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ガラスリユースの可能性を探求する実践プロジェクトが始動!@AGC協創空間AO

※参加者は引き続き募集中!
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ReLinkが今回訪れたのは、
神奈川県横浜市にあるAGC横浜テクニカルセンター。
ここは、世界最大級のガラス大量生産を行う
AGCの技術開発の中心拠点。
多彩な知識を持った研究者や技術者の方々が集うこの場所に、
その知識を最大限に活かし、
ガラスの未来について探究する人がいます。
訪れたきっかけは、
ガラスの大量生産メーカーであるAGCが
「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の実現に向けて
どんな挑戦しているのか、知りたいと思ったこと。
実際に研究者や技術者の方々と話すうちに、
ガラスという素材の奥深さ、
そしてそれを取り巻く社会や環境の課題が見えてきました。
ガラスはただの透明な素材ではなく、
地球から生まれた「資源」そのもの。
そして、使い捨てではなく、
新しい形で生かす可能性に満ちた存在。
AGCの取り組みを通じて、
私たちは「ものづくりのこれから」を考えさせられました。

この先の未来、ガラスはどのように生まれ変わるのか。
そして、私たちはそこにどう関わっていけるのか。
そのヒントを、みなさんと一緒に探っていきたいと思います。




共にガラスに向き合う「仲間」を知る。


【あなたならどれを選ぶ?】あなたを表すガラスを選び自己紹介をする

初めてAGCを訪れるメンバーも多く、若干そわそわした雰囲気の中、会議室に入ると、机の上には様々な形をしたガラスがキラキラと光っています。

様々な形をしたガラスたち

席に着くと、自己紹介が始まります。
お題は「机の上に置かれたガラスの中から、自分を一番表していると思うものを選び、理由と共に自己紹介をする」。ガラスを扱う会社だからこそできるとてもユニークなワークショップのはじまりでした。

【AGCの異端児?】今日の講師のおふたり

中川浩司さん
ひとりめは、技術本部企画部協創推進グループの中川さん。
サステナビリティの推進を担い、環境負荷低減や資源循環の新たな可能性を模索する様々なプロジェクトを推進しています。従来の大量生産・大量消費のガラス産業の在り方に疑問を抱き、「資源としてのガラス」の価値を見直す取り組みを続けます。

河合洋平さん
ふたりめは、技術本部企画部協創推進グループの河合さん。
これまでに様々な最先端技術の研究開発に従事。その一方で、クリエイターとの協創プロジェクトを推進し、社内で 「クリエイティブな思考を共に学ぶコミュニティ活動」 を立ち上げるなど、技術と創造性を掛け合わせた新しい価値創造にも取り組んでいます。

河合さんがつくった「空を閉じ込めたガラス」

AGCによる協創空間AOで「ガラス」を知る。

協創空間AO(アオ/AGC OPEN SQUARE)は、AGCの新たな創造拠点として誕生しました。新たな価値を創り出していく、開かれた空間であることを示す「AGC OPEN SQUARE」。名称はその頭文字をとって「AO」としました。100年以上、向き合ってきた「素材」への視点や技術を「ひらく」。これからもお客様と一緒に新たな地平を「ひらく」。「AO」は、多様な素材や技術、アイデアをつなぎ合わせ、訪れる皆様と共に、新しい未来を描いていくことを目指しています。

【AO Lab.】 思いを形にする実験の場で技術を学ぶ

社内外の仲間と協創テーマに沿って様々な"試 す"を実践するAO Lab.の1つサステナ・ラボ。 様々な活動や実際の展示に触れながら気になっ たものを紹介。

ガラスでできた「人工珪砂」

「人工珪砂」に触れる
ガラスだけど、素手で触れても安全。

スマートフォン用ガラスの廃棄問題を解決するため、ガラスを細かく砕いて砂にする「人工珪砂」の開発。環境省の情報をもとに、専用の粉砕機を使って角のない安全な砂を作り、海岸再生への活用を検討しています。実験では、自然の砂と変わらず海洋生物にも受け入れられることを確認したそう。さらに、CO₂削減につながる「ブルーカーボン」の仕組みを取り入れ、持続可能なリサイクルの実現を目指しています。

上勝町のゼロ・ウェイストセンター

上勝町 ゼロウェイスト リユースの取り組み
日本では分別されない「ガラス・陶磁器くず」

徳島県上勝町では、廃棄物ゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト」政策が進められています。町民は13種類45分別を実施し、ごみ削減に努めた結果、リサイクル率80%以上を達成しています。
しかし、リユースの観点では、陶器やガラスのくずが一括して廃棄される問題が指摘されていました。分別が適切に行われないことで、ガラスの再利用が難しくなり、資源の有効活用が十分に進んでいないのです。

社会をより豊かにする様々な技能を持ったガラス

最先端の素材や技術、それらを活かした新しい機能などが展示されている【AO Studio.】も見学させて頂きました。最新技術に触れながら、インスピレーションを広げ、未来につながるアイデアを発見する場です。ここで内容をお見せすることはできませんが、今まで知らなかったガラスの使い方や、発想を広げるワークショップ形式の実践など、私たちのまだ知らないガラスの魅力的な世界が広がっていました。

AO Studio. イメージ画像(AGC公式サイトより)

ガラスの廃棄に関わる「課題」を知る。

板ガラスをリサイクルすることの意義とは?

