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地上と土中の循環

小浜はここ数日、嵐のようなお天気が続いていました。

山から海へと水が流れ込み、海が膨らんでいた。
夜は霧も出ていて海がまるで山のような空気感で幻想的。
この梅雨の季節は、わたしたちの住む地球が水に包まれ、水に守られた星であることが色濃く感じられる。

先週末は“大地の再生”の矢野智徳さんのドキュメンタリー映画「杜人」(もりびと)を観に行きました。
“大地の再生”は、造園家で環境再生医の矢野さんが長年にわたる観察と実践の繰り返しを経て見出した、
地上と土中の空気と水の循環を回復する、環境再生方法。

彼の自然観察の視点はどこか懐かしく、深くうなずく。たましいが喜び、いまも響いています。

大地の再生の草刈りは「風の草刈り」と言われ、人が風となって草を刈っていく。
目には見えない風が、実は草木を削いでいるように。
風の動きのような刈り方をすることで、草の丈は必要以上に伸びなくなり、
地上だけでなく土中の風通しもよくなり、地上と土中の空気と水の循環が促される。

風の草刈りで良くなった地上の風通しは、植物を媒体として根の中に伝わる。
土中の根は密度のある細かい根となり、
根が細かくなることで地上の植物は葉を横に広げ、ほどよい高さになるのだそう。
空気と水の循環がよくなることで植生もより豊かになる。

大地に吹く風は、植物を通して土中の空気の動きへはたらきかけている。 地上と土中のひとつながりのはたらき。
これまで深くは意識してなかったけれど、目には見えない土中の動きがとても興味深い。

そして風の草刈りを早速見様見真似でやってみたのだけれど、こころとたましいが満たされるだけでなく、身体的にもかなり心地が良い。
いままでの草刈りって修行感あったんだな。

いま暮らしている星の家が建っている大地は、わたしと地球の接続点。
大切に育んでいきたいし、矢野さんが読んでいたのは、敷地内はもちろん敷地外の上流から下流、森から海までつながる流域の広い範囲だった。
全てのいのちのめぐりが循環するように、敷地であり場を整える。
矢野さんが人生を通して研磨してきた、深く広くいのちのはたらきを感じる感性と長い時間軸の視点、スコップやノコ鎌ひとつで主婦でも実践できる心地のよい方法は、未来につないでいきたい。

そしてわたしたちはいま、人間でありながら、風や水や大地や微生物の視点を含むようになってきているんだなと感じる。
それは、見には見えないものを在るとして扱っていく力であり、
同時にそれは、古来の人々がすでに知っていて、実践していたことのように思う。
いまは一度古代の叡智と切り離されたことで、その事が深く大切で、誇りであり、ほんとうの豊かさとして感じられるようになっている。

これからは、それぞれが目には見えない土中の水や空気や微生物、木々のネットワークを感じながら、
それぞれのいまあるホームを育んだり、全体性を持った視点での、あらたな建造物をつくることもますます育まれてくるだろうなと感じます。

いまのわたしたちの目と手とこころで。知恵と創造性で、まるであたらしい地球を創るように、いますでに与えられている環境を大切に育んでいでいきたい、ね。

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