両手に花でお手上げです

登場人物


・鈴木桜里(すずき おうり)
155cm/45kg 22歳
 
・鈴木杏里(すずき あんり)
178cm/60kg 25歳
 
・松寿丸伊吹(しょうじゅまる いぶき)
 180cm/65kg 25歳
 
・鈴木麻里(すずき まり)
 155cm/45kg 51歳
 
・鈴木千景(すずき ちかげ)
 150cm/40kg 15歳
 
猛(たける)
 175cm/55kg 22歳

あらすじ

 思春期に発覚した父親の浮気と兄の三股や現在の痴漢被害が原因で男性不信の桜里。恋愛には興味があるのになかなか最後までできずにいた。
 両親の離婚から10年振りに再会した兄と、その友人との出会いで変わっていく。

本編

プロローグ

・山の中に同じロッジがいくつも並んでいる。
・ロッジの中。
・ベッドに並んで座ってキスをしているバスローブ姿の桜里と猛。
・キスをしたまま猛が桜里のバスローブをずらす。
・ゾクっとする桜里。
・桜里:両腕を完全に伸ばして猛の胸を押して
「ごめん!やっぱり……」
・胸を押す腕の中で頭を下げたままの桜里。
苛立ったような呆れたような表情の猛。
・両足に腕をついて溜息を吐く猛。
猛:そのまま桜里を見ずに
「何回目だよ?」
・桜里:バスローブの合わせを直しながら
「ごめん……」
・猛:姿勢を変えずに
「別れよう」
・桜里:驚かずに落ち込んだ表情で
「分かった。今までごめんね」
・立ち上がる桜里。
ベッドに入る猛。
・猛:壁側を向いた状態で
「帰れよ。そういう約束だっただろ」
・ボストンバッグを開けようとしていた手を止めて傷ついた表情の桜里。
桜里:力なく
「うん」
 
(回想シーン)
・地元(静かな地方都市)の駅構内を歩く桜里と猛。旅行パンフレットが並んだ棚の前で立ち止まる猛。気づいて止まる桜里。
・猛:棚を指さして隣にいる桜里を見て
「どこがいい?」
・桜里:猛の顔や指、パンフレットから察して
「卒業旅行?」
・猛:うなずいて意味ありげに
「卒業しようか」
・桜里:ドキンとして体ごと猛に向き直って
「うん。
それなら山奥がいい。一人じゃ帰れないような所。今度こそ頑張るから、ダメだったら追い出して」
(回想シーン終わり)
 
・山道でバス停の時刻表を見る桜里。
・一日に数本で最終が20時の時刻表。
・桜里:(2時間後‥‥‥)
・桜里:ベンチに座って
(夏祭り、クリスマス、バレンタイン……またダメかあ。私このまま一生誰ともできないのかな)
・正面から突風が吹く。
・桜里:ギュッと目を閉じて慌てて
(コンタクト取れた)
・桜里:座ったまま上体を倒して目にハンカチを当てる
(泣いてないもん。逆さまつ毛なだけだもん)

再会

・ベンチの前に車が止まる。
・車から降りる杏里と伊吹。
・震えて眠っている桜里の膝辺りに1メートルくらい離れて立つ伊吹と、その後ろに隠れるように立つ杏里。伊吹はジーンズにスニーカー、足の付け根までのパーカー、杏里はジーンズにスニーカー、膝上の薄いダウン。杏里の顔は見えない。
・杏里:伊吹の後ろからためらいがちに心配そうに
「おーちゃん?」
・桜里:嫌そうに
「おとうさん?」
(熱とコンタクトが無いせいで視界がぼやけてる桜里)
・杏里:元気の無い優しい声で
「まだ朝晩は冷え込むし……外にいたら風邪をひくよ。うちが近いから休んでいって」
・伊吹:緊張気味に
「失礼します」
・桜里を姫抱きする伊吹
・桜里:伊吹に車まで運ばれながら
(風邪……。そういえば昼間のデートからちょっと寒気してた。じゃあ猛にゾクっとしたわけじゃなかったのかな)
・後部座席のドアをそっと閉めて運転席に乗る杏里。
・桜里:伊吹の膝枕で
(でもこの人は平気)
・桜里:運転席を見て
(それにお父さんも空気が優しくなった?)
・山の中にポツンとある家の前に車が止まる。
・杏里が車から降りる時に入ってきた冷気で目を覚ます桜里。
・桜里:伊吹に姫抱きされて
(なんだろう、なんか……)
・桜里:伊吹の肩に頭を預けて
(この感じ……)
 ・同じ山の中、ロッジとは別の大きめの家。客間(ベッドが2つある)に桜里を運ぶ伊吹と杏里。
・杏里が掛け布団を捲る。
・伊吹が桜里をベッドに座る姿勢に降ろして背中を支える。
・スプリングコートを脱がせる二人。
伊吹:スポーツドリンクのキャップを開けて
「とりあえず少し眠って、それからちゃんと着替えましょう」
・杏里:少し怒っているような表情で部屋を出ながら地声で
「向こうの様子を見てくるよ」
・嫌そうな顔になる桜里
・杏里:優しい表情になって明るい声で
「すぐ戻るからおーちゃんはしっかり休んでね」
両手でペットボトルを持って飲む桜里、隣に座って背中を支えてる伊吹
・桜里:(そういえばお父さんは私のこと『桜里』って呼んでた。
 ……お兄ちゃん?)
・桜里:ペットボトルから口を離して
(っていうか、この人だれ?)
・ペットボトルを机に置く伊吹。
・桜里:伊吹に姫抱きみたいに支えられてベッドに横になりながら
(この肩……)
枕に頭が乗っても伊吹の首に抱きついたままの桜里
・伊吹:固まって
「……桜里さん?」
・桜里:抱きつく力を強めて
「わたし男の人に触られるのがダメで、キスまでがやっとなんです。でもあなたは全然平気で」
桜里:抱きついたまま
「最後まで……してもらえませんか」
・ベッドに押し付けるように抱きしめてしまう伊吹。
・我に返ってなんとか踏みとどまる。
・伊吹:動揺と我慢してるのを隠せないまま
「こういうのは熱や勢いですることじゃ」
桜里:抱きついたままギュッと目を瞑って
「おねがい」
・首に唇が触れそうな感覚に抑えが効かなくなった伊吹
・桜里の服(上)を脱がせる
・桜里の胴体を両腕で抱きしめる伊吹。耳たぶを甘噛みしながら両手でブラのホックを外す
・上体を起こしてブラを取る伊吹(両腕を前に上げる桜里)。
・全部脱がせていく伊吹。
裸の桜里の足下で自分も上裸になってベルトとボタンを外す。
・桜里の両足を掴む。
・足を開いて間に行こうとしてぐっとこらえる。
・左膝は桜里の腰の横、右膝だけ桜里の足の間について床ドンの姿勢になる伊吹(苦しそう)。
桜里のおでこにキスをする伊吹。
・唇がこめかみを通って耳へ移動。
・首の付け根まで来たら右手で肩から腕を撫でる。
・手首まできた流れのまま鼠径部を撫でて人差し指で入り口をなぞる。
腰の横にある伊吹の左膝に右手を添える桜里
・伊吹:桜里の右手首を掴んで
・「じっとしてて。少しでも何かされたら止まれなくなるから」
・桜里:もどかしそうに
(止まるつもりなの?)
桜里:(そうだよね。 風邪うつっちゃう。それに軽い子って思われちゃう)
・一気に人差し指を入れる伊吹。
・桜里:(どうしよう。やめるって言わなきゃ)
・息を止めて伊吹に掴まる桜里。
(でも……気持ちいい)
中で動く伊吹の指に合わせて鼻に抜ける声が漏れる桜里。
・桜里:(今までのイヤな感じじゃなくゾワゾワする。気持ちいいのに怖い。自分がどうなっちゃうのかも、変なとこをこの人に見られるのも)
・桜里の腕が自分を押しのけようとしてるのを察してやめる伊吹。
・桜里に布団を掛ける伊吹。
・桜里:乱れた息で
(私が誘ったんだからって利用することもできるのに……)
眠る桜里。

