雲とつばさ (東海林太郎)。
東海林太郎の歌う「雲とつばさ」。時雨音羽作詞、田村しげる作曲で、ラベルには“ワーナー映画『雲とつばさ』主題歌”とあります。本作はアメリカのロイ・チャンスラー&ドア・シャーリー原作の物語を、ロス・レダーマン監督で映画化したもので、1934年の製作。出演はライル・タルボット、アン・ヴォザック、ロバート・ライトなどでした。物語は国家機密の記された文書(?)を西海岸からニューヨークへと移送するパイロットを描いており、それを奪おうとする反動勢力の刺客との戦いが展開すると云う流れでした。此の主題歌は日本公開に合わせて製作されたオリジナル曲で、映画とは全く関係がありません。言うなればイメージソングと云ったところで、当時は此の様なタイアップがよく行われていて、他にドイツ映画「トロイカ」なども日本独自の主題歌が出ています🎼。
「雲とつばさ」は、暁の空を思わせる勇壮なトランペットの序奏からスタートし、その前奏はどことなく江口夜詩の作風を思わせるものがあります。引き締まった歌唱には大空を征くパイロットの決意が込められており、僅かに重厚な合唱が加わっています。三番構成で、若き日の田村しげるの楽曲の中でも白眉ものの出来映えと言えるでしょう。伴奏はトランペットの他にドラム、バンジョー、サックス、バイオリンなどで、実に上手く纏まった編曲でした。当時の東海林太郎はポリドールとキング双方から新曲をリリースしておりましたが、大ヒット曲の殆どが前者からだった為か、キング側の歌は何処か控えめと云うか地味さが漂います。間も無くキングが独立すると、東海林はポリ一本に集中する事に。昭和11年春に出た「海峡越えて」(小沼宏作詞、細川潤一作曲)がラストでした😀。