呪縛

5年くらい前、私は何もスキルを持たざる自分がものすごく嫌で嫌で仕方なかった。受験でも芸能でも芸術でもセンスでもそれは何でもいいのだけど、「選ばれなかった側」の人間であるということに、非常に強いコンプレックスを抱えていた。それはもう生き地獄にいるかのような劣等感、そして醜悪な嫉妬心を抱え続けていた。
同い年なのに新人文学賞を取っている人、高校の時に美大に進学するという志をもち、美術予備校に通わせてもらえる人、藝大タマムサに受かった人、現役で早慶上智に受かった人、同世代の坂道アイドル、ネットで沢山の人から可愛いやいいねが貰える活動者、顔が可愛くて周りに人が絶えないクラスのあの子、、、
私の独断と偏見で決めつけた「成功者」を見るたびに、ただただ己が凡人であるということをありありと突きつけられ、それは私の精神を激しく破壊した。世間一般的な基準で考えれば、日本の大卒人口が50%なので早慶上智はその上位5%と言われているし、上記にあげた一般大学も美大も倍率10倍以上ある。更に坂道アイドルのオーディション倍率は約7000倍と謳われている。活動者として食えていけてる人はほんの極一部に過ぎない。それに該当しない人間の方が圧倒的大多数だ。だったら別にいいじゃんって話なんだけど。私は自己が無能であることを許せなかった。何故ならそれは自己の死を意味するからだ。周りの大人や周囲から評価される、受け入れてもらえる、愛してもらえるのは、肩書きや才能のある者ばかりなのは、もう見飽きた。肩書きや才能がある者というのは、相対的にその他の人間より優れているからその称号を手に入れたのだ。他人から評価をもらえない、受け入れてもらえない、愛してもらえないということは、すなわち誰からも必要とされていない、故に生きてる価値がないということなのではないだろうかと、私は思った。その思想は、他人より秀でていなければ、他人寄り上にいなければ、私は死んでしまうことを意味した。

だから、
取り憑かれたように、勉強した。
取り憑かれたように、美容情報を調べて試すを繰り返した。
死にたくなかった。誰からも自分の存在を肯定してもらえない、生まれてきた意味のわからない、この地獄から一刻も早く這い上がりたかった。
それを何年も続けたら、本命校ではなかったけど受験に受かった。何年も渇望していた私が生きてていい免罪符「学歴」が手に入った。でも、所詮滑り止め校だったので、やっぱり親には認めてもらえなかった。けれど、初めての小さな成功は多分私の自信になった。平行して、美容の試行錯誤も続けていたので、ある程度自分の学と外見が様になってきたタイミングで活動を始めた。最初は当たり前にファンが0人だったし、ファンがやっとできても、誰も自分お目当てで来ないこともある。私はアイドルとして必要とされていないんだ、ということは私はアイドルである価値がない、じゃあ、アイドルとして私が存在している必要はないんだ。この世界には私が生きることが許される権利がないことに気づいた。黒世れことして生きることが許される免罪符がほしかった。だから、バズらせるために敢えて過激な構文を考え投稿した。配信も睡眠時間を削って毎日23:00ー朝5:00頃まで続けた。そしたら、少しずつではあるが、徐々に行動による結果がついてきた。年単位で時間を投資しなくてはいけない勉強や美容よりも、遥かにコストを費やせずダイレクトに結果が出るSNS運用に魅力されていった。徐々に私の投稿する写真は過激になり、ほぼポルノといっても過言ではないグラビアを日常的に投稿していた。正直、黒世れこが人様から恥さらしだのモラルのないやつだだのどう思われようが、どうでもよかった。だって、黒世れこは私ではないから。黒世れこは私自身が作り出した幻影。私が創造した器、それを媒介道具として私が操縦者としてコントロールしているだけに過ぎない。仮に何かを否定されようが私自身が否定されてる訳でもないから、痛くも痒くもない。だから、現実世界の私では考えられない程過激な言動ができた。全ては目的のために。ちなみに、現実世界の私は誰かを傷つけたり迷惑をかけないように、仮にかけたら誠心誠意謝罪をし、再度このようなことが起こらないように気をつけて生きている。最低限のモラルや常識くらい持っていると自負出来る。ただ、黒世れこはこの世に存在しない私のSNSの玩具に過ぎないのだから、周りを傷つけたり、実害的な迷惑かけないのであれば、渇望する目的のためなら手段は問わず、どんなに泥臭くても成功を手にするまで試行錯誤しながら努力を継続していけばいいのではないか。そのような考えを基盤に、黒世れこのSNS上でのキャラクターが出来上がっていき、ライブでお目当ての人が1人もいないということはなくなったし、昔よりいいねもフォロワーも考えられないぐらい増えたし、この世界でも生きててもいいと思えるようになったから息がしやすい。

昔は芋ブス&喪ボディすぎて、他人から言われたルックスディスりを思い出しては落ち込んでいたが、今はフルメイクをして可愛い服を着ている時なら鏡を見るのは楽しい。
バイト先で「大学どこですか?」と何気ない質問にも、答えるのがすごく億劫だったが、今は聞かれたら普通に脳死で人に言える。
アイカツと芸術活動はまだ努力の途中だけど、私はもっともっと大きな未来を手に入れたい。


最近わかったことがある。
夢や憧れは追いかけ続けていればいつかはある程度は掴めるものらしい。

いいなと思ったら応援しよう!