杏里との和解

・目を覚ます桜里。
・カーテン越しの日差しで枕もとのバッグに気付く。
・スマホを取り出す。8時のロック画面。
体を起こして、使ってない方のベッドに置かれているパジャマに気付く。
・パジャマの上にメモ
『杏里からのプレゼントです。
 ドアに向かって右側が水回りです。シャワーもミネラルウォーターも好きに使って下さい。』
 
・桜里:嬉しそうに驚いて
(やっぱりお兄ちゃんだったんだ!)
・急いでバッグから下着と化粧ポーチを出してシャワーを浴び、コンタクトを入れる。
 
(回想シーン)
・畑の中の小さな家。麻里と桜里(11歳)が一緒にご飯を作っている。
・家の電話が鳴って麻里が出る。
麻里:「はい鈴木です。
 はい、……妻です。え……」
杏里(14歳。普通の男子、学ラン):玄関で靴を脱ぎながら
「ただいま」
・麻里:メモを取りながら
「はい、はい。すぐ伺います。ありがとうございます。失礼します」
手を洗った杏里がLDKに入ってくる。
・麻里:電話を切って杏里に助けを求めるように
「お父さんが事故に遭ったって」
・杏里:静かに驚いてからすぐ冷静になって
「お母さんは車を玄関まで持ってきて。戸締りとかは俺がしとくから」
・病室の廊下を歩く3人。会話が聞こえてくる。
・女性1:「どっちが浮気なの!?」
女性2:「はっきりしてよ!」
・麻里:ベッド周りのカーテンを勢いよく開けて
「どうも、妻です」
・驚く女性二人。
記入済みの離婚届。
・桜里:麻里に抱きついて
「お兄ちゃんもお父さんと一緒だよ。ちーちゃんがいるのに部活にも塾にも彼女がいるの」
・桜里:後ろにいる杏里に振り向いて
「お兄ちゃんはお父さんの方に行って!」
・麻里:信じられないという表情で
「そうなの?」
・杏里:慌てて
「いないよ!そんな暇ないから!」
・ほっとする麻里
「っていうかそもそも『ちーちゃんがいるのに』が意味分かんないし」
・麻里:すっと冷めた表情になって
「杏里はお父さんの方に行って」
《回想おわり》
 
自分の服を着て、部屋から出るドアの前で立ち止まる桜里。
・桜里:(ちゃんと言おう。『決めつけてごめんなさい。お母さんと引き離してごめんなさい』)
・桜里:ドアノブに手を掛けて止まって
(勝手に出ていいのかな?
 お兄ちゃんたちにしたら勝手に家の中を歩き回られてることになるんだよね)
・3回ノックをする桜里。
・ドアから顔を出して様子を見る桜里(そのすぐ向こうがホール兼リビング。L字に置かれたソアに座っている伊吹と杏里)
・杏里:「おはよう。ごはん食べられそう?」
・桜里:ドアの向こうからの声に部屋から出て
「お兄ちゃ……」
・桜里:固まった表情で首をかしげて
「ん?」
・杏里がソファから立ち上がって桜里の方を向いている。(大人かわいい部屋着、ゆるふわなマッシュに右側だけヘアピン)
・杏里:桜里の姿を見てしゅんとして
「俺からのパジャマは……着たくなかった?」
・桜里:(『俺』なんだ)って思いながら慌てて
「ううん!起きたら朝だったから。
 途中で起きたら使わせてもらってた。ありがとう」
 
