マガジンのカバー画像

【製本記】 かえるの哲学

9
『かえるの哲学』(アーノルド・ローベル 文・絵/三木卓 訳)丸製上製・半革装ができるまで
運営しているクリエイター

#美篶堂

【製本記】 かえるの哲学 03 | 職人ことばは粋なれど

目引きした穴を使って『かえるの哲学』を綴じていこう。麻糸を用意し、蜜蝋の上を数回すべらせて蝋引きする。製本用の先の丸い針に通し、するりと抜けないように針の根もとで留める。いざ、かがりはじめ。 この本は「フレンチ・ソーイング」という手法でかがることにした。これはわたしが最初に覚えた糸かがりで、ロンドンの製本教室で習ったものだ。フレンチと聞いて、教室の誰かが「フランス生まれの手法ってことですね?」と尋ねた。すると、熟練の製本職人である先生は「知らん」と答えた。 この正直な職人