネズエラのカカオが持つベリー感に近づいたんです。

Casey:くすんだベリー感を表現したということですね。ハマナスという引き出しがあるのがすごいですね(笑)

巨樹:そして凍頂烏龍。烏龍茶は中国の発酵茶ですが、凍頂烏龍は台湾のお茶ですね。日本でよく飲む烏龍茶はクリアで、麦茶のような味わいですが、本来は乳酸発酵してたりすると華やかで長い余韻があるんですよ。凍頂烏龍を単体で飲むとハーブティーや華やかな紅茶のような印象なのですが、紅茶にはない独特なフルーティさが残るんです。

Casey:凍頂烏龍茶なんだか字面に覚えがあると思ったら、前に中国茶の専門店で飲んだことあります!確かに香りが豊かだった印象が残ってます。

巨樹:本当ですか!台湾だと結構メジャーなお茶なのでね。
凍頂烏龍も先ほどのハマナスのように、少し香りにノイズがあるんです。乳香というか、ざわざわする感じというか。僕はチョコレートをフルーティと表現しましたが、瑞々しくて爽やかな余韻があるわけではなくて、ざわざわしながら口の中でカカオマスが溶け広がっていき、鼻から抜けるアタックの香りから余韻に移り変わるまでの時差が存在するんです。

Casey:ノイズというのは面白い表現ですね。クリアじゃない、複雑さなのでしょうか。そして香りの広がりに時差があるというのは一般的には奥行きがあると表現できるような。

巨樹:そうですね。チョコレートも最初は華やかな香りが広がるのですが、舌から徐々に上がってくる香りにラグがあって、ザザザという雑音があるようなイメージなんです。
なのでクリアなものではなくクランベリー+ハマナスや凍頂烏龍を合わせることで、同じ周波数だからチョコレートの余韻を拡張してくれるんです。

Casey:1月のパフェでは2種類のクリームの粘度の違いを使って余韻を伸ばしていましたが、今回はチョコレートの余韻が凍頂烏龍に移り変わっていく感じですかね。
ワインに例えるとフルーティな第1アロマから、香ばしさや深みのある第2アロマ、第3アロマに移り変わるような。

巨樹:そのイメージです!


香りの広がりをチューニング

Casey:パフェのビジュアルを見ると、異なるテクスチャーのパーツがいっぱい入ってるなと思ったんですよね。上にはもったりとしたクリームがあって、ザクザクとしたメレンゲのパーツもあれば、ジュレなんかも見えますよね。

巨樹:鋭いですね!今回はビーントゥバーで全て僕の手で作っているので、色々な味わいを楽しんでいただけるように工夫しました。
このパフェに使っているベネズエラ産カカオの特徴は、ファーストインパクトでやってくるフルーティな香りです。ただ、それは長い余韻を作ることはできない。一番上にチョコソースやチョコレートを削ったものを乗せているんですが、これは始めから溶けやすいので、ファーストインパクトを感じやすいんです。
次にやってくるとろ〜っとしたクリームのパーツですが、不均一に生クリームと合わせたパーツです。

Casey:面白い!すぐ溶ければ香りは発散しやすいし、同じ油分であるチョコレートでも、融解速度の違いで香りのグラデーションをつけているんですね。
そして不均一に混ぜたクリームも、前回のコクの話とも繋がりそう。

巨樹:そういう要素もありますね!より具体的にいうと、きちんと混ぜてしまうと乳化が完了してしまうんですね。そうするとカカオの油分の表面に乳脂肪分が付き、香りをマスキングしてしまうんです。それではファーストインパクトを感じにくいですからね。
ただ、粒子としては均一ではないので、しばらくすると分解してしまいます。なのでこのクリームは注文が入った段階で混ぜ合わせるようにしています。
カカオのダイレクトな香りも残しつつ、乳脂肪の持つコクもしっかりと活きてくるんです。
そしてここにも凍頂烏龍があるので、余韻も長くなります。

Casey:これはまさにパフェバーならではの工夫ですね。ライブ感を楽しみながら、賞味期限の短いものをその場で味わえる。12月パフェの濃厚すぎて溶けやすいピスタチオアイスみたいですね!

巨樹:クリームの下にはチョコレートのアイスとメレンゲが入っているんですけど、カカオの風味も冷たくしたときやメレンゲにして焼いたときでそれぞれ違った広がりになるんです。
下にはまたチョコレートのクリームがあるんですが、これは一晩置いてしっかり乳化させたものです。そうすると今度は凍頂烏龍の香りの方が強く出てくるようになります。口の中で溶けるのに時間がかかるパーツになるほど、香りの広がりに広がりに重厚感が出てくるのもポイントです。

Casey:パフェを縦の時間軸でみたときに、上の方にはフルーティに香るパーツがあり、下に行くにつれて凍頂烏龍の香りをより感じるようなパーツに変わっていくんですね。冒頭の説明が良く分かります。

巨樹:一番下のパーツはカカオパルプを使ったジュレなんですけど、ここにハマナスの香りを足しています。なので一番最後まで一貫したノイズ感があると思います。

Casey:去年のパフェでも出てきたパルプのジュレですが、今回はハマナスが加わるんですね。

巨樹:一番最後のジュレだけ食べる人はいなくて、必ず上のクリームなどを食べてから辿り着きます。最後にフレッシュなジュレのパーツが出てくるとチューニングがズレてしまうんです。僕としては全体的にステレオにまとまったイメージですね。

Csaey:ノイズだったりステレオという表現が出てくるのは面白いですね。巨樹さんの中でのイメージが伝わってきます!