同時にうかがうように
杏里と桜里:「「怒ってないの?」」
・見つめあって少し首をかしげて動かない二人。
・伊吹:ソファから立ち上がって
「ご飯作ってきますね。ゆっくりしていて下さい」
・杏里は元の位置に、少し離れてソファに座っている桜里。
・杏里:萌え袖を膝の上でもじもじしながら
「あれから本人たちと話してみて」
 
(回想シーン)
・夕暮れのテニスコート。ジャージ姿の杏里とマネージャーが片付けをしている。
・杏里:ボールのカゴを持ったマネージャーに向かって
「ねえ、今度うちの家族に会ってくれない?」
・マネージャー:期待と喜びの表情で
「え、なんで?」
杏里:マネージャーの期待に気付かずに
「『部活に彼女がいるんでしょ』って妹に言われて。ただの友達だよって証言してくれない?」
・マネージャー:ショックを隠しつつ
「毎日一緒に帰ってくれるのは、友達だから?」
・杏里:すんなり頷いて
「あのコンビニの前って治安悪いし、同じ方向なの俺だけだし」
マネージャー:ふつふつと湧き上がる怒りを抑えて
「運動苦手なのに、こんな半端な時期に、なんでマネージャーでもいいからってテニス部に入ったと思ってるの?」
・杏里:不思議そうに
「観るのが好きになったからって言ってた」
言い終わらないうちにカゴに入っていたボールを杏里に向かってぶちまけるマネージャー
・杏里:無言で去っていくマネージャー。驚きとショックと痛みを感じながら
「……ええ?」
・塾の休憩室。
・杏里:自動販売機でジュースを買いながら
(『塾に』ってことは学校が違うんだ。一緒にいるところをおーちゃんが見たか間接的に関わりがあるか……。誰だ?)
・落ち込んだ様子の女子生徒が近づいてくる。
女子生徒:「あんりー、面談終わった?」
・向き合って座る杏里と落ち込んでいる女子生徒。テーブルの上に女子生徒の模試結果(判定C)
・「夏には部活を引退した子たちが追い上げてくるから、今でCは厳しいって」
・杏里:優しく
「無理することないよ。元々文系なんだし南高の方が向いてるんじゃない?
どうして北高にこだわるの?」
・女子生徒:意外なことを言われたように
「だって杏里は北高でしょ?」
・杏里:不思議そうに
「うん。そうだけど?」
・女子生徒:ちょっと考えて
「いつも私の隣に座るのって、なんで?」
・杏里:言い辛そうに
「机を……ちょっと広めに使うでしょ。俺はむしろ使わない方だから」
・女子生徒:ちょっと気まずさも混ざりつつ
「それは……ごめん、気を付ける。
 でもそれくらい直接言ってくれればよかったし、せめて志望校変えようかなって言った時に私たちそういうんじゃないっていうのは言ってほしかった!」
・杏里:「できあがるノートは凄く見やすくてみんな助かってるし、あの時『理由は訊かないでね』って言っ」
・言い終わらないうちに判定結果をくしゃくしゃに丸めて杏里に投げつけて立ち去る女子生徒。
杏里:「たぁ……」
・千景の家(一戸建て)の前で悩む杏里。怯えながらチャイムを鳴らす。
・千景:杏里を中へ促すようにドアを開けて心配そうに
「どうしたの?チャイムなんて鳴らして。普通に入ってくればいいのに」
・杏里:チャイムを鳴らした位置から動かずに
「あのさ……」
・千景:優しく
「聞いたよ。おじさんとおばさんのこと。でも私たちには関係無いでしょ」
杏里:勇気を出して
「俺がここにDS置いとくのってなんでだと思ってる?」
・千景:恥ずかしそうに
「え?」
・杏里:また怒られるかもしれない恐怖を感じつつ
「おーちゃんって目が弱いから見せないようにってだけなんだけど……」
・千景:ショックと混乱で
「だったら……なんで『二人の森にしよう』なんて言ったの?」
・杏里:「プレステがあるから買ってもらえないってちーちゃん言ってたからちょうどいいかなって」
・勢いよくドアを閉める千景。
・杏里:少しおいて
(まさか……)
・杏里:焦って
(癒しの森が!)
・ドアを開けようとする杏里。鍵が掛かってる。
・杏里:ドア越しに
「ちーちゃん?落ち着いて!ちーちゃ」
・ドアが開いて鼻をぶつける杏里。
・千景:無表情でDSを杏里の胸に押し付けて
「私本当はマイクラ派。
 おじさんの方に行くんでしょ?
さようなら。もういとこでもなんでもないから」
・乱暴にドアが閉められる。
・杏里:自分の部屋でDSを起動して
(初期化されてる……)
《回想おわり》
 