板ガラスの製造において、廃ガラスを原料として活用することには大きな意義がある、と中川さんは言います。板ガラスの主原料である天然資源の使用を削減できるだけでなく、CO2排出量の抑制や産業廃棄物の埋立量の削減にも貢献します。
具体的には、1トンの廃ガラスをリサイクルすることで、天然資源の利用を1.2t、CO2の排出を0.6t、産業廃棄物の埋立を1.0t削減することができるそうです。

使用済みガラスリサイクルの取り組み

ガラスのリサイクルは、建築、自動車、太陽光パネルといったさまざまな分野で課題を抱えていますが、適切な回収と選別処理を行うことで、板ガラスへの水平リサイクルが可能となります。

[建築分野]
建築解体時に発生するガラスの大半は、板ガラスの原料として有効活用されていません。しかし、適切に取り外し、品質を確保したうえで選別処理を行うことで、板ガラスへの水平リサイクルが可能になります。現時点では十分な回収システムが整備されておらず、今後の大きな課題となっています。

[自動車分野]
廃車解体時、ガラスは取り外されずに車体と一緒にプレスされ、シュレッダーダストとして処理されています。しかし、適切に取り外し、選別処理を行えば、板ガラスへのリサイクルが可能です。現在は、まずAGC内の製造工程で発生する廃ガラスをリサイクルすることから取り組みを進めています。

[太陽光パネル分野]
AGCはすでに太陽光パネル用カバーガラスの生産を停止していますが、2030年以降には大量の使用済みパネルが廃棄されると予測されています。そのため、リサイクルの必要性が高まっています。現在、リサイクル可能なガラスの量や技術開発を進めており、2024年3月には日本で初めて、使用済み太陽光パネルのカバーガラスのリサイクル実証実験に成功しました。

今後の課題と展望
ガラスリサイクルを促進するためには、市中から廃ガラスを“効率的に回収し再資源化する システム=静脈と動脈の繋ぎ”の構築が必要となります。特に、自動車や太陽光パネルの廃ガラスについては、回収を促すインセンティブ制度などの検討が進んでいます。しかし、最も大きな課題は建築用ガラスのリサイクルであり、今後の制度設計や回収方法の確立が求められています。

AGCが提案する素材循環モデル

私たちが暮らす地球の未来を考えたとき、「限りある資源をどう大切に使い続けるか」という課題に向き合わなければなりません。AGCは、ガラスという素材を通して、より良い循環の仕組みをつくることを目指しています。その鍵となるのが 「カーボン・ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量をゼロにする取り組み)と 「サーキュラーエコノミー」(資源を無駄にせず、繰り返し活用する経済の仕組み)との両輪で考えることです。

今、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の向上によって、温室効果ガス排出の約55%は削減できると言われています。しかし、それだけでは足りません。残りの45%については、「ものづくり」そのものを変えていく必要がある のです。そこで、AGCはガラスをもっと上手にリサイクルし、自然の恵みを無駄なく使う方法を考えています。

「リサイクル」と「サーキュラーエコノミー」は違う?

リサイクルは、「使ったものを再資源化する」ことですが、これだけでは十分ではありません。サーキュラーエコノミーでは、そもそも 「ゴミを出さない設計」 をし、 「できるだけ長く使える仕組み」 をつくることが大切です。つまり、資源を大切にしながら、新しい価値を生み出していく経済のあり方なのです。

AGCの3つの取り組み

様々な活動・開発事例がある中で、印象的だった 取組を3つご紹介します。

① 自動車ガラスの新しい再利用方法
廃車になると、ガラスはそのまま車と一緒にプレスされ、細かく砕かれてしまいます。このままではリサイクルが難しいのが現状です。そこでAGCは、「熱圧着成形」という方法を使い、ガラスを新しい形に生まれ変わらせる技術を開発しました。こうすることで、CO₂の排出を抑えながら、ガラスを別の用途に再活用できます。また、車のアンテナ配線に使われる素材には 抗菌作用 もあり、今後さまざまな分野での活用が期待されています。