チョコレートにまつわる苦い現実

Casey:今回はRemake easyとして初めての取り組みであるビーントゥバーチョコレートですが、どのような思いを込めて作っているのでしょうか。以前巨樹さんがXでも話していたように、チョコレート業界や生産者が抱える課題はどんなものがありますか?

巨樹:これは話すと長くなりますし、少しくらい話題にもなってしまいます。
ベネズエラ含めカカオ生産国が抱える問題は数多くあります。まずは賃金が低くて、1日働いても1〜2$しか稼げないことがほとんどです。働いてもお金が稼げないので、人数を増やそうということで、児童労働も問題になっています。
そもそもカカオ農家の多くは自分たちが作っているカカオがどんなものなのか良くわかっていないし、チョコレートを食べないまま一生を終える人も少なくありません。
まずはそういった問題を普段チョコレートを食べる我々は知らないといけないですよね。

Casey:南北問題ですよね。植民地時代に宗主国で需要がある原料生産の拠点として、欧米から見て南にあたる途上国にプランテーションが作られた。植民地主義こそは無くなったけど、モノカルチャーに寄ってしまった途上国では工業や経済が発展しづらく、先進国との格差が埋まらなかったり、人権問題・環境問題にも派生している。
チョコレートもまさにこういった問題を抱えていますよね。

巨樹:そうです。チョコレートに関してもう少し踏み込んで見ると、先進国ではチョコレートは売れるから、質よりも量が重視されます。するとどんどんカカオ生産者は買い叩かれるし、先進国では素材の品質を誤魔化すためにブレンドの技法が発達していきます。この大量生産型の考えが主流になってしまうと、さらに生産者の顔は見えなくなってしまいますよね。
ビーントゥバーの考え方はそうではなくて、1つの農園に注目して、きちんとした価格で買って、そのよさを活かしてチョコレートを作ろうという取り組みですね。今回はRemake easyとしても初めて挑戦してみました。

Casey:本当に意義のある挑戦ですよね。会員制パフェバーとして、林巨樹としてチョコレートの付加価値を高めていけば、食べ手も納得できるし意識も変わっていくと思います。
チョコレート業界が変わっていかないと生産者がどんどん消えていって将来チョコレートが気軽に食べられなくなるかもしれない。Remake easyが掲げるビジョンでもある「おいしいをずっと」を実践していますね。

巨樹:そうですね。「おいしいをずっと」にも込めた思いですが、やはりサステナブルじゃないとどんなに良いものでも続いていかないんです。今回のビーントゥバーの取り組みで少しでもチョコレートの背景に潜む問題に目が向いてくれたら良いなと思っています。



太古からの手紙をパフェグラスに

Casey:チョコレート業界の話はもっと聞きたいところですが、また何かの機会にぜひお願いします...!!
最後になりますが、改めて2月限定パフェの世界観だったり、どんなイメージを持っているか聞かせてください。

巨樹:このパフェを作るにあたって改めてカカオの歴史や文化に触れていく中で、原産地の方々が太古にカカオに触れていたときはどんな気持ちだったのか考えるようになりました。
中南米のあたりではカカオを通貨に使っていた地域もありますし、そんな価値があるものをすりつぶして飲んでいた。アステカの皇帝がカカオをすりつぶしたものを金の杯に入れてうやうやしく飲んでいたなんて話もあります。

Casey:うやうやしくですか(笑) 現代の僕たちだと想像しづらいですよね。

巨樹:この頃はチョコレートのように食べる技術はなかったので、よりフレッシュなカカオをすりつぶす中で油分が出てきてペーストになっていたのではないかと思います。つまりはもっとフルーツに近くて、華やかで、国の発展を感じさせるような特別なものだったんじゃないかなと。

Casey:なるほど、ゆえに今回はフルーティさや華やかさを重視していたわけですね。

巨樹:そうです。先ほどはステレオなんていい方もしましたけど、そんな太古からの手紙が届いたというようなイメージを持っているんです。彼らが触れたカカオの物語を、僕らが今口にしている。この世界観や時代の流れを皆さんにも感じていただけたら嬉しいですね。

Casey:手紙という表現、良いですね。去年の4月の「パパイヤとエスプレッソのオペラパフェ」もマヤ文明をイメージして作っていて、近い地域の話ですが、だいぶアプローチが違いますよね。
前回はもっとエキゾチックなイメージだったけど、今回はむしろメソアメリカを身近に感じるというか、寄り添ってる気がしますね。タイムマシンに乗って当時の人たちに会いにいくような感覚を僕は覚えました。

巨樹:おお〜良いですね!

Casey:パフェとしても面白く、有意義なお話しをありがとうございました!食べるのが楽しみです。

巨樹:こちらこそありがとうございました!楽しみにしていてください。