(杏里の言葉に合わせた回想シーン)
・杏里:「それでお母さんとおーちゃんにも何を言っても怒らせちゃいそうで何も言えなくなって。買ってあった誕生日プレゼントのヘアピンも渡せなくなったからなんとなく使ってみたんだ。そしたら意外と似合って、これなら女の子たちに変に期待させちゃうこともなくなるかなって思って今に至ります。」
桜里:(たしかに似合ってる)と思いながら
「ってことは気持ちとしては?
 お姉ちゃんって呼んだ方がいいわけではないの?」
・杏里:かわいく控えめに明るく
「どっちでもいいよ。VRで3パターン試したけどどれも実践したいと思わなかったんだよね」
・桜里:戸惑い気味に
(……え?)
杏里:自分と桜里の間の座面に両手をついて少し桜里に顔を近づけて
「俺のことより、どうしてあの子と付き合うことにしたの?」
・桜里:「え?えっと、ずっと男の人が苦手だったんだけど、ちょっと大丈夫かもって思えてきて、そうしたら猛からお試しでいいから付き合おうって言われて、引っ越した時からのお隣だし、お試しならって……」
・桜里:ん?って気付いて
「『あの子』って、猛を知ってるの?」
・杏里:元の姿勢に戻って
「時々様子を見に行ってたんだ。何か困ったことがあったら力になりたくて」
・杏里:ちょっと拗ねて
「10年以上、俺がいなくても全然困ってなさそうだったけど」
・桜里:「それなら声を掛けてくれればよかったのに。困ったことがなくても会いたいって話してた時とか」
・杏里:嬉しそうに驚いて
「会いたいって思ったことがあるの!?」
・桜里:ちょっとほっとして
(ずっと張り付いてたわけではないんだ)
・桜里:「買い物で疲れてベンチに座っていたら、お兄ちゃんと妹とお母さんっていう家族連れが通ったの」
ショッピングモールの通路に置かれているベンチに座っている麻里と桜里(15歳くらい)。桜里のセリフに合わせて場面が流れていく。場面の兄は10歳くらい、妹は6歳くらい。
・桜里:「妹が疲れて眠そうだったからお母さんが買い物袋をお兄ちゃんに渡しておんぶするのを見て、お兄ちゃんも私たちの後ろであんな顔してたのかなって」
荷物を持って我慢してる男の子の顔。
杏里:意外そうに
「その子がどんな顔してたのか分からないけど、俺はそういう時嬉しかったよ」
・桜里:「嬉しい?」
・杏里:静かにうなずいて
「お父さんが帰って来なくても俺がいればいいんだって、頼られてるのが嬉しかった」
・杏里:スリッパを脱いでソファの座面に足をのせて膝を抱えて
「実際にはむしろ嫌われてたわけだけど」
杏里:そのままの姿勢で顔だけ桜里に向けて
「いつから三股してるって思ってたの?」
・桜里:「あの年の年度の変わり目くらい。『杏里の妹』ってそれぞれに声を掛けられることが何回かあって、どっちも付き合ってる風の話し方で」
杏里:「言ってくれればよかったのに」
・桜里:首を振って
「お兄ちゃん優しいから二人とも誤解してるだけなんだろうなって思ってた。お兄ちゃんが良いと思うタイミングや言い方で誤解を解くだろうって。
 でもお父さんのことがあって、ショックでやっぱりお兄ちゃんもそうなんだとしか思えなくなって」
・桜里:ソファから立ち上がって腰から頭を下げて
「ごめんなさい!
 それにそれまでは本当にお兄ちゃんのことが大好きだったよ」
・杏里:嬉しそうに驚いてから優しい表情になって
「座って?
 彼女たちにしてみれば誤解じゃなかったんだから」
・桜里:頭を下げたまま
「そのことも!
 あの後それぞれから愚痴られて、やっぱり誤解だったんじゃないかって思ったの。でもお兄ちゃんが別れたくなって初めから無かったことにしようとしてる言い訳だって二人とも思ってて、違うかもって言ったら余計に怒らせちゃって。
 お兄ちゃんにひどいこと言ったのに更に困らせることしちゃったなんて言えなかったのと、完全には信じられないのもあって」
杏里:穏やかに
「二人にそう思われてるのは知ってたけど、俺はお母さんとおーちゃんが出て行ってからお祖母ちゃんに預けられるだろうなって思ってたから、期待させたお詫びにそう思いたいならそれでいいやってそのままにしといたんだ。その方がスッキリするだろうし、俺は悪者にされてもすぐに転校だから」
・桜里:お辞儀の姿勢で頭だけ上げて
「え?」
杏里:「父さんが奥さんのいない家に子供を置いとくと思う?」
・桜里:「男同士だし、お兄ちゃんなんでもできるし」
・杏里;あきらめたような見捨てるような表情で
「連れ込むのに邪魔だとしか思わないでしょ。あの人の場合は」
・桜里:状態を起こして口に手を当てて
「……」
桜里:「ごめんなさい。あんな状況でもお兄ちゃんはテストもテニスも相変わらず凄くて、新しい場所で私たちの面倒みるより残った方がお兄ちゃんのためだよねなんて……」
・杏里:座ったまま桜里の腕をそっと掴んでソファに座らせて
「大丈夫だよ。むしろ良かったと思ってる。そのおかげで伊吹に会えたし」
・視線を台所へ向ける杏里、つられて視線を動かす桜里。
食器を並べていて視線に気づく伊吹。
桜里:ハッとして(そうだあの人!)
「つまり同級生とかご近所さんってこと?」
・杏里:「高校からのね」
・杏里:楽しそうに
「ねえ、伊吹ってどう?」
・桜里:わかりやすく
「え!?」
・伊吹:「恋人がいたことはないから断言はできないけど、きっと大切にしてくれるよ」

