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【製本記】 かえるの哲学

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『かえるの哲学』(アーノルド・ローベル 文・絵/三木卓 訳)丸製上製・半革装ができるまで
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#三木卓

【製本記】 かえるの哲学 07 | これが文学者というものか

背継ぎの素材を用意する。『かえるの哲学』には革を使うことにした。インド産の山羊皮で、イギリスで製革されたものだ。製本には牛革や豚革なども用いられるが、柔らかく風合いに富む山羊革が最良とされる。 革剥(す)き職人さんに「コバ」と呼ばれる折り返し部分を機械剥きしてもらったあと、さらに革剥き専用の包丁を使って手作業で仕上げる。背から平はスムースに、折り返しはできるだけ薄く。なだらかに、なだらかに。 一枚革で全体をくるむ「総革装」が本の正装だとすると、背を革で継ぐ「半革装」はやや