② スマホガラスを「海の砂」に戻す?
スマートフォンやタブレットのガラスは、頻繁に成分が変わるため、窯に戻してリサイクルするのが難しいと言われています。そこでAGCは、先にも紹介しました「ガラスを元の砂に戻す」 という発想にたどり着きました。この人工の砂を 「人工珪砂」 として、干潟の再生に活用する取り組みが進められています。
現在、干潟の砂が減少し、生態系が失われつつあります。自治体では、山を切り崩して砂を補充していますが、これによって 山の環境にも影響が出てしまう という問題があります。もし、不要になったガラスを干潟の砂として活用できれば、自然環境への負荷を抑えつつ、海の生態系を守ることができるかもしれません。

③ 「土地の記憶」を宿したガラスづくり
AGCは、「ガラスは単なる素材ではなく、地域の記憶や文化を映し出すもの」だと考えています。例えば、その土地の砂や鉱物を使ってガラスを作ると、その土地ならではの色や風合いが生まれます。この考え方を広めるために生まれたのが「素材のテロワールプロジェクト」 です。
それぞれの土地の砂から作られたガラスは、その地域の人々にとって特別なものになり、大切に使われ続けます。ガラスのような重い素材は 地産地消 するのが理想的。遠くから運ぶのではなく、その土地で生まれ、その土地で使われることで、資源の消費を最小限に抑えることができるのです。

素材の未来を考える ー AGCの挑戦

AGCは、限りある資源を無駄なく活かし、長期的に大切に使うことが求められる時代において、持続可能な循環型経済を実現するための取り組みを進めています。これまでの大量生産・大量消費の考え方を見直し、素材の使い方そのものを変えていくことを目指しています。AGCは、「サーキュラーエコノミー」という考え方を採用し、資源をできるだけ長く活かし、新しい価値を生み出すことを重要視しています。
その取り組みの一環として、AGCは素材メーカの視点で「新しいバタフライダ イアグラム」を描こうとしています。このサイクルでは、素材が生まれてから使われ、さらに新しい形に生まれ変わる流れが描かれています。AGCは、この循環の中でリサイクルしやすい設計を取り入れ、資源の使用を最小限に抑えながら新しい価値を創出することを目指しています。また、使用済みの素材は廃棄物ではなく「未来の資源」として捉えられ、適切な処理を通じて再利用される仕組みが求められています。

これからは消費者の意識の変化も重要です。これまでの「安くて大量に手に入るものが良い」という価値観から、「少し高くても長く使えるものを選ぶ」という考え方へシフトする必要があります。実際、アパレル業界ではオーガニックコットンやリサイクル素材が注目されており、環境に優しい素材が新たな価値として認識されています。同様に、ガラスを含むすべての素材が「環境と共存するもの」として循環し続ける仕組みを作ることが求められています。

地域協創によるガラス資源循環・回収実証実験プロジェクト in 諏訪

このプロジェクトは、地域で廃棄される砂を利用してガラスを製造することから始まり、環境を再生しながら地域の産業と文化を育てることを目指しています。
また、地域の人々の固定観念を変え、ガラスリサイクルの重要性を広めるため、太陽光パネルや瓶ガラスなどのリサイクル実験を行い、ガラスの再利用方法に関する理解を深めています。さらに、地域の解体業者と協力して、解体現場で出るガラスをリサイクルし、再び活用できる形で回収する仕組みを設計しています。
中川さんのビジョンは、地域の未来をその土地に根ざした循環型の経済で作り上げることです。「自続」という言葉に表されるように、「自ら関わり続けていける仕組み」の実現を目指し、技術と地域の力を結びつけていくことが重要だと考えています。彼の取り組みは、ガラス産業に限らず、地域社会全体の持続可能な発展に貢献するものです。

ReLink✖️AGCによる新しい空間デザインWS

解体された建物に、まだ使える資材はたくさん残っています。
しかし、それらの多くはそのまま捨てられてしまっています。
もし、それらを無駄にせず、もう一度活かすことができたら?
それが私たちの目指していることです。

過去の記憶を大切にしながら、新しい価値を生み出す。
そんな挑戦を一緒にしていきたいと思っています。
このワークショップでは、
AGCと共に、使われなくなった建材をどんな風に再生させるかを考え、
実際に手を動かして新しいカタチを作り出していきます。
ガラスという素材のリユースには難しさもありますが、
それをどう生かして新しいデザインや空間にできるのか、
一緒に考えていきましょう。

「使いにくいから無駄だ」と思うのではなく、
どうやったらその素材が新しい価値を生むことができるかを
考えることが大切です。
リユースは、ただものを再利用するだけではなく
、素材の価値を見つけて、次の使い方を考えることだと思います。

この合宿で、一緒に素材の新しい可能性を探し、
未来に繋がるものを作ってみませんか?

持続可能な社会に向けて、
第一歩をここ諏訪から始めましょう。

↓ イベント詳細・参加フォームはこちらから ↓

執筆 : 吉田恭子 / ReLink
写真 : 甲地未奈 / ReLink

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