伊吹との再会


・伊吹:台所とホールの境目まで来て
「どうかした?」
・杏里:落ち着いて
「ううん。ごめんね、片付けは俺がやるから」
・伊吹:「いいよ。10年振りだろ」
・流しの方へ戻る伊吹
・桜里:その背中を見て立ち上がる。
・杏里:桜里の意図が分からず
「おーちゃん?」
・吸い寄せられるように台所へ歩いていく桜里。
・気付いて振り向く伊吹。
伊吹の後ろに回り込む桜里。
・桜里:感動気味に
「この肩……」
・桜里:伊吹の腕を掴んで夢中で
「去年痴漢との間に割って入ってくれましたよね?」
伊吹:困ったように
「え?」
・助けを求めるように杏里を見る伊吹。
・杏里:明るく立ち上がって
「ねえ、おーちゃん、俺は残った方が俺のためって話したってことは、お母さんも怒ってないんだ?」
桜里:「え?うん」
・杏里:かわいい足取りで
「会いに行ってこよ~」
伊吹:「え……」
桜里:「え!?」
・桜里:玄関脇のハンガーラックに掛けてあった薄いダウンを取る杏里に向かって
「それなら私も一緒に帰……」
・杏里:靴箱の上に置いてある鍵を持って
「しばらく冷え込むからここにいた方がいいよ。下が車庫の部屋って温まらないでしょ。
 じゃあ行ってきまーす」
桜里:引き気味に
「うちの間取りまで知ってるんですか?」
・伊吹:「図面や中を見たわけではありません。
お店と車庫の上に居住スペースでしょう?配管を考えたらお店側に水回りだろうなって」
・桜里:「うちの前までは来ていたんですね」
・桜里:ハッとして
「それで助けてくれたんですか?
 すごいタイミングでしたけど、ずっと付いてたわけではないんですよね?」
伊吹:暗い表情で頷いて
「君を守っていたんじゃなくて犯人を張っていたんです。あの電車に悪質な痴漢が出るってSNSが多かったから杏里が犯人を割り出して。本当は君が被害に遭う前に片付けたかったんですが、ギリギリ間に合いませんでした」
・桜里:(探偵?刑事?)って思いながら
「どうやって……それ以前に私、あなたの名前も知らなくて」
伊吹:言いにくそうに
「伊吹です」
・桜里:「伊吹さんですか」
桜里を見ずにうなずく伊吹
・桜里:「伊吹なにさんですか?」
・伊吹:「伊吹が名前です。苗字は……松寿丸といいます」
固まる桜里
桜里:固まったままの表情で
「松寿丸さんって一世帯しかないんですよね?その松寿丸さん?」
伊吹:静かに
「今は三世帯です。祖父母の暮らしている実家と母が暮らしている東京とここと」
・桜里:「山脈まるごと持ってるっていう、あの松寿丸さん?」
伊吹:「まるごとではありません。少し欠けてます」
桜里:緊張した体と表情で
「わたし、やっぱり帰ります」
伊吹:心配そうに不思議そうに
「どうしてですか?」
・桜里:お化け屋敷にいるみたいに周りを警戒して
「何か壊したりしたらって思うと落ち着きません。素手で触っちゃいけない物とかもありそうだし」
・伊吹:「ありません。湧水を売っているだけで、どれだけ土地があっても水質保持のために他に何もできないんです。資産家みたいに見られて困っています。
せめて杏里が戻るまでここにいて下さい。お腹も空いてるでしょう?」
台所へ招く腕の動きをする伊吹に従う桜里。
桜里:(そういえば昨日晩ご飯食べてない)
・テーブルに3人分のパンケーキ(厚め)とイチゴの小鉢
嬉しそうに目が釘付けの桜里を横から優しくみる伊吹。
・手を合わせて二人同時に「いただきます」
桜里:おいしそうに噛んでから飲み込んで
「ふわしゅわでおいしいです!」
・伊吹:嬉しそうに
「食べられそうだったら杏里の分もお願いします」
・桜里:嬉しそうに
「いいんですか?ありがとうございます。
 兄がすみません。せっかく作ってくれたのに」
笑顔で首を振る伊吹。
・桜里:ハッとして
(何も謎が解けてないのに、こんな和んでていいのかな?)
桜里:パンケーキを切りながら
「あの、パンケーキなのって」
(私の好物だからですかって言うのも違ったら気を使わせちゃうし、いつもですかって言うのも『いつもこんなおしゃれな物食べてるんですか』ってトゲがあるみたいに思われらイヤだし)
・伊吹:パンケーキを切りながら
「消火に良い物とビタミンをと思って。
 元気になったらお昼はデミグラスソースのオムライスにしましょうね」
桜里:(やっぱり好きな食べ物も知ってるんだ。でもなんでお兄ちゃんじゃなく伊吹さんが作ってくれるの?
 さっき『伊吹に会えたし』ってお兄ちゃん言ってた。同じくらい優しさの塊な人に出会えて気が楽になったってこと?)
・桜里:ハッとして
(まって!伊吹さんは松寿丸の家はここを入れて3世帯って言った。でも昨日お兄ちゃんは『うちが近いから』って言った。私って伊吹さんにとって義理の妹になるってこと?)
伊吹:コロコロ変わる桜里の表情に気付いて
「桜里さん?」
・桜里:(待って。落ち着いて。順を追って。最初の疑問はなんだっけ)
・「あの、去年助けてくれた時、どうして兄は出てきてくれなかったんですか?
 伊吹さんもこっちに顔を向けてくれなかったし、急いでいなくなっちゃうし」
・伊吹:「杏里は会いたくないって言われるのが怖いって。
 昨日声を掛けたのは、知らない人に連れてかれるよりは嫌がられないだろうからです。俺一人じゃただの誘拐としか思えないでしょ?」
