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夏祭音頭 (遠山秀夫)。

遠山秀夫の歌う「夏祭音頭」。歌島花水作詞、服部良一作曲で、遠山は後の楠木繁夫です。本名黒田進、明治37年に高知県の医師の家に生まれて、長じて東京音楽学校で学んだ彼でしたが、在学中にトラブルに巻き込まれてしまい、哀れにも退学処分に追い込まれます。彼もまた藤原義江の様な声楽家を志した口なのでしょうが、此の挫折によってその後の進路は大きく変わりました。主な活動の場を関西へと移し、新たに需要も高まって来た流行歌の道で生きる事を決意した彼は、25歳の頃にデビューを果たしています。正確な第一回吹き込みは不明ですが、名古屋のツルに録音が確認されており、続いてコロムビア関西支社から「潜航艇の唄」「麻雀行進曲」等を発売。また西宮市に在ったタイヘイにも姿を見せ、昭和6〜9年の間に様々な芸名を使い分けて、数多の録音を残しました🎙️。

「夏祭音頭」はその最中に歌われた一曲で、此の時期は在阪時代の服部良一としばしば組みました。タイトルには「音頭」とありますが、当時流行りつつあったルンバ「フィエスタ」(ヘンリー・ブッセ作曲)を下敷きにした感のある、ユニークかつモダンな歌です。二番構成で、歌全体に男性コーラスを取り入れた“わっしょい”と云う景気の良い掛け声。前奏で一瞬一人だけ“わっ…”と飛び出してしまう所は御愛敬の一言と言った所で、伴奏には太鼓やトランペット、拍子木、シンバル等が使用されています。その音色は夏祭りの宵の放つ幻想的な光景が現れており、遠山=楠木繁夫の明瞭でソフトな歌声が冴えていました。オリジナルは黒盤で昭和7年夏の発売ですが、手元のは後日廉価再販されたコメットレーベルのレコード。裏面には水野喜代子の歌う「風よそよ吹け」が組まれています😀。

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