桜里:(誘拐はそうだけど、去年だって会えたら嬉しかったのに。私があんな言い方したせいだよね)
「伊吹さんはどうしてですか?」
・伊吹:動揺しながら目を伏せて
「なんて言ったらいいのか分からなくて」
首をかしげる桜里。
伊吹:「杏里に頼まれたって言って嫌がられたら杏里も傷つくし、俺まで避けられたら嫌だと思ったけど杏里と関係ないただの通りすがりだなんて嘘もつきたくなくて」
・言いたいことが今一よく分からない桜里。
・伊吹:勇気を振り絞って
「杏里といて自然と君のことを知っていって、気が付いたら好きになってたから」
・桜里:驚いてから照れながら
「私も去年の力強いのに強引じゃない動きや犯人にも必要以上に攻撃的じゃない空気と、昨日からの兄や私を想ってくれている様子にときめいていました」
・照れるような舞い上がるような表情の伊吹。
・桜里:表情を暗くして
「でも見ていたんですよね?私、助けてもらってから伊吹さんを気になっていたのに猛と……」
(あんなにお兄ちゃんを責めておいて、お父さんと同じなのは私の方だ)
・伊吹:穏やかに
「今、俺といたいと思ってくれているならそれでいいです」
・意外そうに伊吹を見つめる桜里。
・伊吹:「冷めないうちにどうぞ」
パンケーキを食べる伊吹。
・よく分かってないまま食事を再開する桜里。
手を合わせて二人同時に「ごちそうさまでした」
・桜里:「片付けは私がやります」
・伊吹:「休んでいて下さい」
・桜里:「もう寝過ぎと運動不足で眠れません」
・伊吹:「ずっと文化系の部活でしたよね?」
・桜里:「運動神経はないけど体を動かすのは好きなんです」
・桜里:(どうしよう。昨夜の続きがしたい。でも誰とでもするなんて思われたくないし、『ベッドで運動』って悪役がセクハラする時に言いそうな言葉でなんかヤダ!
 それにまた途中で怖くなったら伊吹さんに辛い思いをさせちゃう)
・チラッと息吹を見る桜里。伊吹と目が合う。
・伊吹:慌てて
「すみません!
 悪役がセクハラする時に言いそうなことを考えてました」
桜里:無防備に
「私もです」
伊吹:「えっ」
・桜里:少し面白そうに
「例えまで一緒」
・片付けられた食器類。
・桜里:浴衣姿で客室のドアからのぞいて
「お待たせしました」
・桜里:(待って、どっちのベッドを使うべき?
 机側は昨夜の汗が。でも今からだって汗かくし2つも私が汚すわけには)
桜里:ふと気付いて
「伊吹さんと兄って、昨日はどこで寝たんですか?」
・伊吹:「隣の部屋です。
 古い社員寮で、使われていなかったのを俺と杏里で買い取りました。俺たちは隣の部屋を使っていて、この部屋は二人に何かあった時に泊める用の部屋です」
・伊吹:机側のベッドに桜里を促して
「怖くなったらいつでも向こうのベッドに行っていいですからね」
・仰向けの桜里に膝を立てて跨って唇だけのキスをする伊吹。
・両肩をつかんで左頬にキスをする伊吹、背中に手を回して右を向く桜里。
・首筋へと唇を移動させて、浴衣から少し肩を出してそこにもキス。
浴衣の紐をほどいて背中に直接腕を回して抱きしめる伊吹(桜里に触ってるのは脇より上の部分だけ)。
・伊吹の胸に両手を当てようとする桜里。怖がられたと思って体を20センチくらい浮かせて離れる伊吹。
桜里:言いにくそうに
「あの……」
伊吹:優しく
「ここまでにしますか?」
・桜里:首を振って
「……脱いでほしいです」
・驚く伊吹。
桜里:慌てて
「温かくて気持ち良かったし、私だけ脱いでるのも恥ずかしいし」
上体を起こして逸る気持ちを抑えながらトレーナーを脱ぐ伊吹。
・脱いだらすぐに桜里が少し浮くくらいに抱きしめなおす(肋骨辺りまで密着)。
・桜里:背中に手を回して身を任せて
「幸せなのに落ち着かない、不思議な気持ちです」
下着に触れて桜里の目を見る伊吹。うなずく桜里。
・両手で下着を脱がせる伊吹。脱がしやすいように動きながらも浴衣で隠そうとする桜里。
・無理に見ようとしないで桜里の口にキスをする伊吹。
・舌を入れる。
指が一本入る。
・一度抜かれて二本入る。
・桜里:感じながら
(他の人とここまでしたことないから分からないけど、伊吹さんってたぶん上手なんだ。すごく気持ち良い)
・桜里:いきそうになりながら
(あ、また……この感じ)
・伊吹:桜里の頭を撫でながら
「大丈夫ですよ。怖いのは1回目だけです。次からは気持ち良くなりますから」
・桜里:伊吹の腕を両手で掴んで抜かせる。
「あの、もう大丈夫です!
 いい運動になりました。ありがとうございました」
慌てて自分のベッドに戻る桜里。
桜里:布団に潜って
(慣れてるし詳しい。やっぱり恋人がいたことないっていうのが嘘か、プロの人を呼んだことはあるんだ)
・伊吹が立ち上がる音が聞こえてビクッとなる桜里。
・桜里:ぎゅっと目をつぶって
(わかってる。私ひどいことしてる。でも)
桜里:ちょっと落ち着く
(でも?)
桜里:(私なんで逃げたんだろう?
 嘘をつかれたから?
 知らない恋人に妬いたから?
 プロの人と比べられたらって劣等感?
 いつもプロの人を呼んでるなら私って面倒だよね。っていうか今まさに辛い目に合わせてるし)
桜里:(そもそも今まで何も無いって方がおかしいでしょ。
結局男の人ってそういう生き物なのかな?
ううん、女の人だってそういう人はいるし。
 見放される前に一度経験しといた方がよかったかな。
 でもこのまま流されてその後で恋人が現れたりプロの人と比べてがっかりされたりしたら)
布団の中でさらに丸まる。
洗面所のドアを開ける伊吹。
・桜里:(それでも!)
思い切って起き上がる桜里。
桜里:「あの、私にやらせて下さい!」
伊吹:背を向けたまま頭だけ少し振り向いて
「……え?」
・桜里:一生懸命に
「私ばかり……その、気持ちよくしてもらって。
 ……っ、手でよければ!」
・伊吹:桜里に背を向けたまま
「大丈夫だから、心配しないで」
伊吹が慌てて洗面所に入って静かに閉まるドア。
桜里:ベッドの上で
(どうしよう。呆れられた?怒らせた?せめて胸でって言うべきだった?)
胸を掴むように片手で触る桜里。
・桜里:胸を触ったまま
(あれ?そういえば伊吹さん、一度も胸を触ってない?)
桜里:布団を肩まで掛けて胸を掴みながら
(もしかしてスレンダーな方が好み?どうしよう……)
・布団を頭まで上げる
目を覚ます桜里。
・桜里:スマホのロック画面を見て
(4時!?)
・桜里:うつ伏せでおでこをベッドにつけて
(頭痛い。もう熱のせいなのか寝過ぎでなのか悩みでなのか分かんない)
上体を起こす桜里。
・桜里:足元に置かれているパジャマを見て
(お兄ちゃんの……)
ドアをノックしてからホールをのぞく桜里(シャワーを浴びてパジャマを着ている)。
・ホールを挟んで見えるいろりの部屋(炭に火がついている)。
伊吹:囲炉裏の前に胡坐でリラックスした表情
「冷えてきたので鍋にしましょう。オムライスはまた今度」
・不安そうに伊吹を見る桜里。
・伊吹:桜里の視線の意味を勘違いして手で壁の向こうを示しながら
「洗濯物がたまってきましたよね。突き当りが洗濯室なので使って下さい」
・桜里:「ありがとうございます」
中に戻って洗濯物を持って洗濯室へ行く桜里。
・桜里:洗濯物を洗濯機に入れながら
(怒ってないの?)
・開いている洗濯室のドアがノックされる。
・振り返ると杏里。
桜里:「お兄ちゃん!お帰りなさい。いつ帰ってきたの?お母さんは?」
杏里:「ただいま。こっちに着いたのはお昼過ぎかな。伊吹なら大丈夫って言ったんだけど、二人っきりにしちゃダメって追い返された。ここに来たいけど土日は休めないって言うから明後日改めて迎えに行く」
・桜里:明るく
「そうなんだ」
杏里:「パジャマ着てくれたんだね」
・桜里:両手を広げて
「うん。ありがとう」
・杏里:不思議そうに胸の辺りを見て
「ねえ、おーちゃんってどんなブラつけてるの?」
桜里:びっくりして
「は!?」
杏里:「伊吹には3段ホックもクロスタイプも教えてあるけど、おーちゃん大き目だから何か自分なりの工夫とかしてるのかなって」
・桜里:とっさに両腕で胸を隠してから気付く
「『教えてある』って?」
杏里:なんでもないことのように
「脱がせ方」
・杏里:かわいく両手を合わせて
「実践は初めてだから多少苦戦しても多めに見てあげてね」
桜里:パニックと引く気持ちが混ざった顔で
「教えるって……」
杏里:引かれてることに気付かずに
「俺が動画を見てレポートにして。
伊吹はかなり早くからおーちゃんのことが好きだったから、浮気はしないって観ようとしなかったんだよ」
・桜里:驚きつつ納得して
(それで……!?)
杏里:少し真面目になって
「伊吹は色んな理由で注目されてる。噂好きが面白がるようなネタは提供したくないから、いざという時に困らないように教えておいたんだ。結局心変わりすることも魔が差すこともなく今まできたけどね」
・桜里:反省して
(そうなんだ。それなのに私……)
・杏里:楽しそうに紙を3枚桜里に渡して
「おーちゃんは逆に観た方がいいと思って、これ作ってみたよ」
・桜里:yes,noチャートが書かれた紙を見つめて
(……え?)
杏里:楽しそうに
「おーちゃんがどの辺で止まっちゃうのか分かんなかったんだけどお母さんに大分最初の方って聞いたから、そこに時間掛けてて怖くないって思えるような作品を集めてみたよ」
杏里:スマホを渡して
「これは動画の保存用だから好きに使っていいよ」
桜里:状況についていけずに
「え、そんな……っていうかわざわざこれ作ったの?3枚も……」
・杏里:単純に訂正と捕捉
「2枚目と3枚目は百合用だよ。タチ目線とネコ目線」
・桜里:純粋な驚きと疑問で
「お兄ちゃんは私と伊吹さんをくっつけたいわけじゃないんだ?」
杏里:「そりゃあくっついてくれたら嬉しいよ。伊吹には幸せになってほしいし、おーちゃんも伊吹となら幸せになれると思ってる。でも決めるのは二人だからね。
 誰を選んでも誰も選ばなくても関係ないよ。俺にとって伊吹は大事な友達でおーちゃんはかわいい妹。何も変わらない」
考え込む桜里。
杏里:紙を見てると思って
「何か気になるのあった?」
・桜里:「ううん」
桜里:(紙の内容自体は正直ちょっと引いてるけど、一週間働いて車でウチと往復してからこれ作ってくれたんだ)
「お兄ちゃんはいつだって私のこと考えてくれてたなって。昔も、ひどいこと言ってお母さんと引き離したのに今も。それなのに私はお父さんのしたことやちーちゃんたちの気持ちでお兄ちゃんへの態度を変えてた。
 ごめんなさい」
杏里:保護者の顔で桜里の頭に手を置いて
「伊吹は伊吹として、おーちゃんの目で見てあげてくれる?」
桜里:「うん」

伊吹との夜


・いろりの部屋の前に立つ桜里の泣きそうな顔に驚く伊吹。
・伊吹:驚いて立ち上がって
「どうしました?」
杏里を見る伊吹に優しく落ち着いた表情の杏里。
・桜里:「さっきは……」
伊吹:ほっとして
「そのことですか。
 大丈夫ですよ」
・伊吹:不安な表情になって
「それとも……やっぱり……向こうに戻りたいですか?」
・桜里:首を振って
「違うんです。伊吹さんを疑ってしまって……」
伊吹:両手を広げて
「信じられるまでなんでも訊いて下さい。ちゃんと答えますから」
・首を振ってから伊吹に抱き着く桜里。驚く杏里。
驚いて腕を広げたまま動かない伊吹。
・桜里:伊吹の胸に頬をしっかりと当てて目を閉じて
「こうした時のこの気持ちが、一番大切な私の答えです」
・杏里:無邪気に
「このままやる感じ?
 いろりは俺が見てるからお部屋でどうぞ」
桜里:「……」
・ベッドに並んで座る伊吹と桜里。
・桜里:「何度もごめんなさい。今度こそ最後まで逃げないから」
・伊吹:桜里を右腕で抱き寄せて
「最初から最後までしようなんて思ってないよ」
・伊吹:両腕で桜里を抱きしめて
「乗り越えなきゃいけない試練みたいに思わないで」
・桜里:伊吹の背中に両腕を回して
(初めてが伊吹さんで本当に良かった)
・口同士でキスをした状態でパジャマのボタンをはずす伊吹。
・桜里をベッドの中心に寝かせてズボンを脱がせる。
・ベッドと背中の間に両手を入れてブラをはずす。
・ある程度愛撫
・桜里:もどかしそうに
「細い人の方が好きですか?」
・伊吹:どうして急に言われたのか分かってない。
「特にそういうこだわりは無いですね。好きなタイプとかが出来上がる前に桜里さんを好きになってたので」
ときめく桜里。
・桜里:「じゃあどうして一度も胸を触らないんですか?」
伊吹:「嫌なことを思い出させてしまうかと」
・桜里:拗ねたように
「あんな人たちと伊吹さんを一緒にしないで下さい」
ときめく伊吹。
・桜里:「それに自分でもたまに揉みますよ」
・伊吹:小さく驚いて
「自分で?」
桜里:「落ち込んだ時や不安な時に揉むと、ふにふにしてて癒されます」
・伊吹:分かってない表情で
「ふにふに……ですか?」
・桜里:「この感じ、伊吹さんならなんて言いますか?」
・伊吹:緊張しながらそっと揉んで
「確かに。ふにふにという表現がぴったりですね」
桜里:「でしょ?」
・笑い合う二人。
・ある程度愛撫
・指が1本入る
感じる桜里。
・2本入る。
入った瞬間は少し緊張したけどだんだん気持ち良くなる桜里。
・3本入れようとしたら体が硬くなる桜里。
・伊吹:右手は桜里の太ももを撫でて、左手で胸を揉んで口同士でキス。
・指を3本入れる。
入れて少し動かしたらビクッとなる桜里。
・そこを重点的に責められていきそうになってきた桜里。
伊吹:「大丈夫。そのまま」
・指の動きに合わせて乳首を舐められて桜里がいく。
指を抜いて反対の手で桜里の頭を撫でてから体を離してゴムを着ける伊吹。
・落ち着いた桜里を確かめるように見つめる伊吹、うなずく桜里。
・もう一度頭を下してしっかり抱きしめる伊吹。
・そのままの姿勢で挿入。
・いかにも初めての苦しみ方じゃなく耐える桜里。
・伊吹:頭を上げて桜里の目を見て
「大丈夫?」
・桜里:少し苦しそうにうなずいて
「でも……」
伊吹:「大丈夫だよ。今日は動かないから」
・桜里:首を振って、背中に回していた手を伊吹の首に掛けて
「ぎゅってしててくれたら動いてもたぶん大丈夫だから、離れないで」
・驚いて脈打つ伊吹。
苦しむ桜里。
・伊吹:「あ、ごめん」
控えめに動きながら頭を撫でたりキスをしたりする伊吹
・同時にいく二人。
・目を覚ます仰向けの桜里。
横向きに寝て心配そうに見下ろしている伊吹。
伊吹:「大丈夫?」
・桜里:無言でうなずきながら
(喉がカラカラ)
伊吹:「喉乾いたよね?」
・部屋を出ると、料理をしていた杏里が二人に気付いく。
杏里:冷蔵庫を開けて
「喉乾いたでしょ?蜂蜜酒を冷やしておいたよ」
・桜里:初めて聞く言葉に
「蜂蜜酒?」
・杏里:かわいく明るく
「ハネムーンの語源にもなった強壮剤だね。良い具合が分かるまで最初は頑張った方がいいんじゃない?」
・桜里:びっくりして
「いらないよ!」
・杏里:「飲むのは男の方だけど、おーちゃんまだまだいけるなら良かった」
桜里:「そうじゃなくて!」
・伊吹:ショックを受けて
「え、もうしないってことですか?
 ……よくなかったとか?」
桜里:「そうでもなくて!」
・桜里:追い詰められたように
(どうしたらいいの!?)

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